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給与が2か所ある人の確定申告:要否の判定と乙欄の還付

令和8年分(2026年1〜12月の給与・2027年3月申告) 最終更新:2026年10月6日

結論:給与を2か所以上から受けている人は、年末調整されなかった2か所目の給与の収入金額と給与以外の所得の合計が20万円以下なら確定申告を要せず、2か所目で乙欄により引かれた所得税は、主たる給与が少ない人には戻り、主たる給与がある程度ある人は追加で納めることがあります。この記事は、本業とアルバイト、パートの掛け持ちなど、給与を2か所以上から受けている人のうち、給与の金額が2,000万円以下で、給与の全部が源泉徴収の対象になっていて、主たる給与で年末調整を受けている人を前提にしています。20万円を超えても、給与の収入金額の合計が150万円と社会保険料控除などの合計以下(給与以外の所得も20万円以下)なら申告を要しません。たとえば本業400万円+アルバイト月5万円×12か月なら6,200円を納め、パート年90万円+パート月5万円×12か月なら、還付申告をすれば乙欄で引かれた18,372円が全額戻ります。この記事では、20万円と150万円の数字が条文のどこから来ているのかを確認したうえで、2か所目の給与で引かれた所得税(乙欄)が戻る人と、追加で納める人の違いを計算例で説明します。

2か所の源泉徴収票の金額を入れると、要否の判定と還付・納付の額、申告書に写す数字をその場で計算できます → 給与2か所の確定申告 要否と還付額シミュレーター

条文:所得税法121条1項2号

給与所得者で確定申告を要しない場合は所得税法121条1項に書かれています。前提は、給与等の金額が2,000万円以下で、給与等の全部が源泉徴収の対象であることです。給与が2か所以上の場合は2号で、次のイかロのどちらかに当てはまれば、申告書を提出することを要しません。

イ 従たる給与等の支払者から支払を受けるその年分の給与所得に係る給与等の金額とその年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が二十万円以下であるとき。
ロ イに該当する場合を除き、その年分の給与所得に係る給与等の金額が百五十万円と社会保険料控除の額、小規模企業共済等掛金控除の額、生命保険料控除の額、地震保険料控除の額、障害者控除の額、寡婦控除の額、ひとり親控除の額、勤労学生控除の額、配偶者控除の額、配偶者特別控除の額、扶養控除の額及び特定親族特別控除の額との合計額以下で、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が二十万円以下であるとき。
規定比べるもの
イ(20万円)2か所目の給与の収入金額(支払金額そのもの)+給与以外の所得(収入−経費)が20万円以下
ロ(150万円)給与の収入金額の合計が「150万円+控除の合計」以下で、かつ給与以外の所得が20万円以下。控除に雑損・医療費・寄附金・基礎控除は入りません

国税庁 No.1900 も、確定申告が必要な人の3番目に「給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人」を挙げ、注で「給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です」と書いています。

イの20万円は「所得」ではなく「収入」です。副業の20万円(1号)は収入から経費を引いた所得で比べますが、2か所目の給与は給与所得控除を引く前の支払金額で比べます。3か所以上ある場合は、年末調整を受けた勤務先以外の給与をすべて足します。

その前に:還付になる人には申告の義務がありません

確定申告の義務は所得税法120条1項が定めていて、かっこ書きで「控除しきれなかつた源泉徴収税額がある場合」を除いています。所得税が0円になる人や、源泉徴収された税額のほうが多く、申告すれば還付になる人は、121条に当たるかどうかにかかわらず申告の義務がありません。国税庁 No.1900 の「確定申告をすれば税金が還付される人を除きます」はこのことです。義務がないだけで、申告すれば還付は受けられます(所得税法122条。翌年1月1日から5年間)。

乙欄とは:2か所目の給与の源泉徴収

扶養控除等申告書は1か所にしか出せません。出していない勤務先(従たる給与)では、税額表の乙欄で源泉徴収され、原則として年末調整されません(国税庁 No.2520)。乙欄は基礎控除などを見込まない表で、令和8年分の月額表では、社会保険料等を引いた後の給与が105,000円未満なら3.063%、それ以上は金額に応じて高くなります。

