年金受給者の確定申告 要否判定+還付金シミュレーター
令和8年分の確定申告の期間は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です(所得税法120条。国税庁の令和8年分の案内は公表前)。還付を受けるだけの申告は2027年1月1日から出せます。
公的年金等を受け取っている方について、所得税の確定申告が必要かどうかを所得税法121条3項(確定申告不要制度)にもとづいて判定し、申告した場合にいくら戻るか、翌年度の住民税はいくらかを同時に計算します。「申告は不要」と「申告しても戻らない」は別の話です。医療費控除や生命保険料控除、年金から天引きされていない社会保険料がある方は、申告が不要でも還付申告(所得税法122条)で戻ることがあります。令和8年分(2026年1〜12月の所得・2027年3月申告)です。入力内容はブラウザの中だけで処理され、送信されません。
このツールの特徴。「400万円・20万円を超えるかどうか」の判定だけで終わらせず、年税額と源泉徴収税額の差を出して、還付・納付の額まで表示します。申告不要制度の要件を満たしていても、源泉徴収されすぎている場合は「戻る額」を出します。
対応していないこと。遺族年金・障害年金(非課税なので入力しません)、退職所得、一時所得、配当控除、外国税額控除、予定納税、純損失・雑損失の繰越控除、雑損控除、平均課税、国民健康保険料・介護保険料への影響、公的年金等以外の年金(個人年金保険など)の必要経費の計算には対応していません。
この結果の根拠と注意点
計算の前提と制度の説明は、次の記事にまとめています。
判定の根拠
まず、所得税法120条1項の義務が成立するかどうか
確定申告の義務そのものは所得税法120条1項が定めています。同項は「所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき」に申告書の提出を義務づけたうえで、かっこ書きで「控除しきれなかつた源泉徴収税額がある場合」を除いています。つまり、
- 所得控除を引いたあとの所得税が0円になる人、
- 源泉徴収された税額のほうが多く、申告すれば還付になる人
には、そもそも申告の義務がありません。義務がないだけで、申告すれば還付は受けられます(所得税法122条「還付等を受けるための申告」)。
次に、所得税法121条3項(確定申告不要制度)に当たるかどうか
120条の義務が成立する場合でも、所得税法121条3項に当てはまれば申告は不要です。条文は次のとおりです(e-Gov 法令検索、令和8年8月12日施行版)。
その年において第三十五条第三項(雑所得)に規定する公的年金等(以下この条において「公的年金等」という。)に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が四百万円以下であるものが、その公的年金等の全部(第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)の規定の適用を受けるものを除く。)について第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び公的年金等に係る雑所得以外の雑所得の金額の合計額をいう。)が二十万円以下であるときは、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額又は課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。
要件は3つとも必要です。
- 公的年金等の収入金額が400万円以下であること。所得ではなく収入で判定します。
- その公的年金等の全部が源泉徴収の対象であること。国内で支払われる年金は源泉徴収の対象なので、通常はここで落ちません。落ちるのは国外から支払われる年金などがある場合です。
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であること。条文のかっこ書きが中身を限定していて、利子・配当・不動産・事業・給与・山林・譲渡・一時・(年金以外の)雑の合計です。退職所得は入りません(給与所得者の121条1項が「給与所得及び退職所得以外」としているのとは違います)。
「源泉徴収の対象」の下限は、令和8年分は65歳未満155万円・65歳以上205万円です
2の「源泉徴収の対象」が参照している所得税法203条の7は、「その年中に支払を受けるべき当該公的年金等の額が……政令で定める金額に満たないとき」は源泉徴収を要しない、と定めています。その政令は所得税法施行令319条の12で本則は「百十八万円」ですが、租税特別措置法施行令に2段の読替えがあります。
- 措令26条の27第1項…65歳以上は「百十八万円」を「百六十八万円」と読み替える(65歳以上かどうかはその年12月31日の年齢で判定)。
- 措令26条の27の2第2項…令和8年以後は「百十八万円」を「百五十五万円」、「百六十八万円」を「二百五万円」と読み替える。
