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退職金の税金の計算方法と、申告書を出さないと損をする理由

令和8年(2026年)の制度対応 最終更新:2026年10月6日

結論:退職金の税金は、原則として(退職金−退職所得控除額)×1/2を退職所得とし、そこに所得税・復興特別所得税と住民税(10%)をかけて計算し、勤続30年・退職金2,000万円なら税金は計405,702円、手取りは19,594,298円です。対象は勤務先から退職金を一時金で受け取る人で、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと、この計算ではなく支給額の20.42%が源泉徴収されます。退職金は給与や賞与とは別枠で計算される「退職所得」で、長年の勤労に対する報いという性格から、税金は他の所得よりずっと軽くなるように作られています。この記事では、退職金からいくら引かれるのかを計算の順に追い、つまずきやすい3つの論点――勤続5年以下の特例、「退職所得の受給に関する申告書」、iDeCoとの受取順序――を整理します。

退職金にかかる税金は3つだけ

退職金から引かれるのは、所得税・復興特別所得税・住民税の3つです。給与と違って社会保険料は引かれません。しかも退職所得は分離課税なので、その年の給与がいくらあっても退職金の税率は上がりません。多くの人にとって、退職金は同じ金額の給与よりはるかに手取りが多くなります。

退職金の額と勤続年数を入れるだけで、退職所得控除・所得税・住民税・手取り額を内訳つきで計算できます。申告書を出さなかった場合との差や、iDeCoとの重複受取にも対応:退職金の手取り計算ツール(無料・登録不要・データはブラウザ内で処理)

計算の手順

1. 勤続年数を出す(1年未満は切り上げ)

入社日から退職日までの期間の年数です。期間は暦に従って数え、1年未満の端数は1年に切り上げます。10年2か月なら11年、29年2か月なら30年です。切り上げの効果は大きく、あと1か月早く辞めるか遅く辞めるかで控除額が40万円(20年超なら70万円)変わることがあります。逆に、4月15日入社で5年後の4月14日に退職するとちょうど5年で切り上げは起きません。ここで6年と数えてしまうと、次に説明する勤続5年以下の特例の判定まで変わってしまいます。期間が2つ以上ある場合は、年数・月数・日数をそれぞれ合計し、日数は30日を1月、月数は12月を1年として繰り上げます(所得税基本通達30−13)。

2. 退職所得控除額を計算する

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数−20年)

勤続20年で800万円、30年で1,500万円、38年で2,060万円です。20年を超えると1年あたりの控除が40万円から70万円に増えるため、勤続20年前後の人は1年長く勤めるだけで控除が70万円増えることになります。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、さらに100万円が加算されます。

3. 退職所得の金額を出す(原則は2分の1)

「(退職金の額−退職所得控除額)×1/2」が退職所得の金額です。退職金が退職所得控除額以下なら退職所得は0円で、所得税も住民税もかかりません。勤続20年で退職金800万円、勤続30年で1,500万円までは非課税ということです。

4. 所得税と復興特別所得税

退職所得の金額(1,000円未満切捨て)に、退職所得の源泉徴収税額の速算表を当てます。税額=(金額×税率−控除額)×102.1%で、1円未満は切り捨てます。102.1%は令和8年分の復興特別所得税(基準所得税額の2.1%。令和9年分からは復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれ、合計は2.1%のまま。復興特別所得税の課税期間は令和29年分まで延長)を加えるためのものです。

課税退職所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 695万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

5. 住民税

退職所得の金額に市町村民税6%・道府県民税4%を掛け、それぞれ100円未満を切り捨てます。合計に対してではなく、市の分と県の分をそれぞれ切り捨てるのがポイントです。政令指定都市では総合課税分の税率が市8%・県2%になっていますが、退職所得の分離課税だけは6%・4%のままです。かつてあった10%の税額控除は、平成25年1月1日以後に支払われる退職手当等から廃止されています。

計算例:勤続30年・退職金2,000万円(令和8年に退職)

