退職金の手取り計算ツール
令和8年分の確定申告の期間は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です(所得税法120条。国税庁の令和8年分の案内は公表前)。還付を受けるだけの申告は2027年1月1日から出せます。
退職金の額と勤続年数から、退職所得控除・所得税・復興特別所得税・住民税を計算して、実際に受け取れる手取り額を出します。iDeCo・企業型DCの一時金との重複受取(令和8年から広がる通称10年ルール)にも対応しています。入力内容はブラウザの中だけで処理され、送信されません。
このツールの特徴。所得税法30条・31条・201条3項と施行令69条・70条にもとづいて、退職所得控除・所得税・復興特別所得税・住民税を引いた手取りを、申告書を出さない場合の20.42%や勤続5年以下の特例も含めて計算します。
対応していないこと。年金形式(分割)で受け取る分と、死亡退職により相続税の対象になる退職手当等は対象外です。勤続期間から除くべき期間(他社に勤務するための休職期間など)がある方は、調整後の勤続年数を直接入力してください(この場合は重複受取の調整と同じ年の合算が使えません)。
この結果の根拠と注意点
計算の前提と制度の説明は、次の記事にまとめています。
計算方法
退職金(退職手当等)は、給与や賞与とは切り離して計算する分離課税です。長く勤めた人ほど税金が軽くなるように、大きな控除と2分の1計算が用意されています。本ツールは次の順で計算します。
- 勤続年数を出す。入社日から退職日までの期間を暦で数え、1年未満の端数は1年に切り上げます(所得税法施行令69条)。10年2か月なら11年です。4月15日入社・5年後の4月14日退職はちょうど5年なので、切り上げは起きません。期間が2つ以上ある場合は、年数・月数・日数をそれぞれ合計し、日数は30日を1月、月数は12月を1年として繰り上げます(所得税基本通達30−13)。
- 退職所得控除額を計算する。勤続20年以下は「40万円×勤続年数」、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。過去の退職金との重複調整をしたあとで80万円に満たなければ80万円とし、障害者になったことが直接の原因の退職ならさらに100万円を加えます(所得税法30条3項・6項)。
- 退職所得の金額を出す。原則は「(退職金の額−退職所得控除額)×1/2」です。ただし下の特例があります。
- 課税退職所得金額(1,000円未満切捨て)に速算表を当てる。税額=(金額×税率−控除額)×102.1%で、1円未満は切り捨てます。102.1%は復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を含めるためのものです。
- 住民税を計算する。退職所得の金額(1,000円未満切捨て)に市町村民税6%・道府県民税4%を掛け、それぞれ100円未満を切り捨てます。退職金の支払時に特別徴収されて完結します。
- 手取り額=退職金の額−所得税および復興特別所得税−住民税。退職金には社会保険料はかかりません。
何年分の制度で計算するかは、入力した退職日の年で決まります。退職手当等の収入すべき時期は一般的に退職の日だからです(国税庁 No.2728)。住民税も「支払を受けるべき日(通常は退職した日)の属する年の1月1日現在の住所地」で課税されます。ただし、役員の退職金で支給額が退職後の株主総会の決議で決まる場合はその決議の日、iDeCo・企業型DCを据え置いてから受け取る場合はその受取の日が基準になります。この場合は「退職金が所得になる年が、退職日の年と違う」にチェックを入れて年を指定してください。重複受取の「前年以前」の判定はこの年を基準に行います。
勤続5年以下の特例
| 区分 | 退職所得の金額 |
|---|---|
| 一般退職手当等 | (収入金額−退職所得控除額)×1/2 |
| 特定役員退職手当等 (役員等勤続年数が5年以下) | 収入金額−退職所得控除額(2分の1計算なし) |
| 短期退職手当等 (役員等以外で勤続5年以下) | 残額が300万円以下:(収入金額−退職所得控除額)×1/2 残額が300万円超:150万円+{収入金額−(300万円+退職所得控除額)} |
