株の損益通算・繰越控除と配当の課税方式シミュレーター
令和8年分の確定申告の期間は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です(所得税法120条。国税庁の令和8年分の案内は公表前)。還付を受けるだけの申告は2027年1月1日から出せます。
特定口座(源泉徴収あり)の譲渡損失をほかの口座の利益や配当と損益通算したら、前年以前3年の繰越損失を使ったら、確定申告でいくら戻るかを1円単位で計算します。あわせて、上場株式等の配当を総合課税にした場合と申告分離課税にした場合の税額を実額で比べます(税率の目安ではなく、所得税の帯をまたぐ場合も正しく計算します)。令和8年分(2026年1〜12月の所得・2027年3月申告)です。入力内容はブラウザの中だけで処理され、送信されません。
このツールの特徴。特定口座(源泉徴収あり)は口座ごとに「申告する/しない」を選べます(源泉徴収なしの特定口座と一般口座の譲渡損益は、申告するなら必ず含めます)。譲渡損失を申告する口座の配当は自動で申告対象に含めます(国税庁 No.1476)。繰越損失は古い年から、まず譲渡所得等、次に配当所得等の順で控除します(租税特別措置法施行令25条の11の2第8項)。配当の課税方式は、その年に申告する上場株式等の配当の全額についてどちらかに統一する必要があるため(措法8条の4第2項)、まとめて比べます。総合課税を選ぶとその年の譲渡損失と配当を損益通算できなくなるので、翌年へ繰り越せる損失の額も両方について出します。
対応していないこと。一般株式等(非上場株式など)、先物取引・FX、NISA、相対取引による譲渡、特定管理株式等が価値を失った場合、外国税額控除、住民税の調整控除・均等割・非課税限度額、大口株主が受ける配当、少額配当の申告不要、一般外貨建等証券投資信託の分配金、上場株式等の利子(公社債の利子など)の内訳、予定納税、雑損失・純損失の繰越控除。これは税務相談ではなく、結果は目安です。
この結果の根拠と注意点
計算の前提と制度の説明は、次の記事にまとめています。
計算の根拠
1. 口座ごとに「申告する/しない」を選べる
特定口座(源泉徴収あり)の上場株式等の譲渡による所得は、口座ごとに申告するか申告不要とするかを選べます。口座に受け入れた配当等も、口座ごとに選べます(1回の支払ごとの選択はできません)。国税庁 No.1476 のとおりです。
ただし例外があります。源泉徴収口座内で生じた譲渡損失を申告する場合には、その口座に受け入れた配当等を申告不要にできません。このツールは、譲渡損益がマイナスの口座で「譲渡損益を申告する」を選んだとき、その口座の配当を自動で申告対象に含めます。チェックの状態そのものは変えず、計算の側で扱いを決めています。
申告不要を選んだ配当等の源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引けません(国税庁 No.1330)。このツールも、申告しない口座の源泉徴収税額は精算に入れていません。
2. その年の損益通算(措法37条の12の2第1項)
上場株式等に係る譲渡損失は、その年分の上場株式等に係る配当所得等の金額を限度として控除できます。ここでいう配当所得等は申告分離課税を選択したものに限られます(国税庁 No.1474)。配当を総合課税で申告すると、その年の譲渡損失と通算できません。
上場株式等の譲渡による損失は、給与所得や年金の雑所得とは通算できません。租税特別措置法37条の11第1項の後段が「上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、…当該損失の金額は生じなかつたものとみなす」と定めているためです。
3. 繰越控除の順序(措令25条の11の2第8項)
前年以前3年内の譲渡損失は、政令の定めにより次の順で控除します。
- 2以上の年に生じたものがあるときは、最も古い年に生じたものから順次控除する(同項1号)。
- 1つの年の損失を控除するとき、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額と配当所得等の金額があるときは、まず譲渡所得等の金額から控除し、控除しきれない分を配当所得等の金額から控除する(同項2号)。