  1. 勤続年数 30年
  2. 退職所得控除額 800万円+70万円×10年=1,500万円
  3. 退職所得の金額(2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円
  4. 所得税および復興特別所得税(250万円×10%−97,500円)×102.1%=155,702円
  5. 住民税 市民税 250万円×6%=150,000円、県民税 250万円×4%=100,000円 計250,000円
  6. 手取り額 2,000万円−155,702円−250,000円=19,594,298円

2,000万円に対する税金は約40万円、負担率は約2.0%です。同じ2,000万円を給与で受け取った場合とは比べものになりません。

つまずきやすい3つの論点

その1:勤続5年以下だと2分の1が使えないことがある

2分の1計算には例外が2つあります。

たとえば勤続3年(控除120万円)で退職金600万円なら、残額480万円のうち300万円は2分の1にして150万円、残り180万円はそのままなので、退職所得は330万円になります。一般の計算なら240万円ですから、90万円分だけ課税所得が増えます。転職の多い人や、短期間で役員を退任する人は注意が必要です。

その2:「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと20.42%引かれる

これがいちばん実害の出やすい論点です。退職時に勤務先から渡される「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、上で説明した正しい税額が源泉徴収され、確定申告は原則として不要です。ところが提出しないと、退職所得控除も2分の1計算もいっさい使われず、支給額に一律20.42%を掛けた額が源泉徴収されます(所得税法201条3項)。

勤続15年・退職金500万円の場合所得税および復興特別所得税
申告書を提出した0円(控除600万円 > 退職金500万円)
申告書を提出しなかった500万円×20.42%=1,021,000円

差は102万1,000円です。出し忘れても自分で確定申告をすれば全額が戻りますので、退職金の源泉徴収票に大きな税額が載っていたら確定申告をしてください。なお、退職金が非常に多い人や特定役員退職手当等に当たる人は、税率が20.42%より高くなるため源泉徴収では足りず、確定申告で不足分を納めることになります。

住民税には所得税法201条3項のような規定がないため、申告書を出しても出さなくても、退職所得控除を適用した正しい住民税が特別徴収されます。20.42%の話は所得税だけのものです。

その3:iDeCoと退職金の受取順序(5年・10年・19年ルール)

iDeCoや企業型DCの老齢給付金を一時金で受け取ると、それも税法上は「退職手当等」として扱われ、加入期間が勤続年数の代わりになります。ここで問題になるのが、同じ期間について退職所得控除を二重に使えないという調整です。前年以前に受け取った退職金の勤続期間と今回の勤続期間が重なっていれば、重なった年数(1年未満切捨て)に対応する控除額が差し引かれます。

どこまでさかのぼって見るかは、今回受け取るものによって変わります。

今回受け取るものさかのぼる期間通称
ふつうの退職金前年以前4年内5年ルール
ふつうの退職金で、前年以前9年内に令和8年1月1日以後に受け取ったiDeCo・企業型DCの一時金がある場合前年以前9年内10年ルール
iDeCo・企業型DCの一時金前年以前19年内19年ルール

これまでは「iDeCoを先に一時金で受け取り、5年空けてから会社の退職金を受け取る」と、どちらもフルに退職所得控除を使えました。令和7年度税制改正でこの期間が4年内から9年内に延びました(いわゆる5年ルールから10年ルールへ)。対象になるのは令和8年1月1日以後に支払を受けたiDeCo・企業型DCの老齢一時金です。「前年以前」9年内を見るしくみなので、実際に控除が減りはじめるのは令和9年(2027年)以降に退職する人からになります。

逆に、会社の退職金を先に受け取ってから、あとでiDeCoを一時金で受け取る場合は19年内までさかのぼるため、順序としてはiDeCoを先に、退職金をあとにするほうが控除は使いやすくなります。ただし加入期間と勤続期間が重なっていなければそもそも調整は起きません。実際の判定は勤続期間の重なり方しだいなので、具体的な年月を入れて確かめてください。