役員等とは、法人税法上の役員(取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人など)、国会議員・地方議会議員、国家公務員・地方公務員です。短期退職手当等は令和4年1月1日以後に支払われる退職手当等から適用されています。役員としての期間と使用人としての期間の両方に対応する退職金を受け取る場合は、それぞれに分けて計算するため本ツールの結果とは異なります。
「退職所得の受給に関する申告書」を出すか出さないか
この申告書を勤務先に出していれば、上の計算で求めた正しい税額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。出さないと、退職所得控除も2分の1計算もいっさい使われず、支給額に一律20.42%を掛けた額が源泉徴収されます(所得税法201条3項)。たとえば勤続15年で退職金500万円なら、本来は退職所得控除600万円のほうが大きいので所得税は0円ですが、申告書を出さないと102万1,000円が引かれます。この場合は自分で確定申告をすれば全額が戻ります。逆に、退職金が非常に多い人や特定役員退職手当等に当たる人は20.42%では足りないことがあります。その場合、ほかの所得から引ききれなかった所得控除を退職所得から差し引いてもなお退職所得にかかる税額が源泉徴収額を上回るなら確定申告が必要です(所得税法87条2項・120条1項)。ただし給与の源泉徴収が多すぎたときなど、その年全体では還付になる場合は申告の義務はありません。源泉徴収額以下になるなら、退職所得については申告の義務はありません(同121条2項2号)。ほかの所得で確定申告をする場合は、その申告書に退職所得も含めて計算します。
住民税には所得税法201条3項のような規定がないため、申告書の提出の有無にかかわらず、退職所得控除を適用して計算した額が特別徴収されます。上の比較で住民税が変わらないのはこのためです。
重複して受け取るとき(5年ルール・10年ルール・19年ルール)
退職金を何度も受け取ると、同じ勤続期間について退職所得控除を二重に使えてしまいます。そこで、前年以前に受け取った退職金の勤続期間と今回の勤続期間が重なっている場合は、重なった年数(1年未満切捨て)に対応する控除額を差し引きます(所得税法30条6項1号、施行令70条)。どこまでさかのぼるかは3通りです。
| 今回受け取るもの | さかのぼる期間 |
|---|---|
| ふつうの退職金(下の行に当たらない場合) | 前年以前4年内(通称5年ルール) |
| ふつうの退職金で、前年以前9年内に令和8年1月1日以後に支払を受けたiDeCo・企業型DCの老齢一時金がある場合 | 前年以前9年内(通称10年ルール。令和7年度税制改正) |
| iDeCo・企業型DCの老齢一時金 | 前年以前19年内(通称19年ルール) |
10年ルールの対象になるのは令和8年1月1日以後に支払を受けたiDeCo・企業型DCの老齢一時金です。「前年以前」9年内を見るので、実際に控除が減りはじめるのは令和9年(2027年)以降に退職する人からになります。なお、前に受け取った退職金の額がその当時の退職所得控除額に満たないときは、勤続期間が短かったものとみなして重複期間を計算します(施行令70条2項)。本ツールもこの圧縮を行います。
これとは別に、今回の退職金が前に受け取った退職金の勤続期間も通算して計算されている場合(前の会社の勤続期間を引き継ぐ退職給与規程など)は、施行令70条1項1号により何年前の退職金でも重複期間を差し引きます。この場合は上の4年・9年・19年という期限も、少額のときの期間の圧縮もありません。該当する方は重複受取の欄で「今回の退職金は、この期間も通算して計算されている」にチェックを入れてください。
退職金を受け取ったあとの住民税・社会保険
退職所得の住民税は退職した年に分離して課税が完結する現年分離課税です。給与などの住民税のように翌年度に請求されることはなく、翌年度の住民税(総合課税分)にも含まれません。国民健康保険料の算定に使う総所得金額等にも、分離課税された退職所得は含まれません。退職金そのものに社会保険料もかかりません。ただし所得税では、退職所得は合計所得金額に含まれるため、配偶者控除や配偶者特別控除の判定に影響することがあります。