その年の損失による損益通算(第1項)が先で、繰越控除(第5項)はそのあとです。その結果、当年に大きな損失が出た年は、期限が迫った古い繰越損失を使えないまま切り捨てることがあります。このツールは、使えないまま期限切れになる額を分けて表示します。
4. 配当の課税方式は年ごとに統一する(措法8条の4第2項)
上場株式等の配当等について申告分離課税を選べるのは、その旨を記載した確定申告書を提出した場合に限られ、同じ年に総合課税を適用した配当があるときは、その年の他の配当にも申告分離課税は適用されません。国税庁 No.1330 も「申告分離課税の選択は、確定申告する上場株式等の配当所得の全額についてしなければなりません」と書いています。口座ごとに総合と分離を使い分けることはできません。
ただし、この選択の対象は同条第1項1号から3号までの「配当所得」に係る部分だけです(2号は「公社債投資信託以外の証券投資信託に係るものに限る」とされています)。したがって上場株式等の利子等——特定公社債の利子、公社債投資信託(MRF など)の収益の分配、公募特定受益証券発行信託の収益の分配、特定目的信託の社債的受益権の剰余金の配当——は総合課税を選べず、申告するなら必ず申告分離課税になります。損益通算・繰越控除の相手にはなるので、このツールでは口座ごとに別の欄で入力し、どちらの課税方式でも分離課税として計算します。
5. 配当控除(所得税法92条・地方税法附則5条)
総合課税を選んだ配当には配当控除があります。申告分離課税を選んだ配当にはありません(措法8条の4第1項後段が所得税法92条1項を適用しないと定めています)。外国法人から受ける配当も対象外です。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 剰余金の配当等(国内株式・ETF など) | 10% | 2.8% |
| 剰余金の配当等のうち1,000万円を超える部分 | 5% | 1.4% |
| 証券投資信託の収益の分配(公募株式投資信託) | 5% | 1.4% |
| 同上のうち1,000万円を超える部分 | 2.5% | 0.7% |
1,000万円の判定に使うのは「課税総所得金額等」です。国税庁 No.1250 の注が「課税総所得金額、…上場株式等に係る課税配当所得等の金額、株式等に係る課税譲渡所得等の金額および先物取引に係る課税雑所得等の金額の合計額」と定義しています。株の譲渡益を申告すると、この合計が1,000万円を超えて配当控除の率が下がることがあります。このツールはそこまで計算に入れています。
配当控除の額はその年分の所得税額が限度です(所得税法92条2項)。控除しきれない分は切り捨てで、還付されません。
その「所得税額」には分離課税の所得税額も入ります。所得税法92条2項は「課税総所得金額に係る所得税額……から順次控除する」と書いていますが、租税特別措置法37条の10第6項6号(同37条の11第6項が準用)と同8条の4第3項4号が、ここに分離課税の所得税額を読み足しているためです。総合課税分で引ききれない配当控除は、株の譲渡益にかかる所得税からも引けます。住民税も同じで、地方税法附則33条の2第3項4号・附則35条の2第4項4号(附則35条の2の2 が準用)が附則5条の「所得割の額」に分離課税の所得割を読み足しています。
5-2. 申告で合計所得金額が増えると、基礎控除が減ることがあります
令和8年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円、655万円以下なら67万円、それを超えると62万円です(所得税法86条と租税特別措置法41条の16条の2の加算額の合計)。株の所得を申告して合計所得金額がこの段をまたぐと、基礎控除が減って課税総所得金額が上がります。たとえば株以外の合計所得金額が480万円の方が譲渡益20万円を申告すると、合計所得金額が500万円になって基礎控除が37万円減ります。このツールは「株の所得を除いた合計所得金額」の入力からこの段差を計算に入れています。住民税の基礎控除は43万円で、合計所得金額2,400万円まで変わりません。
6. 税率と端数
- 申告分離課税:所得税15%+復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)+住民税5%=20.315%(国税庁 No.1463)。