したがって令和8年分は65歳未満155万円・65歳以上205万円です。国税庁「暮らしの税情報(令和8年度版)」も「一定の金額(65歳未満の場合は155万円、65歳以上の場合は205万円(※))を超える公的年金等……は源泉徴収されます」と書いており、その※は「令和9年分は、65歳未満の場合は164万円、65歳以上の場合は214万円となります」です。
確定給付企業年金・確定拠出年金などはこの金額の対象外です。203条の7が対象にしているのは203条の6第1項の公的年金等で、同項は「公的年金等(確定給付企業年金等を除く。)」と書いています。これらは金額にかかわらず源泉徴収されます。税率は203条の3第7号により百分の十ですが、これは25%を控除した後の残額に掛ける率なので、支給額に対する割合はもっと小さくなります(本人拠出がない通常の場合で約7.66%)。少額の企業年金から所得税が引かれている場合は、確定申告で戻ることがあります。
なお、農業者老齢年金等(所得税法施行令319条の6第1項各号・第2項第1号)は127万円で、このツールは対応していません。
申告が不要でも、申告したほうが有利なことがあります
121条3項は「提出しなくてよい」という規定で、「提出してはいけない」ではありません。年金から源泉徴収される所得税は、扶養親族等申告書に書いた控除しか反映されません。次のようなものは反映されていないので、確定申告(還付申告)をすると戻ることがあります。
- 医療費控除(年金だけの方は総所得金額等が200万円未満になりやすく、10万円ではなく5%が足切りになります)
- 年金から天引きされていない社会保険料(口座振替の国民健康保険料・介護保険料、家族の国民年金保険料など)
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- 令和8年分から要件が62万円以下に広がった扶養親族の扶養控除
- 寄附金控除(ふるさと納税など)・雑損控除
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます(所得税法122条・国税通則法74条)。
年金から源泉徴収される所得税の仕組み
公的年金等は偶数月に2か月分ずつ、年6回支払われます。1回の支払ごとに、
(支払額 − 社会保険料 − 控除額)× 5.105%
が源泉徴収されます(国税庁 No.1600)。控除額は「基礎的控除額+人的控除額」×支給月数です。基礎的控除額は誰にでも付き、人的控除(障害者・寡婦・ひとり親・配偶者・扶養親族)は扶養親族等申告書に書いたものだけが入ります。基礎的控除額は日本年金機構が次の表で計算しています(令和8年分・12月の精算時)。
| 受給者の年齢 | 年金額 | 基礎的控除額(月額) |
|---|---|---|
| 65歳以上 | 区分なし | 月割額×25%+110,000円(180,000円未満となる場合は180,000円) |
| 65歳未満 | 区分なし | 月割額×25%+110,000円(140,000円未満となる場合は140,000円) |
12月の精算時は年金額による区分がありません。日本年金機構・国税庁の表で「242万円超(65歳未満は213万円超)」の行にある「月割額×25%+100,000円(165,000円/125,000円未満なら165,000円/125,000円)」は、11月までの各月の支払時に使う値です(精算時の欄は242万円以下・超の2行にまたがる1つの欄)。令和9年分も精算時と同じ額です(租税特別措置法41条の16の2第3項)。
表の月割額は「公的年金等の金額をその金額に係る月数で除した金額」を4円の整数倍へ切り上げた額です(所得税法施行令319条の5・319条の7第1項)。4円の整数倍にすることで25%が必ず整数になります。
令和8年分は、11月の支払いまで改正前の基礎的控除額で源泉徴収され、12月の支払いのときに改正後の額で計算した1年分の税額と精算されます(日本年金機構)。精算で還付すべき金額が出る場合は、原則としてその場で還付されます。12月の源泉徴収票が出るまでは年間の源泉徴収税額が確定しないので、このツールの概算も目安として見てください。
このツールの源泉徴収税額の概算は、配偶者・扶養親族・障害者などの人的控除がなく、確定給付企業年金等も国外の年金も含まれていない場合にだけ数字を出します。扶養親族等申告書を出していない場合でも、基礎的控除額と5.105%の税率は変わりません。203条の6第1項が提出を求めているのは、203条の3第1号のロからト(障害者・寡婦・ひとり親・配偶者・扶養親族など人的控除)を受けようとする場合で、イの基礎的控除額はその対象外です。未提出の年金は203条の3第4号に当たり、控除額の式は第1号イと同じ、税率も百分の五のままです。つまり未提出で損をするのは人的控除の分だけで、人的控除に当てはまる方がいない場合は差がありません。
住民税の申告は、所得税とは別の話です
年金の支払者から市区町村へ公的年金等支払報告書が提出されるので、公的年金等だけを受け取っていて所得控除の追加がない方は、住民税の申告も原則として不要です。一方で、
- 医療費控除・生命保険料控除・地震保険料控除など、支払報告書に載っていない控除を受けたい場合