そのため「乙欄は高いから確定申告すれば戻る」と言われますが、いつも戻るわけではありません。2か所目の給与は主たる給与に上乗せされ、1年分の所得税は給与の合計にかかる税率で決まるからです。

従たる給与の扶養控除等申告書を出している場合は、乙欄の税額から扶養親族等1人につき1,610円が引かれます。主たる給与の申告書に書いた人を、従たる給与の申告書に重ねて書くことはできません(No.2520)。確定申告での扶養控除も1人につき1回です。なお、令和9年分以後は防衛特別所得税が加わるので、乙欄の税額も変わります。

計算例(令和8年分)

3つの例は、いずれもツールの入力例と同じ数字で、ツールの結果と一致します。2か所目の源泉徴収税額は、毎月同じ額の給与として月額表の乙欄で求めた額です。主たる給与の源泉徴収税額は、年末調整で確定した額(100円未満切捨て)です。

例1:本業400万円+アルバイト月5万円×12か月(追加で納める)

本業の源泉徴収票:支払金額4,000,000円・社会保険料等600,000円・源泉徴収税額57,100円。アルバイト:月5万円(社会保険なし)を12か月、乙欄で月1,531円(3.063%)、年18,372円。

項目金額
給与の収入金額(合計)4,600,000円
給与所得(4,600,000×80%−440,000)3,240,000円
社会保険料控除−600,000円
基礎控除(令和8年分)−1,040,000円
課税される所得金額1,600,000円
所得税(5%)80,000円
所得税及び復興特別所得税(2.1%込み)81,680円
源泉徴収税額(57,100+18,372)−75,472円
納める税金(100円未満切捨て)6,200円

判定:イは 600,000円>20万円で当たりません。ロは 4,600,000円>150万円+社会保険料控除600,000円=2,100,000円で当たりません。年税額のほうが多いので確定申告が必要な場合に当たり、6,200円を納めます。乙欄で引かれていても、戻るとは限らない例です。

例2:本業400万円+アルバイト月3万円×6か月(2号イ)

本業は例1と同じ。アルバイト:月3万円を6か月、乙欄で月918円、年5,508円。

項目金額
給与の収入金額(合計)4,180,000円
給与所得2,904,000円
所得控除(社会保険料+基礎控除)−1,640,000円
課税される所得金額1,264,000円
所得税及び復興特別所得税64,527円
源泉徴収税額(57,100+5,508)−62,608円
申告した場合に納める税金1,900円

判定:2か所目の給与180,000円+給与以外の所得0円=180,000円≦20万円なので、2号イに当たり、確定申告を要しない場合です。ただし、医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、アルバイトの給与も含めて申告するので、この1,900円(控除を引く前の額)も精算に入ります。

例3:パート年90万円+パート月5万円×12か月(戻る)

主たるパートの源泉徴収票:支払金額900,000円・社会保険料等0円・源泉徴収税額0円。2か所目:月5万円を12か月、乙欄で年18,372円。

項目金額
給与の収入金額(合計)1,500,000円
給与所得(1,500,000−最低保障額740,000)760,000円
基礎控除(令和8年分)−1,040,000円
課税される所得金額0円
所得税及び復興特別所得税0円
源泉徴収税額−18,372円
還付される税金18,372円

判定:イは 600,000円>20万円で当たりませんが、ロは 1,500,000円≦150万円+控除0円=1,500,000円でちょうど当たります。そもそも所得税が0円なので、120条1項の義務も成立しません。申告の義務はありませんが、還付申告をすれば乙欄で引かれた18,372円が全額戻ります。あと1円でも給与が多ければロには当たりませんが、その場合も所得税が0円のままなら義務はありません。

