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退職金の確定申告は必要?申告書を出していない・年の途中で退職した人の還付

令和8年分(2026年)の制度対応 最終更新:2026年10月6日

結論:「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出していれば、退職所得について確定申告をする義務はありませんが、申告書を出していない場合や所得控除が余っている場合は、確定申告をすると源泉徴収された税金が戻ることがあります(勤続30年・退職金2,000万円で申告書を出さず、その年の収入が退職金だけなら4,009,467円)。とくに関係があるのは、申告書を出さずに支給額の20.42%を源泉徴収された人、年の途中で退職して年末調整を受けていない人、その年の給与が少なく所得控除を使い切れなかった人です。分かれ目は主に3つ――「退職所得の受給に関する申告書」を出したか、年末調整を受けたか、所得控除を使い切れたかです。この記事ではその3つを順に見て、いくら戻るのかを令和8年分の数字で計算します。

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結論:3つの質問で決まる

状況退職所得についての申告の義務申告するとどうなるか
申告書を出したなし(所得税法121条2項1号)所得控除が余っていれば戻ることがある
申告書を出しておらず、本来の税額が源泉徴収額以下なし(同2項2号)差額が戻る
申告書を出しておらず、本来の税額が源泉徴収額を超えるあり(同120条1項)。ただし年全体で源泉徴収税額が引ききれない(還付になる)ときは除く不足分を納める
年の途中で退職し、年末調整を受けていない退職所得とは別に、給与について121条1項で判定する納め過ぎなら戻る。源泉徴収が足りなければ納めることもある

退職所得についての申告の義務は、上の1〜3行目のとおり「申告書を出したか」と「本来の税額と源泉徴収額のどちらが多いか」だけで決まります。義務が無い場合でも、戻してもらうためには自分から申告します(所得税法122条1項2号)。出さなくても罰はありませんが、出さなければ戻りません。

給与についての申告の義務は退職所得とは別で、所得税法121条1項で決まります。1か所からの給与だけを受け取っていて、その給与の全部について源泉徴収がされており(同183条または190条)、給与等の金額が2,000万円以下で、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下なら義務はありません。2か所以上から給与を受けた場合、源泉徴収の対象外の給与がある場合、同族会社の役員などがその会社から不動産の賃貸料を受けている場合(同項ただし書き)は、この免除に当たらないことがあります。

1. 「退職所得の受給に関する申告書」を出したか

退職のときに勤務先から渡される紙です。これを出すと、勤務先が退職所得控除を使って正しい税額を計算し、その額だけを源泉徴収します(所得税法201条1項)。この場合、退職所得についての確定申告は要りません(同121条2項1号)。

出さなかった場合は、支給額に一律20.42%を掛けた所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます(同201条3項)。退職所得控除も2分の1も使われないので、ふつうは取られ過ぎになります。

計算例:勤続30年・退職金2,000万円で申告書を出さなかった(その年の収入は退職金だけ)

項目金額
退職金20,000,000円
退職所得控除額(800万円+70万円×10年)15,000,000円
退職所得の金額((2,000万円−1,500万円)×1/2)2,500,000円
所得控除(基礎控除。給与が無いので全部余る)1,040,000円
課税退職所得金額(250万円−104万円)1,460,000円
本来の所得税および復興特別所得税(146万円×5%、×1.021)74,533円
実際に源泉徴収された額(2,000万円×20.42%)4,084,000円
確定申告をすると戻る額4,009,467円

400万円以上の差です。申告書を出し忘れても確定申告で取り戻せますが、自分で申告しないかぎり戻ってきません。

同じ条件でも、その年に給与などがあって所得控除をそちらで使い切っている場合は、課税退職所得金額が250万円のままなので本来の税額は155,702円、戻る額は3,928,298円になります。基礎控除は合計所得金額で決まるので(合計所得金額2,350万円超で逓減し、2,500万円超で0円)、退職金が大きい年は小さくなります。

2. 年の途中で退職して年末調整を受けていないか

毎月の給与から引かれる所得税は概算です。その差を精算するのが年末調整ですが、年の途中で退職したまま再就職しないと年末調整を受けられません。この場合、所得税を納め過ぎていることが多く、翌年に確定申告をすれば戻ります(国税庁 No.1910)。

