上場株式の譲渡損失は3年間繰り越せる:損益通算と繰越控除の手順
結論:上場株式等の譲渡損失は、確定申告をすると翌年以後3年間繰り越して、その後の株の利益や申告分離課税を選んだ配当から差し引けます。そのためには、損失が出た年に付表をつけて確定申告し、その後も毎年続けて確定申告をすることが条件で、株を売らなかった年も申告が必要です(国税庁 No.1474)。
| 年 | 株の損益 | 申告 | 繰越の残り |
|---|---|---|---|
| 2026年 | 損失100万円 | 付表をつけて申告(損失を確定) | 100万円 |
| 2027年 | 利益30万円 | 申告して30万円を差し引く | 70万円 |
| 2028年 | 売買なし | 繰り越すための申告が必要 | 70万円 |
| 2029年 | 利益50万円 | 申告して50万円を差し引く | 20万円 |
| 2030年 | — | 2026年の損失は3年を過ぎたので使えない | 0円 |
特定口座(源泉徴収あり)を使っていると、株を売った時点で 20.315% が引かれます。ところが、別の口座で損が出ているとか、去年までの損が残っているとか、配当は総合課税のほうが軽いといった事情があると、確定申告をすることで引かれすぎた分が戻ります。この記事では、その3つの仕組みを条文と金額で確認します。
金額を入れて試す:株の損益通算・繰越控除と配当の課税方式シミュレーター(令和8年分。特定口座(源泉徴収あり)は口座ごとに申告する/しないを選べます)
1. その年の損益通算:損は「申告分離を選んだ配当」からしか引けない
上場株式等に係る譲渡損失は、その年分の上場株式等に係る配当所得等の金額を限度として控除できます(租税特別措置法37条の12の2第1項)。ここでいう配当所得等は、国税庁 No.1474 が明記しているとおり「申告分離課税を選択したものに限ります」。
逆にいうと、次のことはできません。
- 給与所得や年金の雑所得と通算する — できません。措法37条の11第1項の後段が「上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、……当該損失の金額は生じなかつたものとみなす」と定めています。
- 一般株式等(非上場株式など)の譲渡益と通算する — 繰り越された損失についても、一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することはできません(No.1474 注1)。
- 配当を総合課税で申告しながら、その年の損失と通算する — できません。総合課税を選ぶと、通算する相手そのものが無くなります。
- NISA 口座の損失を通算する — できません(No.1474 注3)。相対取引などによる譲渡損失も対象外です(同 注2)。
計算例1:損の口座と益の口座を通算する
| 口座A 特定口座(源泉徴収あり) | 年間の譲渡損益 ▲800,000円/同じ口座に受け入れた配当 200,000円 |
|---|---|
| 口座B 特定口座(源泉徴収あり) | 年間の譲渡損益 +500,000円(配当なし) |
口座Aは、口座の中で配当200,000円から譲渡損失800,000円が引かれているため、源泉徴収税額は0円です(国税庁 No.1476)。口座Bは譲渡益500,000円に対し、所得税+復興特別所得税 76,575円(15.315%)と住民税 25,000円(5%)が引かれています。
ここで両方の口座を申告すると、次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 申告する口座の譲渡損益(▲800,000+500,000) | ▲300,000円 |
| 申告する配当(口座Aの配当も申告対象になります) | 200,000円 |
| その年の損益通算(措法37条の12の2第1項) | 200,000円 |
| 通算後の分離課税の所得 | 0円 |
| 戻る所得税+復興特別所得税 | 76,523円 |
| 戻る住民税(翌年度に精算) | 25,000円 |
| 翌年以後3年内に繰り越せる損失 | 100,000円 |
