年末調整でできないもの一覧と確定申告の準備(令和8年分)
結論:年末調整では処理できないものが主に7つあります——①医療費控除 ②寄附金控除(ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合など)③雑損控除 ④住宅ローン控除の初年度 ⑤給与以外の所得(副業・年金・不動産)⑥年の途中で退職して年末調整を受けていない場合 ⑦2か所以上から給与を受けている場合です。これらに当てはまる人は、翌年の確定申告(令和8年分なら令和9年2月16日〜3月15日)で控除を受けたり税額を精算したりします(⑤⑦は所得の額などによって申告が要らない場合があります)。
①②③が年末調整でできないのは、年末調整で差し引く控除を定めた所得税法190条の一覧にこの3つが入っていないからで、勤務先の判断ではありません。納めすぎを返してもらうだけの還付申告なら、翌年1月1日から5年間できます。
年末調整でできないもの 一覧
年末調整は「その年最後に給与を支払うときに、1年分の給与の税額を計算し直して差額を精算する」手続きです(所得税法190条)。差し引ける所得控除は同条に列挙されていて、社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・特定親族特別控除・基礎控除です。医療費控除・雑損控除・寄附金控除はこの一覧にないので、年末調整では扱えません。なお住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は所得控除ではなく税額控除で、別の規定により2年目以後は年末調整でできます(下の表の④)。
| できないもの | なぜ年末調整でできないか | 主な必要書類 | Tekibaでの下準備 |
|---|---|---|---|
| ①医療費控除 | 所得税法190条の所得控除の一覧に入っていないため。確定申告でのみ受けられる(No.1120) | 医療費控除の明細書(医療保険者からの医療費通知があれば添付して記載を簡略化できる)。領収書は申告期限等から5年間の保管が必要 | — |
| ②寄附金控除 (ふるさと納税など) | 同上。ふるさと納税でワンストップ特例を使えるのは、確定申告が不要な給与所得者等で寄附先が5団体以内の場合だけ(No.1155、総務省) | 寄附先の自治体が発行する受領証明書(払込票控が証明書になる場合もある) | ふるさと納税 控除上限額シミュレーター |
| ③雑損控除 | 同上。災害・盗難・横領で資産に損害を受けたときの控除(No.1110) | 損害を受けた資産の明細、災害等関連支出の領収書、受け取った保険金等の額がわかるもの | — |
| ④住宅ローン控除の 初年度 | 控除を受ける最初の年分は確定申告が必要。2年目以後は年末調整でできる(令和4年以降に居住した場合はNo.1211-1、令和3年までに居住した場合はNo.1213など) | 住宅借入金等特別控除額の計算明細書、(証明書方式の場合)金融機関等から交付された住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、床面積がわかる家屋の登記事項証明書など、取得対価がわかる工事請負契約書・売買契約書の写し。「調書方式」に対応した金融機関から借り入れて適用申請書を出している方は、提出書類の一部が異なります(国税庁)。住宅の区分や土地の取得の有無でも追加の書類があります | — |
| ⑤給与以外の所得 (副業・年金・不動産) | 年末調整で税額を計算する対象は給与所得だけだから。給与を1か所から受けている人は、給与・退職以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要(No.1900) | 収入と必要経費がわかる書類(帳簿・支払調書・年金の源泉徴収票など) | 年末調整 還付金シミュレーターの「給与以外の所得」欄 |
| ⑥年の途中で退職し、 年末調整を受けていない | 年末調整は、その年最後に給与を支払う勤務先が行うから。再就職して前職分を含めて年末調整を受けた人は対象外 | 退職した勤務先の源泉徴収票(すべての勤務先の分) | 給与の手取り・源泉所得税・年末調整 計算 |