同じ年に再就職した場合は、原則として新しい勤務先が前の勤務先の給与も含めて年末調整をするので、この納め過ぎは解消しています。

計算例:その年の給与300万円・社会保険料45万円・源泉徴収税額5万円

項目金額
給与収入3,000,000円
給与所得(給与所得控除98万円を引いた額)2,020,000円
所得控除(社会保険料45万円+基礎控除104万円)1,490,000円
課税される所得530,000円
給与分の所得税(53万円×5%)26,500円
退職所得分の所得税(250万円×10%−97,500円)152,500円
所得税の合計(基準所得税額)179,000円
所得税および復興特別所得税(×1.021、1円未満切捨て)182,759円
源泉徴収された所得税等の合計(給与5万円+退職金155,702円)205,702円
確定申告をすると戻る額22,943円

退職金の申告書を出していれば退職所得側の税額は源泉徴収額とぴったり同じなので、戻るのは実質この給与分だけです。

年末調整の金額とは少しずれます。年末調整では所得税(所得税法190条2号の年調年税額)と復興特別所得税の合計額の100円未満を切り捨てるので(復興財源確保法30条)27,000円になり、差は23,000円と出ます。確定申告では切り捨てず、その年の所得税を合計した基準所得税額に2.1%を掛けます(復興財源確保法13条)。所得ごとに復興特別所得税を計算して足すと1円ずれるので、上の表では合計してから掛けています。納める側になったときだけ、所得税と復興特別所得税の合計額の100円未満を切り捨てます(復興財源確保法24条2項。国税通則法119条の特例)。還付額は1円単位です。

3. 所得控除を使い切れたか(所得税法87条2項)

年の途中で退職すると、その年の給与が少なくなります。給与所得より所得控除(社会保険料控除・基礎控除など)のほうが大きくなると、引ききれなかった所得控除が残ります。年末調整ではこの余りは捨てられますが、確定申告をすれば退職所得から差し引けます。

所得税法87条2項は「前項の控除をすべき金額は、総所得金額、山林所得金額又は退職所得金額から順次控除する」と定めています。総所得金額(給与など)から引ききれない分が、次に山林所得金額、それでも残れば退職所得金額から引かれる、という順序です。

これは「損益通算」とは別の制度です。損益通算(所得税法69条)は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の赤字を政令で定める順序で他の各種所得から差し引く制度で、ここで起きているのは所得控除を引く順序(87条2項)の話です。混同されやすいので、税務署や税理士に相談するときは「所得控除の順序(87条2項)」と言うと通じます。
なお、退職所得が損益通算の対象外というわけではありません。69条1項は「総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において…」としており、赤字を差し引く順序の最後に退職所得が来ます(所得税法施行令198条)。ただしこのツールは赤字を入力できないため、損益通算には対応していません。

計算例:その年の給与100万円・社会保険料15万円、退職金は上と同じ2,000万円

項目金額
給与所得(給与所得控除74万円を引いた額)260,000円
所得控除(社会保険料15万円+基礎控除104万円)1,190,000円
引ききれなかった所得控除930,000円
退職所得の金額2,500,000円
課税退職所得金額(250万円−93万円、1,000円未満切捨て)1,570,000円
本来の所得税および復興特別所得税(157万円×5%、×1.021)80,148円
退職金から源泉徴収された額(申告書を出した場合)155,702円
確定申告をすると戻る額75,554円

申告書をきちんと出していても、所得控除が余っていれば確定申告で戻ります。ここを知らずに申告しない人が多いところです。

4. 申告が「必要」になるのはどんなときか

20.42%の源泉徴収より本来の税額のほうが多くなることがあります。典型は特定役員退職手当等(役員等としての勤続年数が5年以下)で、2分の1を掛ける計算がないため課税される額が大きくなります。

計算例:役員5年・退職金3,000万円で申告書を出さなかった

項目金額
退職金30,000,000円
退職所得控除額(40万円×5年)2,000,000円
退職所得の金額(2分の1なし)28,000,000円
本来の所得税および復興特別所得税(2,800万円×40%−2,796,000円、×1.021)8,580,484円
源泉徴収された額(3,000万円×20.42%)6,126,000円
差額2,454,484円
確定申告で納める額(100円未満切捨て)2,454,400円