源泉徴収された76,575円に対して戻るのが76,523円と52円少ないのは、年末調整では年税額の100円未満が切り捨てられているのに対し(所得税法190条)、確定申告はその年分の年税額を切り捨てずに計算するためです。この52円は株の申告とは関係なく出る差です(この例では給与の年税額206,752円が年末調整で206,700円になっていました)。どなたにも52円出るわけではありません。切り捨てられた端数は年税額しだいで0〜99円です。切り捨てる前から年税額が0円の方(所得控除で課税所得が0円の方、住宅ローン控除で所得税が0円になっている方など)には生じません。逆に、100円未満の切捨てによって0円になっていた方には生じます(年税額51円なら年末調整では0円ですが、確定申告ではその51円が出ます)。
口座Aの配当は、自動的に申告対象になります。源泉徴収口座内で生じた譲渡損失を申告する場合、その口座に受け入れた配当等を申告不要にすることはできないからです(国税庁 No.1476)。配当の側の源泉徴収税額はすでに0円なので、この例では戻る額は変わりませんが、配当200,000円が合計所得金額に入るかどうかは変わります(この例では損益通算で0円まで消えるため、加わる額も0円です)。
2. 3年繰越:条件は「連続して申告していること」
損益通算してもなお控除しきれない損失は、その年分の翌年以後3年間にわたって繰り越せます(措法37条の12の2第5項)。条件は第7項が定めています。
- 損失が生じた年分に、付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)と計算明細書を付けた確定申告書を出していること。
- その後において連続して確定申告書を出していること。国税庁 No.1474 の注は「上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です」と書いています。
「1年でも申告を飛ばすと繰越が切れる」というのは、この第7項の「連続して」から来ています。
控除の順序(措令25条の11の2第8項)
| 1号 | 2以上の年に生じたものがあるときは、最も古い年に生じたものから順次控除する。 |
|---|---|
| 2号 | 1つの年の損失を控除するとき、まず上場株式等に係る譲渡所得等の金額から控除し、控除しきれない分を配当所得等の金額から控除する。 |
| 3号 | 所得税法71条1項(雑損失の繰越控除)より先にこの繰越控除を行う。 |
計算例2:繰越損失を使う
| 今年(令和8年分) | 譲渡益 1,000,000円/配当 100,000円(どちらも特定口座・源泉徴収あり) |
|---|---|
| 繰越損失 | 2023年分 300,000円/2024年分 400,000円 |
| ほかの課税総所得金額 | 3,000,000円 |
| 株の所得を除いた合計所得金額 | 7,000,000円(基礎控除の段(489万円・655万円)はすでに越えているので、申告で基礎控除は減りません。段をまたぐ場合は下の「自分の基礎控除が減ることがあります」をご覧ください) |
源泉徴収されているのは所得税168,465円・住民税55,000円です。配当を申告分離課税で申告した場合、繰越損失700,000円は古い2023年分から使われ、まず譲渡所得等1,000,000円から、次に配当所得等100,000円から引かれて、通算後の分離課税の所得は400,000円になります。
| 項目 | 申告分離 | 総合課税 |
|---|---|---|
| 繰越控除の額 | 700,000円 | 700,000円 |
| 分離課税の課税標準 | 400,000円 | 300,000円 |
| 戻る所得税+復興 | 107,153円 | 122,468円 |
| 戻る住民税 | 35,000円 | 32,800円 |
| 合計で戻る額 | 142,153円 | 155,268円 |
この例では、配当を総合課税にしたほうが 13,115円 多く戻ります。課税総所得金額が300万円なので、配当100,000円にかかる所得税10%と配当控除10%がちょうど相殺され、住民税だけ 10%−2.8%=7.2% の負担になるためです。繰越損失を配当から引く必要がないくらい譲渡益がある年は、配当を総合課税に回す余地があります。
落とし穴:当年の損失が先に使われ、古い繰越が期限切れになる
計算例1の人が、2023年分の繰越損失300,000円と2025年分の繰越損失100,000円を持っていたとします。この年は譲渡損益の合計が▲300,000円で、配当200,000円と損益通算してもまだ▲100,000円の損失が残ります。譲渡所得等も配当所得等も0円なので、繰越控除を使う相手が残っていません。
| 年分 | 繰越額 | 使えた額 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2023年分 | 300,000円 | 0円 | 令和8年分が最後の年なので期限切れ |
