転職した年の年末調整:前職の源泉徴収票がいるとき・ないとき
結論:転職した年に今の会社で年末調整を受けるには前職の源泉徴収票が要り、出せないと今の会社では年末調整ができず、翌年に自分で確定申告をして精算します。対象は同じ年のうちに前の会社から給与を受けた人で、合わせられるのは前の会社に扶養控除等申告書を出していた(甲欄の)給与です。令和8年分の計算例(前職 月30万円×6か月、今の会社 月32万円×6か月、扶養なし・賞与なし)では、前職分を合わせた年末調整で31,880円が戻ります。
年の途中で会社を移った年は、今の会社から「前の会社の源泉徴収票を出してください」と言われます。この記事では、なぜ前職の源泉徴収票が要るのか、出さないとどうなるのか、どの前職の給与を合わせられるのかを、国税庁の説明と令和8年分の計算例で確認します。
前職の給与も合わせて年末調整する
国税庁 No.2674「中途就職者の年末調整」は、年の途中で就職した人の年末調整について、就職前にその年中にほかの会社から給与を受けたかどうかを確認し、その給与の金額や、その給与から徴収された所得税や社会保険料の額を「給与所得の源泉徴収票」などで確認して、合わせて行うとしています。
- 合わせるのは、前職の源泉徴収票の「支払金額」「社会保険料等の金額」「源泉徴収税額」です。
- 基礎控除や扶養控除は、働いた月数で按分するのではなく全額が引かれます(No.2674)。
- 給与所得控除は、前職と今の会社の給与を合計した額にかかります。
前職の源泉徴収票が無いと、年末調整できない
No.2674 は「この確認ができないときには、年末調整を行うことはできず、その人が確定申告により所得税及び復興特別所得税の精算を行うことになります」と書いています。会社は、年の途中で退職した人にも退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付することになっている(所得税法226条1項)ので、届いていなければ前の会社に請求してください。年末調整に間に合わなかった場合は、翌年に確定申告で精算します。
合わせられるのは「甲欄」の前職の給与
所得税基本通達190-2(3)は、ほかの会社の給与を通算する場合、その会社が支払った甲欄の給与(扶養控除等申告書を出していた給与)を通算するとしています。かっこ書きで、その会社がその年の1月1日以後に申告書を受け取るまでに支払った乙欄・丙欄の給与も含めるとしているので、途中から申告書を出した会社の給与は、源泉徴収票の支払金額をそのまま合わせます。反対に、甲欄から乙欄に切り替わった後の給与は合わせません(源泉徴収票は期間ごとに分かれます)。
| 前職の働き方 | 今の会社の年末調整 |
|---|---|
| 前の会社に扶養控除等申告書を出していた(ふつうの正社員・パートなど。途中から出した場合を含む) | 前職の源泉徴収票を出せば合わせられる(申告書を出す前の乙欄・丙欄の給与も含む) |
| 最後まで扶養控除等申告書を出していなかった(掛け持ちの2か所目など、乙欄だけ) | 合わせられない。確定申告で精算 |
掛け持ちをしていた場合の確定申告は、給与が2か所ある人の確定申告で説明しています。
計算例(令和8年分)
源泉徴収税額は令和8年分の月額表(甲欄)の額で、扶養なし・賞与なしの場合です。年末調整 還付金シミュレーターの「前職の源泉徴収票」の欄に入れると同じ結果になります。
例A:前職6か月+今の会社6か月
前職は月30万円×6か月(社会保険料 月4.5万円、源泉徴収 月6,320円)、今の会社は月32万円×6か月(社会保険料 月4.8万円、源泉徴収 月6,960円)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与収入(1,800,000+1,920,000) | 3,720,000円 |
| 給与所得(3,720,000×80%−440,000) | 2,536,000円 |
| 社会保険料控除(270,000+288,000) | −558,000円 |
| 基礎控除(按分しない) | −1,040,000円 |
| 課税給与所得金額 | 938,000円 |
| 年調年税額 | 47,800円 |
| 源泉徴収税額(37,920+41,760) | 79,680円 |
| 還付される金額 | 31,880円 |
例B:前職3か月、無職の期間のあと今の会社3か月
前職は月20万円×3か月(社会保険料 月3万円、源泉徴収 月3,270円)、今の会社は月25万円×3か月(社会保険料 月3.75万円、源泉徴収 月4,770円)。給与は合わせて135万円、給与所得は61万円で、基礎控除104万円を引くと所得税は0円です。
