住民税の計算方法と、所得割・均等割の仕組み
結論:住民税(市区町村民税+都道府県民税、市県民税とも呼ばれます)の年額は、(所得−所得控除)×10%から調整控除・税額控除を引いた所得割に、均等割と森林環境税をあわせた年5,000円(自治体独自の上乗せがある場合を除く)を足した額で、2026年の給与収入500万円・独身・社会保険料72万3,144円なら年243,000円(6月20,800円、7月以降20,200円の天引き)です。この記事は、令和8年分(2026年)の所得にかかる令和9年度の住民税を計算したい人、特に給与から天引きされている会社員に向けて書いています。所得税と違って税率がほぼ一律10%なので、仕組みさえ分かれば自分で検算できます。この記事では、年収から住民税の年額と月々の天引き額を求める手順を、令和8年度税制改正後の数字で説明します。
住民税は「前年の所得」に「翌年6月から」かかる
住民税は1月1日時点で住んでいる自治体が、前年(1〜12月)の所得をもとに計算し、6月から翌年5月にかけて徴収します。たとえば2026年(令和8年)の所得に対する住民税は「令和9年度分」として、2027年6月から2028年5月に払います。会社員は給与から12回に分けて天引きされ(特別徴収)、それ以外の人は6月・8月・10月・翌1月の4回で納付書か口座振替で払います(普通徴収)。
この1年のずれのため、新卒1年目は(入社前の年に住民税がかかる所得がなければ)住民税は引かれず、2年目の6月から急に手取りが減ります。逆に退職した年は、翌年に前年の所得分の住民税を自分で払う必要があります。退職した月で残りの徴収方法が変わる点は年末退職の税金:年末調整・退職金・翌年の住民税(令和8年分)で解説しています。
計算の手順
住民税は「所得割」と「均等割」の合計です。所得割は所得に応じて決まり、均等割は所得にかかわらず定額です。
- 所得を出す。給与なら「給与収入−給与所得控除」が給与所得。令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額は74万円(令和8・9年分)になり、住民税も令和9年度分から同じ額を使います。副業の事業・雑所得、年金、不動産所得などがあれば合算します。
- 所得控除を引く。社会保険料控除(全額)、小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)、生命保険料控除(住民税は最高7万円)、地震保険料控除(最高2万5,000円)、医療費控除、配偶者(特別)控除、扶養控除、障害者控除、寡婦・ひとり親控除、基礎控除(合計所得2,400万円以下で43万円)など。住民税の控除額は所得税より小さいものが多く、基礎控除は所得税の62〜104万円に対して住民税は43万円です。どちらも高所得で逓減しますが、始まる所得が違います——所得税は合計所得2,350万円を超えると62万円→48万円→32万円→16万円→0円、住民税は2,400万円を超えると43万円→29万円(2,450万円以下)→15万円(2,500万円以下)→0円(2,500万円超)です。
- 課税所得×10%。所得から所得控除を引いた「課税総所得金額」(1,000円未満切り捨て)に10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%、政令指定都市は8%+2%)を掛けます。所得税のような累進税率ではありません。市区町村民税と都道府県民税は別々の税なので、最後にそれぞれ100円未満を切り捨てます(調整控除や税額控除も6:4で按分します。政令指定都市は所得割が8%+2%なので按分も8:2——調整控除2,500円なら市民税2,000円・県民税500円です)。
- 調整控除を引く。所得税と住民税で人的控除(基礎控除・扶養控除など)の額が違うことによる負担増を和らげるための控除で、課税所得200万円以下なら「人的控除の差額の合計」と「課税所得」の少ないほうの5%、200万円超なら差額の合計から(課税所得−200万円)を引いた額の5%(最低2,500円)です。独身なら基礎控除分の5万円×5%=2,500円になります(課税所得が5万円未満のときは「課税所得×5%」——課税所得3万円なら1,500円。上の「少ないほう」の判定がここで効きます。合計所得金額2,500万円超は調整控除そのものが適用されません)。
- 税額控除を引く。調整控除→配当控除→住宅借入金等特別税額控除(所得税で引ききれなかった分、上限97,500円など)→ふるさと納税の寄附金税額控除→外国税額控除→配当割額・株式等譲渡所得割額控除の順に引きます。順序が決まっているので、所得割額が小さい人は後ろの寄附金税額控除から引ききれなくなります。
- 均等割を足す。令和6年度から市区町村民税3,000円+都道府県民税1,000円=4,000円に、国税の森林環境税1,000円を合わせて年5,000円です(自治体独自の上乗せがある場合を除く)。
年収500万円・独身の計算例