| ⑦2か所以上から 給与を受けている | 年末調整は扶養控除等申告書を出した1か所でしか行われず、従たる給与は入らないから。年末調整されなかった給与の収入金額と給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告(No.1900) | すべての勤務先の源泉徴収票 | 年末調整 還付金シミュレーター |
このほか、給与の年間収入が2,000万円を超える方はそもそも年末調整の対象外で、確定申告をすることになります(所得税法190条、No.1900)。
特定支出控除も年末調整では受けられません。通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等。合計65万円まで)の自己負担が給与所得控除額の2分の1を超えるとき、その超える部分を差し引ける制度で、確定申告が必要です。いずれの支出も、職務の遂行に直接必要であることを給与の支払者(一部はキャリアコンサルタント)が証明したものに限られます(No.1415)。
⑦には例外があります。給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与・退職以外の所得の合計が20万円以下の方は、申告は不要です(No.1900 3の注)。また⑤⑦は確定申告が必要になる条件で、条件から外れることと申告義務があることは別です。所得の合計が所得控除の合計を超えないなど、そもそも申告が必要にならない場合もあります。
この20万円のきまりが当てはまらない方もいます。同族会社の役員などでその同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を受け取っている方、災害減免法で源泉徴収の猶予などを受けている方、源泉徴収義務のない者から給与を受けている方、退職所得を正規の方法で計算すると源泉徴収された額より多くなる方は、20万円以下でも確定申告が必要です(所得税法121条1項ただし書き、No.1900 の4〜7)。
公的年金等を受け取っている方には別のきまりがあります。その年の公的年金等の収入金額が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象であり、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告は必要ありません(所得税法121条3項、No.1600)。この場合でも、医療費控除などで還付を受けるための申告はできますし、住民税の申告が必要な場合があります(No.1600 注1・注2)。
よくある取り違え
「副業20万円以下なら何もしなくていい」ではありません。20万円以下で不要になるのは所得税の確定申告だけで、住民税の申告は別の手続きです。たとえば横浜市は「1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得以外の所得(配当、不動産、雑所得など)の金額の合計額が20万円以下の人」を市民税・県民税の申告が必要な人として案内しています(所得税の確定申告書を出した人は、住民税の申告もしたものとみなされるので不要)。案内の書き方は自治体で違うので、お住まいの市区町村のページをご確認ください。
ふるさと納税は年末調整では一切扱えません。寄附金控除は年末調整の所得控除の一覧に無いので、勤務先に受領証明書を出しても処理されません。控除を受ける道はワンストップ特例か、確定申告(確定申告をしない方は市区町村への住民税の申告)です。ワンストップ特例を使えるのは、確定申告が不要な給与所得者等で寄附先が5団体以内の場合に限られます。6団体目に寄附したとき(5団体を超えたとき)、確定申告書を出したとき、そして寄附した年の翌年度の市民税・県民税申告書を出したときは、それまでに出した申請も「申請はなかったもの」として扱われます(横浜市の案内)。上の「副業20万円以下」で住民税の申告をする方も、ここに当たります。その場合は申告書に、ワンストップ特例を申請した分も含めたすべての寄附を漏れなく書いてください。
iDeCo・生命保険料・地震保険料は年末調整でできます。iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除、生命保険・個人年金・介護医療保険は生命保険料控除で、どちらも所得税法190条の所得控除の一覧に入っています。保険料控除申告書に書いて、証明書を勤務先に出せば年末調整で反映されます。出し忘れた場合も、確定申告で入れ直せます。
12月のうちにやっておくこと