住民税の申告は、給与だけなら原則不要です

地方税法317条の2第1項ただし書は、給与支払報告書が提出される給与所得者で、前年中に給与所得以外の所得がなかった人を住民税の申告から除いています。給与支払報告書は勤務先ごとに市区町村へ提出される(地方税法317条の6第1項)ので、2か所の給与だけの人は、所得税の確定申告が必要な場合でも、住民税の申告は原則として要りません。市区町村は2か所の給与を合わせて住民税を計算します。

次の場合は住民税の申告(または確定申告)が要ります。

所得税の確定申告書を提出した場合は、その提出した日に住民税の申告書が提出されたものとみなされます(地方税法317条の3第1項)。

確定申告書に写す数字

第一表の「収入金額等」の給与には2か所の支払金額の合計を、「所得金額等」の給与には合計にかけた給与所得を書きます。第二表の「所得の内訳」には、勤務先ごとに支払金額と源泉徴収税額を1行ずつ書き、その源泉徴収税額の合計を第一表の「源泉徴収税額」に写します。給与所得控除を勤務先ごとに引いて足すと、控除を2回受けることになり、所得が小さく出ます。

このツール・記事の範囲

主たる給与が年末調整を受けている場合を前提にしています。年の途中で退職して年末調整を受けていない場合、前職分がある場合、退職所得、予定納税には対応していません。源泉徴収されていない給与がある人(家事使用人・国外払いなど)、同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を受け取っている人、災害減免法で源泉徴収の猶予を受けた人、源泉徴収が不足する退職所得がある人は、国税庁 No.1900 の4〜7により確定申告が必要な場合があり、この記事の判定の対象外です。3か所以上ある場合、乙欄は勤務先ごとに当てはめるので、合計額から乙欄の税額を求めることはできません。同じ時期に2か所から受けていない(前の勤務先を辞めてから次に勤めた)場合は、所得税基本通達121-4 により1か所(1号)の扱いになることがあります。結果は目安で、個別の税務相談ではありません。実際の申告は税務署または税理士にご確認ください。

よくある質問

給与を2か所から受けていると、確定申告は必要ですか?

必要とは限りません。所得税法121条1項2号は、給与等の金額が2,000万円以下の人について、イ(年末調整されなかった給与の収入金額と給与以外の所得金額の合計が20万円以下)か、ロ(給与の収入金額の合計が150万円と社会保険料控除・生命保険料控除・扶養控除などの合計額以下で、給与以外の所得金額が20万円以下)のどちらかに当てはまれば、申告書を提出することを要しないと定めています。ロの控除には雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除は入りません。また、源泉徴収された税額のほうが多く申告すれば還付になる人は、そもそも申告の義務がありません(所得税法120条1項)。

乙欄で引かれた所得税は戻ってきますか?

人によります。乙欄は基礎控除などを見込まない表なので、その給与だけを見ると高めです。主たる給与が少ない人(例:パート90万円+パート60万円)は1年分の所得税が0円になり、乙欄で引かれた18,372円がそのまま戻ります。一方で、主たる給与が多い人(例:本業400万円+アルバイト60万円)は、上乗せされた給与に5%以上の税率がかかるので、乙欄の3.063%では足りず、確定申告で6,200円を追加で納めることになります。

給与が2か所だと住民税の申告も必要ですか?

給与だけなら原則として不要です。地方税法317条の2第1項ただし書は、給与支払報告書が提出される給与所得者で、給与所得以外の所得がない人を申告から除いています。給与支払報告書は勤務先ごとに市区町村へ提出されるので、市区町村は2か所の給与を合わせて住民税を計算します。給与以外の所得がある場合や、医療費控除・ふるさと納税の寄附金税額控除を住民税で受けたい場合は、確定申告か住民税の申告が必要です。

2か所の源泉徴収票の金額を入れると、要否の判定と還付・納付の額、申告書に写す数字まで計算します。源泉徴収票が手元にない場合は乙欄で概算できます → 給与2か所の確定申告 要否と還付額シミュレーター

根拠資料

関連:副業の確定申告はいくらから?20万円ルールと税金の目安/副業の確定申告 要否判定+税額シミュレーター/年末調整 還付金シミュレーター/給与の手取り・源泉所得税・年末調整 計算

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