| 2025年分 | 100,000円 | 0円 | 令和10年分まで繰越 |
| 令和8年分(当年) | 100,000円 | — | 令和11年分まで繰越 |
その年の損益通算(第1項)が先で、繰越控除(第5項)はそのあとという順序によるものです。古い繰越損失を持っている年に、あえて含み益を確定させて使い切っておくという考え方が出てくるのはこのためですが、売る・売らないの判断は税だけで決まるものではありません。
3. 配当は総合課税と申告分離課税のどちらが軽いか
上場株式等の配当は、(1)申告不要、(2)申告分離課税、(3)総合課税の3つから選べます。(2)と(3)は、その年に申告する上場株式等の配当の全額についてどちらかに統一しなければなりません(措法8条の4第2項、国税庁 No.1330)。口座ごとに使い分けることはできません。
ただし「利子」は総合課税を選べません。措法8条の4第2項が総合課税との選択を認めているのは、同条第1項1号から3号までの配当所得に係る部分だけで、2号には「公社債投資信託以外の証券投資信託に係るものに限る」というかっこ書きが付いています。そのため、特定公社債(国債・地方債・社債)の利子、公社債投資信託(MRF など)の収益の分配、公募特定受益証券発行信託の収益の分配、特定目的信託の社債的受益権の剰余金の配当は、申告するなら申告分離課税になります。譲渡損失との損益通算・繰越控除の相手にはなります(措法37条の12の2第1項の「上場株式等に係る配当所得等の金額」は利子所得を含みます)。
| 申告分離課税 | 20.315%(所得税15%+復興+住民税5%)。配当控除なし(措法8条の4第1項後段)。その年の譲渡損失と損益通算できる。 |
|---|---|
| 総合課税 | ほかの所得と合算して累進税率。配当控除あり(所得税10%・住民税2.8%)。その年の譲渡損失とは通算できない。 |
配当控除の率(所得税法92条・地方税法附則5条)
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 剰余金の配当等(国内株式、国内株価指数に連動する ETF) | 10% | 2.8% |
| 同上のうち1,000万円を超える部分 | 5% | 1.4% |
| 証券投資信託の収益の分配(公募株式投資信託。外貨建等証券投資信託を除く) | 5% | 1.4% |
| 同上のうち1,000万円を超える部分 | 2.5% | 0.7% |
外貨建等証券投資信託(特定外貨建等証券投資信託を除く)の収益の分配は、控除率が上の表の半分の所得税2.5%・住民税0.7%(1,000万円を超える部分は1.25%・0.35%)です(No.1250、租税特別措置法9条4項、地方税法附則5条)。シミュレーターはこの区分に対応していないので、該当する分配金がある方は結果より控除が小さくなります。
外国法人から受ける配当には配当控除がありません(所得税法92条1項のかっこ書き)。国税庁 No.1250 が挙げる「配当控除の対象にならない配当」には、ほかに外国株価指数連動型特定株式投資信託(S&P500 や全世界株式などに連動する ETF)、特定外貨建等証券投資信託、J-REIT(投資法人)の分配金、特定目的信託の社債的受益権の剰余金の配当、基金利息があります(このうち特定目的信託の社債的受益権の剰余金の配当は、措法8条の4第1項5号なので総合課税を選ぶこと自体ができません。基金利息は上場株式等の配当等ではないので、このツールの対象外です)。「国内で売買できる ETF だから10%」ではありません。連動対象が外国株価指数なら、国内に上場していても対象外です。外国株や外国指数の ETF が中心の方は、総合課税にしても控除が付かないので分離課税のほうが軽くなるのが普通です。
もうひとつ見落としやすいのが、1,000万円の判定に使うのが「課税総所得金額等」だという点です。No.1250 の注が「課税総所得金額、……上場株式等に係る課税配当所得等の金額、株式等に係る課税譲渡所得等の金額および先物取引に係る課税雑所得等の金額の合計額」と定義しています。株の譲渡益を申告すると、この合計が1,000万円を超えて配当控除の率が半分になることがあります。
計算例3:国内株式の配当500,000円だけを申告する
いずれも基礎控除の段(合計所得金額489万円・655万円)をまたがない前提です(株の所得を除いた合計所得金額を、それぞれ104万円・700万円・900万円とし、所得控除を引ききれずに余ることはないものとしています。1行目は所得控除が基礎控除104万円だけで、合計所得金額と同額のため課税総所得金額が0円になる方です)。またぐ場合は基礎控除が減って税額が上がるので、下の「自分の基礎控除が減ることがあります」をご覧ください。