なお、前に受け取った退職金の額が当時の退職所得控除額に満たなかった場合は、勤続期間が短かったものとみなして重複期間を計算します(所得税法施行令70条2項)。少額のiDeCo一時金なら、影響は思ったより小さくなることがあります。

もうひとつ、期限のない調整があります。今回の退職金が、前に受け取った退職金の勤続期間も通算して計算されている場合――前の会社の勤続期間を引き継ぐ退職給与規程や、いったん退職金を受け取ったあと同じ会社で勤務を続けて再び受け取る場合など――は、施行令70条1項1号により何年前であっても重複期間が差し引かれます。4年・9年・19年という期限も、少額のときの期間の圧縮もこの場合には使いません。

受け取ったあとに起きること

退職所得の住民税は退職した年に分離して課税が完結する現年分離課税です。給与の住民税のように翌年度に請求書が来ることはありませんし、翌年度の住民税(総合課税分)の計算にも含まれません。国民健康保険料の算定に使う総所得金額等にも、分離課税された退職所得は含まれません。退職して収入が途絶えたところに翌年の住民税が来て困る、というよく聞く話は、退職金ではなく退職した年までの給与に対する住民税の話です。退職した月によって残りの住民税が一括徴収になるか納付書に切り替わるかは、年末退職の税金:年末調整・退職金・翌年の住民税(令和8年分)で整理しています。

一方、所得税では退職所得も合計所得金額に含まれます。退職した年に配偶者控除・配偶者特別控除の対象になれるかどうかの判定などには影響しますので、その年の確定申告では退職所得も含めて考えてください。

よくある質問

年金形式で受け取ると税金は変わりますか

変わります。分割して年金形式で受け取る分は退職所得ではなく雑所得(公的年金等)になり、公的年金等控除を使って他の所得と合算して課税されます。社会保険料の算定にも影響します。一時金と年金のどちらが有利かは、退職所得控除の枠が余っているか、公的年金等控除の枠が余っているか、受給期間中の他の所得はどうかで変わります。

死亡退職金はどうなりますか

死亡により支払われる退職手当等で相続税の課税対象になるものには、所得税は課されません。相続税の側で「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

会社都合退職だと控除は増えますか

増えません。退職所得控除が上乗せされるのは、障害者になったことが直接の原因で退職した場合(100万円加算)だけです。

退職金を受け取ったら確定申告は必要ですか?

「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出していれば、支払の際に退職所得の金額に応じた所得税等が源泉徴収されるので、原則として確定申告は必要ありません。出していない場合は支給額の20.42%が源泉徴収され、本人が確定申告をして精算します。また、医療費控除や寄附金控除を受けるなどの理由で確定申告書を出すときは、確定申告書に退職所得の金額も書く必要があります(国税庁 タックスアンサー No.1420)。

退職金の源泉徴収票はいつもらえますか?

退職金を支払う勤務先は、退職の日以後1か月以内に退職所得の源泉徴収票を作成し、本人に交付しなければなりません(所得税法226条2項)。給与の源泉徴収票とは別のものです。本人の承諾があれば書面に代えて電子データで受け取る方法もありますが、本人が請求すれば書面で交付されます(同条4項)。確定申告で精算するときに使うので、届かないときは前の勤務先に問い合わせてください。

退職金から社会保険料は引かれますか?

退職時に支払われる退職金からは引かれません。日本年金機構の事例集では、健康保険・厚生年金保険の保険料の対象になる「報酬等」に当たらないものの例に退職手当が挙げられています。雇用保険などの労働保険料でも、退職を事由として退職時に支払われる退職金は賃金に入りません(神奈川労働局「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」)。ただし、退職金相当額を在職中に給与や賞与に上乗せして前払いされる場合は、どちらでも保険料の対象になります。

根拠資料

関連ツール:退職金の手取り計算ツール/給与の手取り・源泉所得税・年末調整 計算/年末調整 還付金シミュレーター/住民税 計算ツール/日付・年齢・和暦 一括計算。関連記事:退職金の確定申告は必要?/手取りの計算方法/住民税の計算方法/年末調整の還付金。

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