2026年の給与収入500万円、社会保険料は協会けんぽ(東京都・40歳未満)で概算した72万3,144円、扶養なしの場合です。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 給与所得 | 500万円−給与所得控除144万円 | 3,560,000円 |
| 所得控除 | 社会保険料723,144円+基礎控除430,000円 | 1,153,144円 |
| 課税総所得金額 | 3,560,000−1,153,144(1,000円未満切り捨て) | 2,406,000円 |
| 所得割(調整控除前) | 市民税 2,406,000×6%/都民税 2,406,000×4% | 144,360円/96,240円 |
| 調整控除 | 人的控除差5万円×5%=2,500円を市民税60%・都民税40%で按分 | −1,500円/−1,000円 |
| 所得割(それぞれ100円未満切り捨て) | 142,860→142,800/95,240→95,200 | 238,000円 |
| 均等割+森林環境税 | 4,000+1,000 | 5,000円 |
| 住民税 年額 | 243,000円 | |
| 月々の天引き額 | 243,000÷12=20,250円 → 100円未満を切り捨てた20,200円を7月〜翌5月の11回、残りを6月分に | 6月 20,800円、7月以降 20,200円 |
特別徴収では、年税額を12で割った額の100円未満の端数を最初に徴収する6月分に合算します(地方税法第321条の5)。普通徴収の4期払いでは、1,000円未満の端数を第1期に合算します(同第20条の4の2)。年税額が均等割額に相当する金額(均等割4,000円+森林環境税1,000円=5,000円)以下のときは、分割せず6月に全額を徴収します——自治体ごとの運用ではなく法律の定めです(特別徴収は地方税法第321条の5第1項ただし書き、普通徴収は第320条の括弧書き)。同じ年収500万円でも、所得税は基礎控除104万円(令和8年分)が効いて年91,600円程度です。住民税のほうが所得税より高い、という人は年収600〜700万円くらいまで珍しくありません。
住民税が非課税になる年収
合計所得金額が一定額以下だと、所得割・均等割の両方または所得割だけが非課税になります。東京23区などの1級地では、独身の場合は合計所得45万円以下(給与収入だけなら119万円以下)で均等割も所得割も非課税、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合は「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)+10万円+21万円」以下で均等割非課税、「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)+10万円+32万円」以下で所得割非課税です(夫婦のみなら均等割101万円・所得割112万円)。
級地区分で変わるのは均等割の限度額だけです。生活保護法の級地区分に応じて、基本額35万円と加算額21万円が次のようになります(10万円の加算は級地によらず一律)。所得割の限度額は全国共通で、35万円・32万円のままです。
| 級地 | 均等割の基本額 | 均等割の加算額(同一生計配偶者または扶養親族がいる場合) | 例:夫婦+子1人 |
|---|---|---|---|
| 1級地 | 35万円 | 21万円 | 136万円以下 |
| 2級地 | 31万5,000円 | 18万9,000円 | 123万4,000円以下 |
| 3級地 | 28万円 | 16万8,000円 | 110万8,000円以下 |
この基本額・加算額は政令が定める基準で、市区町村は「これに従い条例で定める」ことになっています。たとえば岐阜市(2級地)は均等割の限度額を32万円・19万円としており、政令の基準で計算した森林環境税の非課税基準(31万5,000円・18万9,000円)とずれます。数千円の差なので、限度額の前後にいる場合はお住まいの市区町村の案内で確認してください。そのため3級地では、所得割は非課税でも均等割だけかかる、という所得帯があります。障害者・未成年者・寡婦・ひとり親は、級地にかかわらず合計所得135万円以下で均等割・所得割とも非課税です。お住まいの自治体がどの級地かは、市区町村の課税課の案内で確認できます。
非課税限度額のすぐ上の所得では、税額控除後の所得割を引いた手取りが非課税の人を下回らないように所得割を減らす調整措置があります。この範囲の所得だと、ふるさと納税をしても住民税がほとんど減らないことがあります。
令和8年度税制改正で変わること
- 給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に(令和8・9年分、令和10年分以後は69万円)。住民税は令和9年度分から反映され、給与収入220万円未満の人の給与所得が下がります。