| ほかの課税総所得金額 | 申告分離 | 総合課税 | 差 |
|---|---|---|---|
| 0円(合計所得104万円・所得控除は基礎控除だけ) | 101,575円 | 36,000円 | 総合が65,575円軽い |
| 3,000,000円 | 101,575円 | 56,420円 | 総合が45,155円軽い |
| 7,000,000円 | 101,575円 | 102,365円 | 分離が790円軽い |
「課税総所得金額が695万円を超えたら分離」という目安が語られるのは、所得税の税率が695万円で20%から23%に上がるからです。ただしこれは、配当控除が10%(住民税2.8%)になる国内株式等の配当だけの話です。配当控除5%(住民税1.4%)の公募株式投資信託の分配金では、20%の帯でも (20%−5%)×1.021+(10%−1.4%)=23.915% となり、20.315%の申告分離課税のほうが軽くなります。配当控除のない外国株の配当や J-REIT の分配金なら、なおさらです。以下は国内株式等の配当を前提にした話です。配当控除10%を引いた実効の負担は、
- 20%の帯:(20%−10%)×1.021+(10%−2.8%)=17.41% → 20.315%より軽い
- 23%の帯:(23%−10%)×1.021+(10%−2.8%)=20.473% → 20.315%より重い
となり、695万円が分かれ目になります。ただしこれは目安です。配当を足したことで帯をまたぐ場合、配当の一部だけが23%になります。たとえば課税総所得金額が690万円で配当が100,000円なら、そのうち50,000円だけが23%の帯に入るので、総合課税のほうがまだ軽くなります(総合18,942円/分離20,315円)。シミュレーターは帯をまたぐ場合も実額で計算します。
また、課税総所得金額が小さいと配当控除を使い切れません。配当控除の額はその年分の所得税額が限度で(所得税法92条2項)、超える分は切り捨てられます。ただしそれでも、総合課税にすれば源泉徴収された所得税が戻る分だけ有利になることが多く、上の表の「0円」の行がその例です。
4. 申告すると合計所得金額が増えます
ここがいちばん大事な注意点です。申告した譲渡益と配当は、ほかの制度の所得にも入ります。ただしどの所得の物差しを使うかは制度によって違い、繰越控除の扱いも変わります。
| 合計所得金額(繰越控除前) | 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の判定(配偶者や親の扶養に入っている方は外れることがあります)、基礎控除の段(489万円・655万円)、住民税の均等割の非課税限度額。 |
|---|---|
| 総所得金額等(繰越控除後) | 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の算定、住民税の所得割の非課税限度額、医療費控除の「総所得金額等の5%」。 |
| 課税所得(住民税) | 国民健康保険・後期高齢者医療に加入している70歳以上の方の医療費の窓口負担の割合(協会けんぽ・健康保険組合では標準報酬月額で判定します)。高額療養費の区分は、加入している保険と年齢で基準が違います(国民健康保険は70歳未満が基礎控除後の総所得金額等・70歳以上が住民税の課税所得、後期高齢者医療は住民税の課税所得、協会けんぽ・健康保険組合は70歳以上でも標準報酬月額)。 |
| 住民税の所得割額 | ふるさと納税の控除上限額(特例分の上限は住民税の所得割額の20%)。申告で所得割が増えれば上限も上がりますが、繰越控除で所得割が増えなければ上限も変わりません。 |
とくに気をつけたいのが合計所得金額のほうです。繰越控除では減りません。合計所得金額は繰越控除を適用する前の金額で計算するので、繰越損失で所得税・住民税が0円になっても、合計所得金額には譲渡益がそのまま入ります。「税金は戻ったのに、扶養を外れた」という話はここから起きます。所得税の扶養控除・配偶者控除は申告したその年分の合計所得金額で判定されるので、家族の側でその年分の控除が受けられなくなることがあります(No.1180)。住民税は翌年度分に影響します。国民健康保険料は繰越控除後の総所得金額等で算定されるので、こちらは繰越損失で抑えられます。このツールが表示するのは合計所得金額に加わる額(繰越控除前)です。
