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医療費控除でいくら戻る?セルフメディケーション税制とどっちが得か

令和8年分(2026年1〜12月に支払った分・2027年3月申告) 最終更新:2026年10月6日

結論:医療費控除で戻るのは控除額そのものではなく、控除によって軽くなった所得税(源泉徴収税額が上限)で、住民税は戻らずに翌年度の税額が控除額のおよそ10%安くなります。対象は、2026年1〜12月に支払った医療費(保険金などで補填される分を除く)が10万円(総所得金額等が200万円未満の方はその5%)を超える方です。たとえば年収500万円(独身・扶養なし・東京都・40歳未満)の会社員が医療費を30万円支払った(補填なし)場合、控除額は200,000円で、確定申告で戻る所得税は10,125円、翌年度に減る住民税は20,000円です。控除額がそのまま戻るわけではなく、戻るのは所得税だけです。この記事では、控除額の出し方と、実際に手元に来る金額の計算を条文から順に説明し、セルフメディケーション税制とどちらを選ぶべきかも比べます。

控除額の出し方

根拠は所得税法73条1項です。

その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が二百万円を超える場合には、二百万円)を……控除する

整理すると、控除額 =(支払った医療費 − 保険金などで補填される金額)−(10万円と総所得金額等の5%の小さいほう)、上限200万円です。

「10万円」は全員ではありません

条文は「5%(10万円を超える場合は10万円)」と書いています。総所得金額等が200万円ちょうどだと5%=10万円で同じになるので、200万円未満の方だけ足切りが10万円より小さくなります。これが「5%ルール」です。

総所得金額等足切り
150万円75,000円
1,829,600円(給与収入273万円)91,480円
199万円99,500円
200万円以上100,000円

給与収入273万円の方なら給与所得は1,829,600円なので、足切りは91,480円です。医療費が10万円に届かなくても控除を受けられます。

保険金などで補填される金額は「その治療ごと」に引く

国税庁 No.1120 は「保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません」としています。入院給付金が10万円で、その入院にかかった費用が8万円だったなら、差し引くのは8万円までです。余った2万円を別の通院費から引くことはできません。

実際にいくら戻るのか

年収500万円(独身・扶養なし・東京都・40歳未満)の会社員が、医療費を30万円支払った(補填なし)場合で見ていきます。

1. 控除額

給与所得は3,560,000円なので総所得金額等は200万円以上、足切りは10万円。控除額は 300,000 − 100,000 = 200,000円です。

2. 所得税がいくら軽くなるか

社会保険料(概算723,144円)と令和8年分の基礎控除1,040,000円を引くと、課税所得は1,796,000円(1,000円未満切捨て)。医療費控除を入れると1,596,000円になります。

項目控除なし控除あり
課税所得1,796,000円1,596,000円
所得税(5%)89,800円79,800円
復興特別所得税(2.1%)1,885円1,675円
年税額91,685円81,475円

差は10,210円。これが「軽くなる所得税」です。

3. 戻る額は源泉徴収税額が上限

確定申告で戻るのはすでに源泉徴収されている所得税です。この方の源泉徴収税額(年末調整で確定した額。100円未満切捨て)は91,600円なので、91,600 − 81,475 = 10,125円が還付されます。軽くなる所得税10,210円より少し少ないのは、年末調整の段階で100円未満が切り捨てられているためです。

源泉徴収税額が0円の方に、所得税の還付はありません。ただし、確定申告で所得税を納める方は「納める額が減る」形で効きます(納付額は100円未満切捨て)。所得税がまったくかからない方(納める所得税も無い方)は、住民税の申告だけでも翌年度の住民税に反映できます。

住宅ローン控除で所得税が0円になっている方は別です。所得税で使いきれなかった住宅ローン控除は住民税から差し引かれますが、医療費控除を入れると所得税で使う住宅ローン控除の額が変わり、住民税に繰り越される額も変わります。この分は住民税の申告だけでは反映できないことがあるので、税務署か市区町村にご確認ください。