ふるさと納税の上限額を計算し直す。控除の上限はその年の所得で決まります。12月の賞与や年末の残業代が見込みと違えば上限も動くので、年内最後の寄附をする前に、確定した見込みで計算し直しておくと安心です。上限を超えた分は自己負担になります。寄附先の数が5団体を超えていないか、ワンストップ特例の申請書を出し忘れていないかも、このタイミングで数え直してください(申請は寄附ごとに必要です)。
医療費の領収書を1年分まとめる。医療費控除はその年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が対象で、未払いのものは実際に支払った年の対象になります。家族分(自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払ったもの)を合わせられるので、人ごと・医療機関ごとに集計しておくと明細書を作るのが早くなります。保険金や高額療養費で補てんされた金額は差し引くので、給付の通知も一緒にしておいてください。
源泉徴収票を保管する。年の途中で退職した方、2か所から給与を受けている方は、すべての勤務先の源泉徴収票が確定申告に必要です。再就職先で前職分を含めた年末調整を受けた方は、確定申告そのものが不要になることもあります。
確定申告の期間と、還付申告の5年
令和8年分の所得税の確定申告期間は令和9年2月16日(火)から3月15日(月)までです。提出先は住所地の所轄税務署で、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成・提出もできます。
納めすぎた税金を返してもらうだけの申告(還付申告)は、期間が違います。還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できます(No.2030)。医療費控除・雑損控除・住宅ローン控除の初年度・年の途中の退職で年末調整を受けていない場合などは、ここに当たることが多くなります。令和8年分なら令和9年1月1日から令和13年12月31日までです。数年前の分に気づいた場合も、5年以内ならさかのぼれます。
ただし「申告すれば戻る」とは限りません。還付は源泉徴収や予定納税ですでに納めた所得税がある場合に起きるもので、源泉徴収票の源泉徴収税額が0円の方には返る所得税がありません(No.2030)。また、上の表の⑤⑦のように納める側になるケースもあります。ご自分の条件で確かめてください。
よくある質問
年末調整をした後に確定申告をすると、年末調整は無駄になりますか?
無駄にはなりません。確定申告は、勤務先から受け取った源泉徴収票の数字を書き写したうえで、年末調整で入れられなかった控除を足して1年分を計算し直す手続きです。年末調整で反映済みの控除はそのまま活きます。年末調整に出し忘れた生命保険料控除や扶養控除も、このときに入れ直せます。注意が2つあります。ひとつは、ふるさと納税のワンストップ特例の申請書を出していた方が確定申告をすると、その申請は無効になるので、特例を申請した分も含めて寄附金控除を計算に入れる必要があることです(No.1155)。入れ忘れると、その寄附はどこからも控除されません。もうひとつは、20万円以下で申告しなくてよかった副業などの所得も、確定申告をするなら申告書に含めることです。20万円のきまりは申告をしなくてよいという制度であって、その所得が非課税になるわけではありません(No.1900)。
医療費控除はいくらから受けられますか?
「いくら以上」という入口の金額が決まっているわけではなく、次の計算で残った額が控除額になります(最高200万円)。実際に支払った医療費の合計額 −(保険金などで補てんされる金額)−(10万円)です。この10万円は、その年の総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%に変わります(No.1120)。保険金等は、その給付の目的になった医療費の額を限度に差し引き、引ききれない分を他の医療費から差し引くことはしません。なお、一定の健康診断や予防接種を受けている方は、通常の医療費控除との選択でセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費のうち12,000円を超える部分、88,000円を限度)を使うこともできます。どちらが有利かは金額と条件で変わります。
ワンストップ特例を出したのに、確定申告が必要になったらどうすればいいですか?