退職所得2,800万円だけで合計所得金額が2,500万円を超えるため、基礎控除は0円になります(所得税法86条)。所得控除の余りもありません。

この場合、退職所得について所得税法121条2項のどちらにも当たらないので、確定申告が必要です(同120条1項)。ただしその年全体で源泉徴収税額が引ききれない(還付になる)ときは義務から外れます。120条1項のかっこ書きが「控除しきれなかつた源泉徴収税額がある場合」を除いているためです。給与の源泉徴収が多い年は、退職所得だけを見て「納付だから申告義務がある」と決めつけないでください。

5. ほかの理由で申告するときは、退職所得も申告書に書く

医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)で確定申告をする場合、国税庁 No.1420 は「確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります」としています。書き忘れると申告書が不正確になります。

退職所得は合計所得金額に含まれます(所得税法2条1項30号・22条:合計所得金額=総所得金額+退職所得金額+山林所得金額)。そのため、退職金が大きい年は基礎控除の逓減や配偶者控除・配偶者特別控除などの所得要件の判定にも効きます。ふるさと納税の控除上限額もその年だけ変わるので、ふるさと納税 控除上限額シミュレーターで確認してください。

6. 住民税は確定申告では動かない

退職所得の住民税は、他の所得と分離して課税され、退職金の支払いのときに特別徴収されて完結します(地方税法328条・328条の5)。確定申告で再計算されることはありませんし、翌年度の住民税にも含まれません。上の計算例でいえば、住民税250,000円(2,000万円・勤続30年の場合)は申告しても変わりません。

なお地方税法には所得税法201条3項のような規定がないため、住民税は「退職所得の受給に関する申告書」を出したかどうかにかかわらず退職所得控除を適用して計算されます。20.42%で取られ過ぎるのは所得税だけです。

7. 期限は翌年1月1日から5年

還付を受けるための申告(還付申告)は、退職した年の翌年1月1日から5年間できます(国税庁 No.1910)。2026年に退職したなら2027年1月1日から2031年12月31日までです。確定申告の期間(2月16日〜3月15日)を過ぎていても出せますが、必要書類がそろい次第早めに出すほうがよいでしょう。

必要なのは、勤務先が発行する退職所得の源泉徴収票と、給与の源泉徴収票です。退職所得の源泉徴収票は退職後1か月以内に交付されます(所得税法226条2項)。

よくある質問

退職金をもらったら確定申告は必要ですか?

「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、退職所得について申告する義務はありません(所得税法121条2項1号)。出していない場合も、本来の税額が源泉徴収された額以下なら義務はありません(同2項2号)。ただし、どちらの場合も申告すれば戻ることがあります。

申告書を出し忘れました。もう間に合いませんか?

確定申告で精算できます。上の計算例のとおり、勤続30年・2,000万円でその年の収入が退職金だけなら4,009,467円が戻ります(所得控除をほかの所得で使い切っている場合は3,928,298円)。勤務先に出し直すのではなく、自分で税務署に確定申告をします。

退職金だけで、給与がまったくない年です。

申告書を出していれば申告は不要です。出していなければ、20.42%の源泉徴収と本来の税額との差を精算します。本来の税額のほうが少なければ戻り、多ければ納めます——たとえば上の役員5年・3,000万円の例は、給与が無くても2,454,400円の納付になります。所得控除(社会保険料控除・基礎控除など)は総所得金額が0円なら全部余るので、その分も退職所得から引けます。

再就職先で年末調整を受けました。退職金の申告は要りますか?

退職金について申告書を出していれば要りません。年末調整は給与についての精算なので、退職所得はそこに含まれません。

根拠資料

この記事の数字は退職金の手取り計算ツールと同じエンジンで計算しています(1円単位で一致)。関連ツール:年末調整 還付金シミュレーター/副業の確定申告 要否判定+税額シミュレーター/医療費控除 還付金シミュレーター。関連記事:退職金の手取りはいくら?/年末退職の税金:年末調整・退職金・翌年の住民税/年末調整でできないもの一覧。

退職金を確定申告書の第三表のどの欄に書くか(20.42%引かれた場合の記入例)は、Tekiba の有料記事(note・980円)にまとめています。

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