前提と対応していないこと
一時金としてまとめて受け取る退職金を対象にしています。年金形式(分割)で受け取る分は雑所得(公的年金等)となり計算が異なるため、対象外です。死亡退職により相続税の課税対象になる退職手当等も対象外です(所得税は課されません)。勤続期間から除くべき期間がある場合(他社に勤務するための休職期間、日額表丙欄が適用される期間など。所得税法施行令69条1項1号、所得税基本通達30−7・30−9)は、入社日と退職日をそのまま入れると控除額や短期・特定役員の判定を誤ります。その場合は勤続年数を直接入力してください(重複調整・同じ年の合算は使えません)。同じ年に一般退職手当等と短期退職手当等・特定役員退職手当等が混在する場合(国税庁 No.2741)、役員期間と使用人期間の両方に対応する退職金を按分する場合、確定給付企業年金で本人が負担した掛金がある場合、前年以前の退職金が2件以上ある場合、過去の勤続期間を通算して計算される退職金と同じ年のほかの退職金が重なる場合(所得税基本通達30−14の控除期間の除外が必要になります)には対応していません。日本の非居住者が受け取る退職手当等にも対応していません。非居住者の場合、居住者であった期間の勤務等に対応する部分(非居住者期間の内国法人の役員としての勤務なども含みます)が国内源泉所得となり、退職所得控除を使わずに20.42%で源泉徴収されます(所得税法161条1項12号ハ・212条、施行令285条3項。租税条約がある場合は扱いが変わります)。居住者と同じ計算にする171条の選択課税を選ぶこともできます。住民税は市町村民税6%・道府県民税4%で計算しています(政令指定都市でも退職所得の分離課税の税率は6%・4%のままです)。住民税は現年分離課税(退職手当等の支払時に特別徴収)だけを計算しています。その年の1月1日に国内に住所が無い方には特別徴収されませんが、非居住者であることと1月1日の住所は別の判定で、年の途中で出国・帰国した場合の扱いや、支払者に源泉徴収義務が無い場合、その年の1月1日に生活扶助を受けている場合などの例外には対応していません。対象は令和4年(2022年)1月1日以後に受け取る退職金です。短期退職手当等の特例が令和4年から、復興特別所得税と住民税の10%税額控除の廃止が平成25年からと、それ以前は制度が異なるため、それより前の年を入れた場合は金額を表示しません。将来の年を入れた場合は現行の制度が続く前提で計算しています。勤続年数を直接入力しているときに重複受取・同じ年の合算にチェックが入っている場合や、「過去に受け取った」欄の受取年が今回の受取年と同じかそれより後の場合は、誤った金額を出さないために結果を表示しません。「確定申告が要るか・戻るか」の節は、1か所からの給与だけを受け取っていて、給与以外の所得(事業・不動産・公的年金等・一時所得など)が無い方を前提にしています。2か所以上から給与を受けた場合(所得税法121条1項2号)や、給与以外の所得がある場合は判定が変わります。所得控除は社会保険料控除・扶養控除・基礎控除だけを見た概算で、配偶者(特別)控除・生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・住宅借入金等特別控除などは入れていません(それらを含めた額は年末調整 還付金シミュレーターで計算できます)。雑損控除(所得税法87条1項でまず行う控除)、医療費控除・寄附金控除の金額、純損失・雑損失の繰越控除、外国税額控除・配当控除・予定納税・平均課税にも対応していません。扶養控除は一般の控除対象扶養親族(1人38万円)だけで、特定扶養親族・老人扶養親族の区分は反映しません。事業所得・不動産所得などの赤字を差し引く損益通算(所得税法69条・施行令198条。退職所得金額も順序の最後に含まれます)、極めて高い所得金額に対する追加課税(租税特別措置法41条の19)、死亡・出国の場合の申告手続(所得税法125条・127条)、未払賃金の立替払を退職手当等とみなす特例(租税特別措置法29条の4。