- 年金から天引きされていない社会保険料を控除したい場合
- 年金以外の所得がある場合
には、確定申告か住民税の申告が必要です。所得税の確定申告をした場合は、その確定申告書を提出した日に住民税の申告書が提出されたものとみなされます(地方税法317条の3第1項)。取扱いは市区町村によって違うので、高槻市の案内のような、お住まいの市区町村のページで確認してください。
国税庁も「所得税等の確定申告が必要ない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります」と注記しています(「高齢者と税(年金と税)」注2)。
税額の計算方法
- 公的年金等に係る雑所得を求める。収入金額から公的年金等控除額を引きます(速算表は下の「公的年金等控除」)。
- 年金以外の所得を足して合計所得金額を出す。給与がある場合は「収入−給与所得控除(令和8年分の最低保障額74万円)」で給与所得にします。給与所得と公的年金等の雑所得の両方がある場合は、所得金額調整控除(租税特別措置法41条の3の11第2項。それぞれ10万円を上限に足して10万円を引いた額)を給与所得から引きます。
- 所得控除を引く。社会保険料控除・医療費控除・生命保険料控除・地震保険料控除・人的控除・基礎控除(令和8年分は合計所得489万円以下で104万円)です。
- 課税所得(1,000円未満切捨て)に速算表を当てて所得税を出し、復興特別所得税2.1%を足す。これが年税額です。
- 源泉徴収税額と精算する。年税額より源泉徴収税額が多ければ還付(1円単位)、少なければ納付(100円未満切捨て・国税通則法119条1項)です。
公的年金等控除(令和2年分以後)
公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が1,000万円以下である場合の表です。1,000万円超2,000万円以下は控除額が10万円、2,000万円超はさらに10万円下がります。
| 年齢 | 公的年金等の収入金額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
| 60万円超130万円未満 | 収入金額−60万円 | |
| 130万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75−27万5千円 | |
| 410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85−68万5千円 | |
| 770万円以上1,000万円未満 | 収入金額×0.95−145万5千円 | |
| 1,000万円以上 | 収入金額−195万5千円 | |
| 65歳以上 | 110万円以下 | 0円 |
| 110万円超330万円未満 | 収入金額−110万円 | |
| 330万円以上 | 65歳未満と同じ |
前提と対応していないこと
- 遺族年金・障害年金は非課税です(所得税法9条1項3号)。入力しないでください。入れると税額が実際より大きく出ます。
- 公的年金等以外の年金(生命保険契約等に基づく個人年金など)は、「収入金額−必要経費」が雑所得になります。必要経費の計算(保険料の総額÷年金の支払総額)には対応していないので、計算した金額を「その他の雑所得の金額」に入れてください。
- 203条の7(65歳未満155万円・65歳以上205万円)は支払者ごとの年金の額で判定します。このツールは合計額で判定しているので、複数の年金を受け取っている場合はずれることがあります。農業者老齢年金等の127万円にも対応していません。
- 源泉徴収税額の概算は、本人以外の人的控除がなく、確定給付企業年金等も国外の年金も含まれていない場合だけの目安です。年の途中で年金額が変わる場合や、支給が年6回でない場合にも合いません。源泉徴収票の実額を入れてください。
- 給与が2か所以上ある場合の判定(所得税法121条1項2号)には対応していません。「給与は1か所だけ」のチェックを外すと判定を出しません。副業の確定申告 要否判定+税額シミュレーターをお使いください。所得税法121条1項ただし書(同族会社の役員が受ける貸付金の利子など)にも対応していません。
- 退職所得・一時所得・配当控除・外国税額控除・予定納税・平均課税・雑損控除・純損失の繰越控除には対応していません。予定納税がある方は、精算額も申告の要否もこのツールでは出せません。なお、確定申告不要制度の「20万円」の判定に退職所得は入りません(所得税法121条3項のかっこ書き)。
- 特定親族特別控除(19〜22歳で合計所得金額62万円超123万円以下の親族)には対応していません(入力欄がありません)。対象の方がいる場合、税額は実際より大きく、還付は実際より小さく出ます。
- 寄附金控除(ふるさと納税)・セルフメディケーション税制には対応していません。ふるさと納税の控除上限額はふるさと納税 控除上限額シミュレーター、セルフメディケーション税制との比較は医療費控除 還付金シミュレーターで計算できます。