- 課税標準ごとに1,000円未満は切捨て(国税通則法118条1項)。上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額と課税配当所得等の金額は別の課税標準なので、合算してからではなくそれぞれ切り捨てます。納付する税額の100円未満は切捨て(同119条1項)。還付は1円単位です。
- 年末調整では年税額の100円未満が切り捨てられています(所得税法190条)。確定申告はその年分の年税額を切り捨てずに計算するので、切り捨てられていた分(最大99円)が精算に出ます。これは株の申告とは関係なく出る差なので、課税方式の比較には入れていません(比較は株の所得によって増える税額どうしで見ています)。
- 特定口座(源泉徴収あり)の源泉徴収税額は、譲渡の対価が支払われるつど計算されるため、このツールの概算(年計×15.315%・5%)と数円ずれることがあります。特定口座年間取引報告書の実額を入れたほうが正確です(各口座の「源泉徴収税額を自分で入力する」から入れられます)。
- 住民税は、申告した分の配当割額・株式等譲渡所得割額が所得割から控除され、控除しきれない分は還付または充当されます(地方税法314条の9・37条の4)。所得税の還付と違い、翌年度の住民税で精算されます。このツールは所得割の100円未満切捨てや調整控除・均等割を計算に入れていません。
- 国税庁 No.1476 のとおり、令和9年1月1日以後に生ずる所得は復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%が加わりますが、源泉徴収の合計は15.315%で変わりません。このツールは令和8年分の税率で計算しています。
7. 申告すると合計所得金額が増えます
申告した譲渡益と配当は、ほかの制度の所得にも入ります。ただし、どの所得の物差しを使うかは制度によって違い、繰越控除の扱いも変わります。
| 合計所得金額(繰越控除前) | 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の判定、本人の基礎控除の段(489万円・655万円)、住民税の均等割の非課税限度額。 |
|---|---|
| 総所得金額等(繰越控除後) | 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の算定、住民税の所得割の非課税限度額。 |
| 住民税の課税所得・所得割額 | 国民健康保険・後期高齢者医療に加入している70歳以上の方の医療費の窓口負担の割合(協会けんぽ・健康保険組合では標準報酬月額で判定するので、住民税の課税所得が増えても割合は変わりません)、ふるさと納税の控除上限額(特例分は所得割額の20%が上限)。高額療養費の区分は、加入している保険と年齢で基準が違います(国民健康保険は70歳未満が基礎控除後の総所得金額等・70歳以上が住民税の課税所得、後期高齢者医療は住民税の課税所得、協会けんぽ・健康保険組合は70歳以上でも標準報酬月額)。ご自身の保険者の案内でご確認ください。 |
税金が戻っても、ほかの負担が増えることがあります。
とくに注意が要るのは、繰越控除は合計所得金額を減らさないことです。合計所得金額は繰越控除を適用する前の金額で計算します。繰越損失で所得税・住民税が0円になっても、合計所得金額には譲渡益がそのまま入ります。一方、国民健康保険料などの算定に使う総所得金額等は繰越控除後なので、こちらは繰越損失で抑えられます。このツールが表示するのは合計所得金額に加わる額(繰越控除前)です(その額がほかの負担にいくら影響するかは、このツールでは計算していません)。
なお、その年の損益通算(措法37条の12の2第1項)は合計所得金額に反映されます。繰越控除とは扱いが違います。
8. このツールが計算していないこと
- 一般株式等(非上場株式など)の譲渡損益。繰り越された上場株式等の譲渡損失は一般株式等の譲渡所得等から控除できません(国税庁 No.1474 注1)。
- 相対取引などによる譲渡損失は損益通算・繰越控除の対象外です(同 注2)。
- NISA・ジュニアNISAの口座内の譲渡損失は損益通算・繰越控除の対象外です(同 注3)。利益も非課税なので、このツールには入れないでください。
- 先物取引・FX に係る雑所得等(別の分離課税です)、外国税額控除、分配時調整外国税相当額控除。