受け取った額を「退職金の額」に入れれば同じ計算になります)にも対応していません。「確定申告が要るか・戻るか」の節は、令和7年分(2025年)と令和8年分(2026年)にだけ対応しています。給与所得控除・基礎控除・税率をこの2年分でしか確かめていないため、それ以外の年に退職した場合は要否も金額も表示しません(手取りの計算は従来どおり表示します)。確定申告をしても住民税は動きません(地方税法328条の分離課税で、支払時の特別徴収で完結します)。結果は目安であり、実際に源泉徴収・特別徴収される金額は勤務先が発行する「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」で確定します。個別の相談は税理士または所轄の税務署へお問い合わせください。
根拠資料
- 所得税法30条(退職所得)、31条(退職手当等とみなす一時金)、201条3項(申告書未提出時の20.42%)、87条2項(所得控除の順序。総所得金額、山林所得金額、退職所得金額から順次控除)、120条1項(確定所得申告)、121条2項2号(課税退職所得金額に係る所得税の額が源泉徴収税額以下なら、退職所得については確定申告を要しない)
- 所得税法施行令69条(勤続年数)、70条(退職所得控除額の計算の特例=重複期間の調整・期間の圧縮)
- 確定申告:所得税法120条1項(確定所得申告。かっこ書きで「控除しきれなかつた源泉徴収税額がある場合」を義務から除く)、121条2項(1号=201条1項の徴収をされた場合=申告書の提出あり、2号=本来の税額が源泉徴収額以下の場合)、122条1項2号(還付等を受けるための申告)、203条(退職所得の受給に関する申告書)、2条1項30号・22条(合計所得金額=総所得金額+退職所得金額+山林所得金額)
- 国税庁タックスアンサー No.1910(中途退職で年末調整を受けていないとき)(年末調整を受けられない場合の納め過ぎと、翌年1月1日から5年間の還付申告)
- 地方税法328条(退職所得の課税の特例)・328条の5(特別徴収の手続)=退職所得の住民税は支払時の特別徴収で完結し、確定申告では再計算されない
- 所得税基本通達30−13(勤続年数の計算の基礎となる期間の計算。暦に従って計算し、日数は30日を1月、月数は12月を1年とする)
- 国税庁タックスアンサー No.1420(退職金を受け取ったとき)、No.2728(退職所得の収入金額の収入すべき時期)、No.2732(退職手当等に対する源泉徴収)、No.2735(同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき)、No.2740(短期退職手当等)、No.2741(同じ年に一般退職手当等のほか短期退職手当等や特定役員退職手当等がある場合)
- 国税庁「退職所得の源泉徴収税額の速算表(令和8年分)」
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(確定拠出年金の一時金と退職一時金の重複調整期間の見直し。令和8年1月1日以後に支払を受ける老齢一時金から適用)
- 総務省「平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について」(退職所得の金額は1,000円未満切捨て、市町村民税・道府県民税はそれぞれ100円未満切捨て、税額控除10%は廃止)
退職後の健康保険・年金・雇用保険・住民税・確定申告の手続きの期限日(任意継続20日・国保と国民年金14日など)は退職後の手続き期限ナビで日付順に確認できます。
確定申告が要るかどうかと戻る額の考え方は退職金の確定申告は必要?申告書を出していない・年の途中で退職した人の還付で、退職金の税金の仕組みは退職金の税金の計算方法と、申告書を出さないと損をする理由で解説しています。関連ツール:給与の手取り・源泉所得税・年末調整 計算/年末調整 還付金シミュレーター/住民税 計算ツール/日付・年齢・和暦 一括計算(勤続年数の確認に)/年金受給者の確定申告 要否判定+還付金シミュレーター(退職後に年金を受け取っている方)。/退職後の失業給付:退職後カレンダー:失業給付はいつ・いくら