- 配偶者控除・扶養控除の所得要件が58万円以下から62万円以下(給与収入136万円以下)に。勤労学生控除は89万円以下に。
- 所得税の基礎控除は62万円+加算で最大104万円になりましたが、住民税の基礎控除は43万円のままです。基礎控除の引上げは住民税には及びません(住民税の基礎控除は43万円のまま)。ただし給与所得控除の最低保障額の引上げは住民税にも及ぶので、給与収入が低い方は住民税も下がります——給与120万円・社会保険料0円・扶養なしなら、令和7年分の所得で14,500円、令和8年分の所得で6,500円です。
- ふるさと納税の特例控除の率を決める際に「所得税の基礎控除額−48万円」を引く調整が入り、所得税の基礎控除の引き上げで所得税率が下がった人も自己負担が2,000円に収まるようになっています(総務省 令和8年1月21日事務連絡、地方税法附則7条の2)。その分、税率が下がる人は控除上限額が前年より下がることがあります(ふるさと納税の自己負担で解説)。
副業がある人の住民税
副業の所得(収入−経費)は本業の給与所得と合算して住民税がかかります。副業所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要です(確定申告をすれば自治体にも通知されるので別途の住民税申告は不要)。確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」で、給与以外の所得にかかる住民税を「自分で納付」(普通徴収)にすると、副業分の住民税は納付書で払い、給与からの天引き額には反映されません。副業が給与所得(アルバイトなど)の場合は、自治体によって普通徴収を選べないことがあります。
よくある質問
住民税の税額の通知はいつ届きますか?
給与から天引き(特別徴収)される人の税額は、市区町村が勤務先に通知し、勤務先を経由して本人にも通知します。この通知は、原則としてその年度の5月31日までにすることになっています(地方税法第321条の4第2項)。令和9年度分なら2027年5月31日までで、6月の給与から天引きが始まります。給与から天引きされない人(普通徴収)は、市区町村から届く納税通知書で税額と納期を確認します(地方税法第13条・第320条)。
年の途中で引っ越したら、住民税はどこに納めますか?
その年度の1月1日(賦課期日)に住所があった市区町村と都道府県に、その年度分を納めます(地方税法第39条・第318条)。たとえば2027年1月1日に住んでいた市区町村から2027年2月に引っ越しても、令和9年度分(2027年6月〜2028年5月)は引っ越す前の市区町村が課税します。引っ越し先の市区町村が課税するのは、翌年の1月1日にそこに住所がある場合の、次の年度分からです。
給与だけの会社員でも、住民税の申告は必要ですか?
原則として不要です。1月1日時点で勤務先から給与を受けていて、勤務先から市区町村へ給与支払報告書が提出される人で、前年に給与所得以外の所得がなかった人は、住民税の申告をしなくてよいとされています(地方税法第317条の2第1項ただし書)。ただし、医療費控除・雑損控除やふるさと納税の寄附金税額控除を受けたい場合は、確定申告か住民税の申告が必要です(同条第3項)。所得税の確定申告書を出した場合は、その日に住民税の申告書を出したものとみなされるので、別に住民税の申告をする必要はありません(地方税法第317条の3第1項)。
まとめ
- 住民税=(所得−所得控除)×10%−調整控除−税額控除+均等割5,000円。前年の所得に対して6月から翌年5月に払う。
- 所得控除は所得税より小さい(基礎控除43万円)ため、年収500万円なら所得税より住民税のほうが高い。
- 独身は給与収入119万円以下、扶養ありは人数に応じた限度額以下で非課税(1級地)。均等割の限度額だけは級地区分で下がる。
- 令和8年度改正で給与所得控除の最低保障額は74万円、扶養の所得要件は62万円に。住民税の基礎控除は43万円で据え置き。
本記事は一般的な制度の解説であり、税額は自治体の決定通知書で確定します。個別の税務相談は税理士またはお住まいの市区町村へお問い合わせください。根拠:地方税法第13条・第23条・第24条の5・第20条の4の2・第37条・第39条・第295条・第314条の2・第314条の3・第314条の6・第317条の2・第317条の3・第318条・第320条・第321条の4・第321条の5・附則第3条の3、地方税法施行令第47条の3(均等割の非課税限度額と級地区分)、総務省「個人住民税」、国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」。
関連ツール:住民税 計算ツール/退職金の手取り計算ツール(退職金の住民税は前年所得課税ではなく、退職した年に分離して特別徴収されます)/年収の壁 世帯手取りシミュレーター。関連記事:2026年の年収の壁一覧と「働き損」の正体(住民税がかかり始める給与収入119万円の話を含みます)。