- 大口株主等が受ける配当(総合課税のみ)、少額配当の申告不要制度、一般外貨建等証券投資信託の収益の分配(配当控除の率が半分になります。措法9条4項)、特定外貨建等証券投資信託の収益の分配(配当控除の対象外。No.1250(5))。
- 住民税の調整控除・均等割・非課税限度額、所得割の100円未満切捨て、総合課税分の課税標準の1,000円未満切捨て(分離課税分は切り捨てています)、住民税の課税総所得金額が所得税と違うこと(人的控除の差のぶん住民税のほうが大きくなります)。課税総所得金額等が1,000万円の前後にある方は、配当控除の率が所得税と住民税で食い違うことがあります。住民税の配当控除の1円未満は切り捨てています(切り上げる扱いの自治体があり、数円の差が出ることがあります。地方税法20条の4の2は課税標準と確定金額の端数だけを定めていて、税額控除額の端数の定めはありません)。
- 予定納税、雑損失・純損失の繰越控除、平均課税。
- 配当所得から差し引ける負債の利子(株式などを取得するための借入金の利子。所得税法24条2項)。配当の欄には利子を引く前の収入金額を入れてください。当てはまる方は、実際の配当所得がここより小さくなります(国税庁 No.1330)。
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)。ここに出る還付額は、多くも少なくもなり得ます。使い切れなかった控除は申告して出た株の所得税からも引けるので多く戻ることがある一方(租税特別措置法41条)、年末調整で所得税がすでに0円なら、給与から源泉徴収された所得税はもともと無いので、そのぶん少なくなります(株から源泉徴収された税は別に戻ります。配当を総合課税にして配当控除で申告後の税額も0円になる場合など)。さらに、株の所得を申告して合計所得金額が所得要件(入居年により2,000万円または3,000万円)を超えると、その年は控除を受けられません。いずれも金額が大きく変わるので、当てはまる方は年末調整 還付金シミュレーターや税務署でご確認ください。住民税へ回る分(地方税法附則5条の4)も計算していません。
- 住民税の所得控除の額そのもの。入力欄は所得税の「引ききれなかった所得控除の残り」だけなので、住民税の残りはそこから基礎控除の差(所得税104万円−住民税43万円など)を引いて概算しています。配偶者控除(38万円/33万円)・扶養控除(38万円/33万円)など、ほかの控除の差は見ていません(当てはまる場合は結果の下に注意が出ます)。
- 繰越損失の金額そのものの計算(租税特別措置法37条の12の2第6項)。確定申告書付表に書かれている残額をそのまま使います。
- 申告で合計所得金額が増えたことによる、基礎控除以外の控除の減少(配偶者控除・配偶者特別控除・ひとり親控除・寡婦控除・勤労学生控除の所得要件)。基礎控除の段差だけは計算しています。
- 1回の支払ごとの申告不要の選択。源泉徴収口座に受け入れた配当等は口座ごとにしか選べませんが、それ以外の上場株式等の配当等は1回に支払を受けるべき配当等ごとに選べます(国税庁 No.1330)。このツールは口座ごとの選択だけなので、支払ごとに分けたい場合は申告する分と申告しない分を別の口座として入れてください。
- 結果は目安です。実際の申告にあたっては税務署または税理士にご確認ください。
根拠資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1476 特定口座制度(同上)
- 国税庁 タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)/No.1250 配当所得があるとき(配当控除)(同上)
- 国税庁 タックスアンサー No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(同上)
- e-Gov 法令検索 租税特別措置法 8条の4・37条の11・37条の12の2/租税特別措置法施行令 25条の11の2
- e-Gov 法令検索 所得税法 87条・89条・92条/地方税法 附則5条・314条の9・37条の4
- e-Gov 法令検索 国税通則法 118条・119条
条文と通達の引用はページ内の該当箇所に書いています。数値の出どころは assets/kabu.js の冒頭にもコメントとして残しています。
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