- 前職の源泉徴収票を出した場合:前職9,810円+今の会社14,310円の24,120円が全部戻る
- 出さなかった場合:今の会社の年末調整では今の会社の給与だけで精算されず、年末調整そのものができないので、確定申告で精算します(前職の分を含めて戻るのは確定申告のとき)
無職の期間があった年は1年分の所得が少なくなるので、月々に源泉徴収された額の合計が1年分の税額を上回り、年末調整や確定申告で戻ることが多くなります。
気をつけること
- 年末調整の後に今の会社から受け取る源泉徴収票には、前職の分も含まれています(国税庁 質疑応答事例の記載方法)。ツールで試算するときは、今の会社の欄にその票をそのまま写さず、給与明細から今の会社の分だけ(年末調整前の所得税)を集計して入れてください。票をそのまま入れると前職の分を二重に数えます。
- 転職の合間などに自分で払った国民年金保険料・国民健康保険料など(保険料控除申告書で申告するもの)は、ツールの今の勤務先の「社会保険料」の欄に足して入れてください(前職の票と給与明細のどちらにも入っていない分だけ。二重に足さない)。年末調整では、自分で払った社会保険料も保険料控除申告書に書けば控除されます。
- 退職金(退職所得)は年末調整に含めません(給与・源泉徴収税額には足さない)。ただし退職所得の金額は合計所得金額に入る(退職金から退職所得控除額を引き、原則はその2分の1。ただし勤続5年以下の短期退職手当等は控除後300万円を超える部分、役員等勤続5年以下の特定役員退職手当等は全額を2分の1にしない:国税庁 No.2740。退職金の税金 計算ツールで区分を確認できます。同ツールの「課税退職所得金額」は1,000円未満を切り捨てた額なので、合計所得金額には切り捨てる前の額を入れてください。そのまま写すと最大999円少なくなり、基礎控除の区分の境目で結果が変わることがあります)ので、基礎控除や配偶者控除の判定のためツールの「給与以外の所得」に入れてください。退職金を受け取った年のことは退職した年の年末調整と住民税で説明しています。
- 前職の源泉徴収票の見方(どの欄を写すか)は源泉徴収票の見方をご覧ください。
- 年末調整で戻る仕組みと時期は年末調整の還付金はいくら戻る?で説明しています。
よくある質問
転職した年は前職の源泉徴収票を今の会社に出す必要がありますか?
今の会社で年末調整を受けるなら必要です。年の途中で就職した人の年末調整は、その年に前の会社から受けた給与の金額と、徴収された所得税・社会保険料を前職の源泉徴収票などで確認して合わせて行います。確認できないときは年末調整を行うことができず、確定申告で精算します(国税庁No.2674)。
前職の源泉徴収票が無いとどうなりますか?
今の会社では年末調整ができず、翌年に自分で確定申告をして、前職と今の会社の給与を合わせて精算します。前職の会社には源泉徴収票の交付を求めてください。
掛け持ちで働いていた前職の給与も合わせられますか?
合わせられるのは、前の会社に扶養控除等申告書を出していた(甲欄で源泉徴収されていた)給与です(所得税基本通達190-2(3))。同じ会社で申告書を出す前に乙欄・丙欄で受けた給与も含めます。最後まで扶養控除等申告書を出さずに乙欄だけで源泉徴収されていた給与は年末調整に含められず、確定申告で精算します。
根拠資料
- 国税庁 タックスアンサー No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
- 国税庁 タックスアンサー No.2674 中途就職者の年末調整(令和8年4月1日現在法令等)
- 所得税法 第190条(年末調整)、第226条第1項(給与所得の源泉徴収票の交付)/所得税基本通達 190-2(その年中に支払うべきことが確定した給与等の計算)
- 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」(月額表 甲欄)
関連:年末調整の還付金はいくら戻る?/退職した年の年末調整と住民税/源泉徴収票の見方/確定申告の還付金はいつ振り込まれる?/給与2か所の確定申告 要否と還付額(掛け持ちの2か所目が乙欄だけだったとき)
さらに詳しく(note)
- 令和8年分 年末調整の書類、欄ごとの書き方と損をしないチェック(note・有料・980円):3枚の申告書の欄ごとの記入例
- 令和8年分 年末調整:出す書類と期限、会社ごとの違い(note・有料・980円):何を・いつまでに・誰に出すか、前職・途中入社・2か所給与・扶養の変更
- 年末調整で「戻る人」と「追加で引かれる人」の違い——今年(令和8年分)は例年より戻る人が多い理由(note・無料):還付になる人と追加で引かれる人の分かれ目