なお、その年の損益通算(措法37条の12の2第1項)は合計所得金額に反映されます。繰越控除とは扱いが違うので、計算例1のように当年の損失で配当が消えるケースでは、合計所得金額も増えません。
自分の基礎控除が減ることがあります
令和8年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円、655万円以下なら67万円、2,350万円以下なら62万円です(2,350万円を超えると段階的に減り、2,400万円以下48万円・2,450万円以下32万円・2,500万円以下16万円・それを超えると0円。No.1199)(所得税法86条に租税特別措置法41条の16の2の加算額を足したもの)。株の所得を申告して合計所得金額がこの段をまたぐと、基礎控除が減ります。株以外の合計所得金額が480万円・課税総所得金額が376万円(所得控除の合計が104万円)の方が譲渡益20万円を申告すると、合計所得金額が500万円になって基礎控除が37万円減り、課税総所得金額が413万円に上がります。譲渡益20万円分の税金(30,630円)だけでなく、もともとの所得にかかる所得税も増えて、合わせて106,184円になります。いくら増えるかは課税総所得金額しだいです。同じ合計所得480万円でも課税総所得金額が300万円なら、37万円のうち30万円が10%の帯・7万円が20%の帯に入るので、増えるのは75,554円です。シミュレーターはこの段差を計算に入れています。住民税の基礎控除は43万円で、合計所得金額2,400万円まで変わりません。
令和6年度分(令和5年分の所得)からは、住民税だけ所得税と違う課税方式を選ぶことができなくなりました。かつては「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という組み合わせで保険料への影響を避ける方法がありましたが、現在はできません。
5. 手続き
| 損益通算 | 適用を受ける旨を記載した確定申告書に、付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)と株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を添付して提出(No.1474)。 |
|---|---|
| 繰越控除 | 損失の年分に上と同じ書類を付けて申告し、その後も連続して付表を付けた確定申告書を提出。譲渡がなかった年も申告が要ります。 |
| 期限 | 申告義務がある場合は2027年3月15日。義務がなく還付になるだけの方(還付申告)は2027年1月1日から5年間できますが、繰越のための申告は毎年必要です。 |
| 住民税 | 所得税の確定申告をすれば住民税にも反映されます。申告した配当割額・株式等譲渡所得割額は翌年度の住民税の所得割から控除され、控除しきれない分は還付・充当されます(地方税法314条の9・37条の4)。所得税のようにすぐ振り込まれるわけではありません。 |
よくある質問
特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告はしなくてよいのですか?
源泉徴収口座内の譲渡による所得は、口座ごとに申告するか申告不要とするかを選べます(国税庁 No.1476)。ただし、ほかの口座の損益と相殺する場合、前年以前3年内の繰越損失を使う場合、その年の損失を翌年へ繰り越す場合には確定申告が必要です。申告不要を選んだ分は申告の計算に入らないので、その源泉徴収税額もその年分の所得税額から差し引けません(No.1476)。
株の損失は給与所得と損益通算できますか?
できません。措法37条の11第1項の後段が「上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、……当該損失の金額は生じなかつたものとみなす」と定めているためです。通算できるのは、その年の上場株式等に係る配当所得等の金額(申告分離課税を選択したものに限る)だけです。
繰越損失は古い年と新しい年のどちらから使われますか?
最も古い年からです(措令25条の11の2第8項1号)。1つの年の損失を控除するときは、まず譲渡所得等の金額から、次に配当所得等の金額から引きます(同項2号)。その年の損失による損益通算が先で、繰越控除はそのあとなので、当年に大きな損失が出た年は古い繰越損失を使えないまま期限切れにすることがあります。
配当を総合課税にすると得になるのはどんな人ですか?