- 20万円の判定は所得税基本通達121-6 の方法(総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の合計から、公的年金等に係る雑所得の金額(または給与所得の金額)を引く)で計算しています。退職所得・山林所得には対応していないので0として扱います。年金以外の雑所得が赤字の場合は、公的年金等の雑所得との内部通算が総所得金額に反映されたうえで、内部通算前の公的年金等の雑所得の金額を引きます。この組合せに当たる方は税務署でご確認ください。
- 確定給付企業年金等が含まれる場合、源泉徴収税額の概算は出しません。控除の計算も税率(10.21%)も公的年金と違うためです。源泉徴収票の実額を入力してください。
- 上場株式等の配当・譲渡の申告の有利不利は判定していません。申告すると合計所得金額が増えるため、医療費控除の足切りや住民税の非課税限度額、国民健康保険料・介護保険料に影響します。
- 国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料の額は計算していません。これらは住民税の所得をもとに決まるので、申告の内容で変わることがあります。
- 住民税は翌年度(2027年6月から)の概算です。市区町村独自の税率・均等割の違いには対応していません。
- 結果は目安です。実際の申告にあたっては税務署または税理士にご確認ください。
根拠資料
- 所得税法 第121条第3項(確定申告を要しない場合。「四百万円以下」「二十万円以下」「第二百三条の七の規定の適用を受けるものを除く」)、第203条の7(源泉徴収を要しない公的年金等)、第203条の2(公的年金等に係る源泉徴収義務)、第120条第1項(確定所得申告)、第122条(還付等を受けるための申告)、第35条第3項(公的年金等)、第9条第1項第3号(遺族年金・障害年金の非課税)、第69条第1項(損益通算)、第73条(医療費控除)、第86条(基礎控除)、第203条の3(徴収税額。第1号イの基礎的控除額、第4号の申告書未提出、第7号の確定給付企業年金等、第1項柱書の税率)、第203条の5第1号(社会保険料を控除した残額を支払額とみなす)、第203条の6第1項(扶養親族等申告書。「確定給付企業年金等を除く」)/所得税法施行令 第319条の5・第319条の7第1項(公的年金等の月割額と4円の整数倍への切上げ)、第319条の12(源泉徴収を要しない公的年金等の額=本則 百十八万円)/租税特別措置法施行令 第26条の27第1項(65歳以上は百六十八万円と読替え)、第26条の27の2第2項(令和8年以後は百五十五万円・二百五万円と読替え)/租税特別措置法 第41条の3の11第2項(所得金額調整控除)、第41条の16の2(基礎控除の加算)、第41条の4(不動産所得の損益通算の特例)
- 国税庁 タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係/No.1120 医療費を支払ったとき/No.2260 所得税の税率/No.1410 給与所得控除
- 国税庁 パンフレット 「暮らしの税情報(令和8年度版)」高齢者と税(年金と税)(公的年金等に係る雑所得の速算表、年金所得者の確定申告不要制度、注2「住民税の申告が必要な場合があります」)
- 日本年金機構 令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項(基礎的控除額の表、源泉徴収の対象とならない年金額の205万円→214万円・155万円→164万円、令和8年12月の精算)
- 地方税法 第317条の2第1項(市町村民税の申告等)、第317条の3第1項(確定申告書の提出をもって住民税の申告があったものとみなす)、第317条の6第4項(公的年金等支払報告書)、第314条の2・第37条(所得控除・調整控除)、第295条(非課税)、附則第3条の3(所得割の非課税限度額による調整措置)
- 国税通則法 第119条第1項(納付すべき国税の確定金額の100円未満の端数切捨て)、第74条(還付金等の消滅時効)、復興財源確保法 第28条(復興特別所得税2.1%)
- 令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ・給与所得控除の最低保障額74万円・扶養親族等の所得要件62万円。所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号))
- 市区町村の案内の例:高槻市「市民税・府民税の申告」
年金と確定申告の考え方は年金受給者の確定申告は必要?400万円・20万円の判定と、申告すると戻る人で、還付金が振り込まれるまでの目安は確定申告の還付金はいつ振り込まれる?で解説しています。関連ツール:医療費控除 還付金シミュレーター(セルフメディケーション税制との比較)/住民税 計算ツール(翌年度の住民税)/退職金の税金 計算ツール/ふるさと納税 控除上限額シミュレーター/株の損益通算・繰越控除と配当の課税方式シミュレーター(株の譲渡損益や配当も同じ確定申告書で申告します)。