確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効になりますので、確定申告書に特例を申請した寄附も含めたすべてのふるさと納税を寄附金控除として書いてください(No.1155)。申告書第二表の「寄附金控除に関する事項」に加えて、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄にも金額を書く必要があります。ここが空欄だと、住民税の側で控除されないことがあります。誤って寄附金控除を入れずに確定申告してしまった場合は、更正の請求で入れ直せます。ただし寄附金控除を適用しても最終的な所得税等の額が変わらない場合は更正の請求ができないので、その場合はお住まいの市区町村にご相談ください(No.1155)。
根拠資料
- 所得税法 第190条(年末調整)。年末調整の対象は扶養控除等申告書を提出し、その年中に支払うべきことが確定した給与等が2,000万円以下である居住者。差し引く控除は同条第2号イ〜に列挙(社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、特定親族特別控除、基礎控除)。医療費控除・雑損控除・寄附金控除はこの一覧にない
- 国税庁 タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(令和8年4月1日現在法令等。控除額の計算、10万円と総所得金額等5%、最高200万円、明細書と領収書の5年保管、セルフメディケーション税制)
- 国税庁 タックスアンサー No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)(ワンストップ特例は確定申告が不要な給与所得者等で5団体以内、確定申告を行うと特例は無効、第二表「住民税に関する事項」の記載、更正の請求)
- 国税庁 タックスアンサー No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)、No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(令和4年1月1日から令和12年12月31日までに居住した場合。最初の年分は確定申告、2年目以後は年末調整、提出書類等の一覧)。令和3年までに居住した方は No.1213 など、居住した年に対応する資料をご覧ください。また住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について(令和4年度税制改正で、年末残高証明書を用いる「証明書方式」から年末残高調書を用いる「調書方式」への改正。調書方式では債権者が税務署に調書を提出し、国税当局から納税者に年末残高情報が提供される)
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(給与2,000万円超、1か所給与+他の所得20万円超、2か所以上の給与)、No.2030 還付申告(翌年1月1日から5年間、源泉徴収税額が0円なら還付なし)
- 国税庁 タックスアンサー No.1415 給与所得者の特定支出控除(7種類の特定支出、給与所得控除額の2分の1超、確定申告と証明)、No.1600 公的年金等の課税関係(公的年金等に係る確定申告不要制度=収入400万円以下かつ年金以外の所得20万円以下。還付のための申告は可能、住民税の申告が必要な場合がある)
- 所得税法 第121条(確定所得申告を要しない場合)。第1項=給与2,000万円以下で1か所給与+他の所得20万円以下、または2か所以上で従たる給与+他の所得20万円以下・150万円の例外。ただし書きで、給与の支払者の事業の用に供する資産の対価を受ける場合などは除かれる。第3項=公的年金等の申告不要制度
- 総務省「ふるさと納税ポータルサイト」ふるさと納税の手続(ワンストップ特例の条件=確定申告不要な給与所得者等・5団体以内、申請書は寄附の都度提出、特例適用時は全額が翌年度の住民税から控除)
- 横浜市「寄附金税額控除」(ワンストップ特例の適用対象外=5団体超、寄附した年の翌年度の市民税・県民税申告書または確定申告書を提出した方、確定申告書の提出義務がある方、住所変更の届出をしていない方。申告書には特例を申請した分も含めすべての寄附を記載)
- 横浜市「市民税・県民税申告書に関するよくあるご質問」(1か所から給与を受け、給与以外の所得の合計が20万円以下の人は市民税・県民税の申告が必要。所得税の確定申告書を出した人は申告したものとみなされる)。自治体の例として挙げたもので、案内は自治体により異なります
この記事は一般的な説明で、個別の判断は税理士または所轄の税務署・市区町村へご相談ください。関連ツール:年末調整 還付金シミュレーター/ふるさと納税 控除上限額シミュレーター/給与の手取り・源泉所得税・年末調整 計算/住民税 計算ツール/寄附金控除 所得控除と税額控除の比較/雑損控除と災害減免法の比較/給与2か所の確定申告 要否と還付額。関連記事:年末調整の還付金はいくら戻る?年収別の早見表と仕組み/基礎控除申告書の書き方(令和8年分)収入の見積り方/ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告の違い/ボーナスの手取りはいくら?引かれるものと計算(令和8年分)。
さらに詳しく(note)
- 令和8年分 年末調整の書類、欄ごとの書き方と損をしないチェック(note・有料・980円):3枚の申告書の欄ごとの記入例
- 令和8年分 年末調整:出す書類と期限、会社ごとの違い(note・有料・980円):何を・いつまでに・誰に出すか、前職・途中入社・2か所給与・扶養の変更
- 年末調整で「戻る人」と「追加で引かれる人」の違い——今年(令和8年分)は例年より戻る人が多い理由(note・無料):還付になる人と追加で引かれる人の分かれ目