4. 住民税は「戻る」のではなく、翌年度が安くなる

住民税は前年の所得をもとに翌年度の税額を決める仕組みなので、いま戻ってくるお金はありません。医療費控除を申告すると、令和9年度(2027年6月から)の住民税が安くなります。所得割の税率は10%なので、この例では20,000円減ります。会社員の方は2027年6月からの給与天引き額が下がる形です。

項目金額
控除額200,000円
軽くなる所得税10,210円
戻ってくる所得税10,125円
翌年度に減る住民税20,000円
合計の効果30,125円
ご自身の年収・医療費・市販薬の購入額を入れると、2つの制度を同時に計算して比べられます:医療費控除 還付金シミュレーター(無料・登録不要・データはブラウザ内で処理)。

セルフメディケーション税制とどちらが得か

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例で、根拠は租税特別措置法41条の17第1項です。所得税法73条1項を次のように読み替えて適用します。

つまり控除額 =(対象の市販薬の購入額 − 補填される金額)− 1万2,000円、上限8万8,000円です。適用には申告する本人がその年中に健康の保持増進および疾病の予防への取組を行っていることが要件です(保険者の人間ドック・各種健診、市区町村の健康診査、予防接種、勤務先の定期健康診断、特定健康診査・特定保健指導、市区町村のがん検診のいずれか。国税庁 No.1129)。購入費は生計を一にする家族の分も対象になりますが、取組は本人のものである必要があります。

比べ方は「控除額の大きいほう」

同じ年収500万円の方が、医療費12万円・対象の市販薬10万円(取組あり)だった場合です。

項目通常の医療費控除セルフメディケーション
控除額20,000円88,000円
軽くなる所得税1,021円4,492円
戻ってくる所得税936円4,407円
翌年度に減る住民税2,000円8,800円
合計の効果2,936円13,207円

この場合はセルフメディケーション税制のほうが10,271円得です。医療費が足切り(10万円)をあまり超えないとき、市販薬をよく買う人はこちらが有利になります。逆に医療費が30万円あれば、さきほどの例のとおり通常の医療費控除のほうが大きくなります。

更正の請求・修正申告では選び直せません

国税庁 No.1131 は「セルフメディケーション税制の適用を受けることを選択した納税者は通常の医療費控除を受けることができず」としたうえで、「選択して確定申告書を提出した場合には、その後において納税者が更正の請求や修正申告書により、セルフメディケーション税制から通常の医療費控除へ適用を変更することはできません」と明記しています。逆方向も同じです。提出する前に比べてください。

なお、控除額が同じになる場合は通常の医療費控除をおすすめします。対象になる支出の範囲が広く、翌年以降も使いやすいためです。セルフメディケーション税制の適用期間は改正で延長されることがあるので、最新の取扱いは国税庁の案内でご確認ください。