国内株式等の配当(配当控除10%)を受けていて、課税総所得金額が小さい人です。配当を加えたあとの課税総所得金額が695万円以下におさまる範囲では総合課税のほうが軽くなり、それを超えると申告分離課税の20.315%のほうが軽くなるのが目安です。この目安は配当控除10%が前提です。公募株式投資信託の分配金(配当控除5%)は課税総所得金額330万円を超えると分離課税のほうが軽く、外国株の配当や J-REIT の分配金には配当控除がありませんが、所得税5%の帯(課税総所得金額195万円以下)なら総合課税のほうが軽くなります(5%×1.021+住民税10%=15.105%で、20.315%より軽い)。195万円を超え330万円以下なら10%×1.021+10%=20.21%で、まだわずかに(0.105%だけ)総合課税が軽く、330万円を超えると20%×1.021+10%=30.42%になって分離課税のほうが軽くなります。ただし、総合課税を選ぶとその年の譲渡損失と通算できなくなること、外国法人からの配当には配当控除がないこと、申告した配当が合計所得金額に入ることも合わせて考える必要があります。
公社債の利子や MRF の分配金も総合課税にできますか?
できません。措法8条の4第2項が総合課税との選択を認めているのは、同条第1項1号から3号までの配当所得に係る部分だけです(2号は「公社債投資信託以外の証券投資信託に係るものに限る」)。特定公社債の利子や公社債投資信託の収益の分配は利子所得なので、申告するなら申告分離課税になります。譲渡損失との損益通算・繰越控除の相手にはなります。
口座ごとに、配当は総合課税、譲渡益は分離課税、と分けられますか?
譲渡所得等は分離課税しかありません(措法37条の11第1項)。配当の課税方式はその年に申告する上場株式等の配当の全額について統一する必要があります(措法8条の4第2項)。ただし、特定口座(源泉徴収あり)の譲渡による所得は、口座ごとに「申告しない」を選べます(措法37条の11の5、国税庁 No.1476)。特定口座(源泉徴収なし)と一般口座の譲渡損益にはこの選択がなく、確定申告をするなら含めます。配当のほうは口座の種類にかかわらず、1回に支払を受けるべき配当等ごと(源泉徴収口座に受け入れたものは口座ごと)に申告不要を選べます(国税庁 No.1330)。
申告すると何が増えますか?
申告した譲渡益と配当が合計所得金額(繰越控除前)と総所得金額等(繰越控除後)に入ります。合計所得金額は配偶者控除・扶養控除の判定、本人の基礎控除の段、住民税の均等割の非課税限度額に使われ、繰越控除では減りません。総所得金額等は国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の算定などに使われ、こちらは繰越控除後の金額です。
まとめ
- 株の譲渡損失は、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当とだけ通算できる(措法37条の12の2第1項)。給与・年金・一般株式等とは通算できない。
- 控除しきれない損失は翌年以後3年繰り越せるが、損失の年から毎年連続して申告していることが条件(同第7項)。譲渡がなかった年も申告が要る。
- 繰越は古い年から、まず譲渡所得等、次に配当所得等の順(措令25条の11の2第8項)。当年の損益通算が先なので、古い繰越が期限切れになることがある。
- 配当は総合課税と申告分離課税のどちらかに年単位で統一する(措法8条の4第2項)。分かれ目の課税総所得金額695万円は配当控除10%の国内株式等の配当を前提にした目安で、投資信託(5%)や外国株(控除なし)では当てはまらない。帯をまたぐ場合は実額で計算する。利子(特定公社債の利子・公社債投資信託の分配金など)は総合課税を選べない。
- 外国法人からの配当・J-REIT の分配金には配当控除がない。1,000万円の判定は課税総所得金額「等」で、株の譲渡益も足す。
- 申告すると合計所得金額が増える。繰越控除では減らない。
この記事は一般的な説明です。個別の取扱いは税務署または税理士にご確認ください。関連:株の損益通算・繰越控除と配当の課税方式シミュレーター/副業の確定申告 要否判定+税額シミュレーター/住民税 計算ツール/住民税の計算方法と、所得割・均等割の仕組み/ふるさと納税 控除上限額シミュレーター(株の所得を申告して住民税の所得割が増えれば上限も変わります)/年金受給者の確定申告は必要?400万円・20万円の判定と、申告すると戻る人(年金の申告と株の申告は同じ確定申告書で出します)。