5%ルールが効く例

給与収入273万円(給与所得1,829,600円)の方が医療費20万円を支払った場合です。足切りは91,480円なので、控除額は108,520円になります。

項目金額
控除額108,520円
軽くなる所得税5,565円
戻ってくる所得税5,494円
翌年度に減る住民税10,900円
合計の効果16,394円

足切りが10万円だったら控除は10万円で、効果はもう少し小さくなります。所得が低い方ほど足切りが下がる仕組みです。

申告するときに気をつけること

  1. 年末調整では受けられません。所得税に反映するには確定申告が必要です。所得税がもともとかからない方(源泉徴収税額が0円で、確定申告で納める所得税も無い方)は、住民税の申告だけでも翌年度の住民税に反映できます(確定申告をすればそれで足ります)。ただし住宅ローン控除がある方は、所得税で使う控除額が変わると住民税への繰越額も変わるので、住民税の申告だけで足りるとは限りません。取扱いはお住まいの市区町村の案内で確認してください。
  2. ふるさと納税のワンストップ特例は無効になります。確定申告をしても、住民税の申告をしても、提出済みのワンストップ特例の申請はなかったことになります。寄附をしている方は確定申告・住民税の申告のどちらをする場合でも、寄附金を含めて申告してください(上限額はふるさと納税 控除上限額シミュレーターで確認できます)。
  3. 医療費控除の明細書が必要です。健康保険組合などから届く医療費通知を使う方法もあります。領収書は5年間保存します。
  4. セルフメディケーション税制を使う場合は、取組を行ったことを明らかにする書類(領収書・結果通知表など)が必要です。
  5. 2026年中に実際に支払った分が対象です。年をまたいで支払った分は、支払った年に入ります。
  6. 対象になる医療費かどうかは国税庁 No.1122・No.1124 で確認してください。通院の交通費は対象になりますが、自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外など、細かい線引きがあります。

よくある質問

医療費控除は医療費が10万円を超えないと使えないのですか?

総所得金額等が200万円以上の方は10万円ですが、200万円未満の方は総所得金額等の5%が足切りになります。所得税法73条1項が「総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)」と定めているためです。給与収入273万円(給与所得1,829,600円)の方なら足切りは91,480円なので、医療費が10万円に届かなくても控除を受けられます。

医療費控除でいくら戻りますか?

「軽くなる所得税」と「実際に戻る額」は別です。軽くなる所得税は控除ありとなしの年税額の差で、戻る額にはさらに源泉徴収税額という上限がかかります。年収500万円(独身・扶養なし)で医療費30万円・補填なしなら、控除は20万円、所得税は10,210円軽くなり、実際に戻るのは10,125円です(年末調整で年税額の100円未満が切り捨てられているため)。これとは別に、翌年度の住民税が20,000円安くなります。戻るのは源泉徴収されている所得税が上限なので、源泉徴収税額が0円の方に所得税の還付はありません。

住民税も戻ってきますか?

住民税は戻りません。住民税は前年の所得をもとに翌年度の税額を決めるので、医療費控除を申告すると翌年度(令和9年度)の住民税が安くなります。会社員の方は2027年6月からの給与天引き額が下がる形です。所得割の税率は10%なので、控除額のおよそ10%が減ります。

セルフメディケーション税制と医療費控除はどちらが得ですか?

控除額が大きいほうが得です。医療費が足切りを大きく超えるなら通常の医療費控除、医療費は少ないが対象の市販薬をよく買うならセルフメディケーション税制が有利になりやすいです。両方は使えず、提出後に更正の請求や修正申告で選び直すこともできません(国税庁 No.1131)。同じ額になる場合は、対象になる支出の範囲が広い通常の医療費控除をおすすめします。

医療費の明細はどう作ればいいですか?

国税庁の「医療費集計フォーム」(Excel)に、医療を受けた人ごと・病院や薬局ごとの医療費を入力しておくと、確定申告書等作成コーナーで読み込んで医療費控除の明細書を作れます(作成コーナーの医療費控除の入力方法の「医療費集計フォームを読み込む」)。tekiba.app の医療費控除シミュレーターは医療費の合計から控除額と戻る額を計算するもので、明細は作りません。ツールの金額をそのまま集計フォームや明細書に写すことはできないので、領収書や医療費通知から1件ずつ入力してください。セルフメディケーション税制を選ぶ場合は、医療費集計フォームは使えません。

まとめ

この記事は一般的な説明です。個別の取扱いは税務署または税理士にご確認ください。関連:医療費控除 還付金シミュレーター/年末調整 還付金シミュレーター/住民税 計算ツール/住民税の計算方法と、所得割・均等割の仕組み/ふるさと納税 控除上限額シミュレーター。

医療費控除の額を確定申告書と医療費控除の明細書のどの欄に書くかの記入例は、Tekiba の有料記事(note・980円)にまとめています。

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