保険料控除申告書の書き方(令和8年分)
結論:保険料控除申告書は、生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金(iDeCoを含む)の4つのブロックに、控除証明書の区分と金額を写して様式の計算式に当てはめれば書けます(控除額の上限は生命保険料が3区分の合計で12万円、地震保険料が5万円、社会保険料と小規模企業共済等掛金は全額)。書くのは年末調整を受ける人のうち、生命保険料・地震保険料や、給与から天引きされていない社会保険料・iDeCoの掛金などを自分で払った人で、給与から天引きされている分は書きません。
年末調整で出す「給与所得者の保険料控除申告書」(国税庁 A2-3)は、上から4つのブロックに分かれています——生命保険料控除/地震保険料控除/社会保険料控除/小規模企業共済等掛金控除。やることはどのブロックでも同じで、①控除証明書に書いてある区分をそのまま写し、②様式の下にある計算式に当てはめる、それだけです。迷いやすいのは生命保険料の「新・旧」と「一般・介護医療・個人年金」の組み合わせで、ここを取り違えると控除額が変わります。iDeCoは4つ目のブロックの「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄に書きます。逆に給与から天引きされている社会保険料とiDeCoは、この申告書には書きません(勤務先がすでに把握しているため)。
令和8年分で変わったところ
令和7年度税制改正で、年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例(子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充)が創設されました。一般の生命保険料のうち新契約(新保険料等)について、控除額の上限が4万円から6万円に上がります。
適用されるのは令和8年分と令和9年分です。国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」は「この改正は、令和8年分及び令和9年分の所得税について適用されます」と明記しています。タックスアンサー No.1140 は「令和8年分以降の申告の場合」と書いていて終わりの年分に触れていませんが、2年分の措置であると読んでください。令和10年分以降がどうなるかは、その時点の法令で確かめる必要があります。
様式の上でも、令和8年分から「年齢23歳未満の扶養親族の有無」欄と「☆年齢23歳未満の扶養親族」欄、そして計算式Ⅱが新しく入りました。3区分の合計の上限12万円は変わりません。
生命保険料控除の書き方
まず控除証明書の3か所を見る
秋になると保険会社から控除証明書が届きます。見るのは次の3か所です。
- 区分(一般・介護医療・個人年金)。申告書は上からこの3段に分かれています。
- 新・旧。平成24年1月1日以後に締結した契約が「新保険料等」、平成23年12月31日以前が「旧保険料等」です。証明書に「新制度」「旧制度」と印字されていることが多く、1枚の証明書に両方が載っていることもあります。介護医療保険料には旧制度がありません(新制度で新設された区分のため)。
- 金額。申告書に書くのは「あなたが本年中に支払った保険料等の金額(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)」です。証明書に「証明額」と「申告額(12月までの見込額)」の2つが載っている場合は、年末までその契約を続けて払い切るなら見込額のほうを使います。
書き写すのは、契約ごとに保険会社等の名称/保険等の種類/保険期間又は年金支払期間/契約者の氏名/保険金等の受取人(氏名と続柄)/新・旧の区分/金額です。
3つの計算式に当てはめる
金額を区分ごとに合計したら、様式の下部にある計算式に当てはめます。控除額の計算で1円未満の端数が出たときは切り上げです(様式の注記)。
| 計算式Ⅰ(新保険料等用) | 計算式Ⅱ(23歳未満の扶養親族を有する場合の新保険料等用) | 計算式Ⅲ(旧保険料等用) |
|---|---|---|
| 20,000円以下 → 全額 | 30,000円以下 → 全額 | 25,000円以下 → 全額 |
| 20,001〜40,000円 → ×1/2+10,000円 | 30,001〜60,000円 → ×1/2+15,000円 | 25,001〜50,000円 → ×1/2+12,500円 |
| 40,001〜80,000円 → ×1/4+20,000円 | 60,001〜120,000円 → ×1/4+30,000円 | 50,001〜100,000円 → ×1/4+25,000円 |
| 80,001円以上 → 一律40,000円 | 120,001円以上 → 一律60,000円 | 100,001円以上 → 一律50,000円 |
計算式Ⅱを使えるのは「一般」の「新」だけです。介護医療保険料と個人年金保険料の新契約は、23歳未満の扶養親族がいても計算式Ⅰのままで上限4万円です。
新旧が両方あるときの上限
一般と個人年金には新旧の両方がありえます。様式はこう組み立てています。
- 新だけ——計算式Ⅰ(または計算式Ⅱ)の結果がその区分の控除額。
- 旧だけ——計算式Ⅲの結果(最高50,000円)。
- 両方ある——新の結果と旧の結果を足した額(最高40,000円。一般で特例を使う場合は最高60,000円)と、旧だけの結果とを比べて、大きいほうを採ります。
「両方あるのに旧だけのほうが有利」という逆転が起きるのは、合算の上限が4万円で頭打ちなのに、旧単独の上限は5万円だからです。様式はこの比較を自動でさせる作りになっているので、指示どおり欄を埋めれば取りこぼしません。
なお特例を使う場合、様式は記入する欄そのものが変わります。注記は「②欄及び⑤欄を記載するとともに、㋑欄には『⑤欄の金額』を記載してください(①欄及び④欄は使用しません)」としています。特例を使わない場合は「①欄及び④欄を記載するとともに、㋑欄には『③欄と④欄のいずれか大きい金額』を記載」です。特例のときは旧単独との比較をしませんので、①欄・④欄を埋めてしまわないよう注意してください。
「年齢23歳未満の扶養親族」とは
様式の注記の定義はこうです。あなたと生計を一にする年齢23歳未満(平成16年1月2日以後生)の親族(児童福祉法の規定により養育を委託されたいわゆる里子を含み、配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除く)で、本年中の合計所得金額の見積額が62万円以下(給与だけの場合は、給与の収入金額が136万円以下)の人。
ただしこの金額には、年末調整をいつ行うかによる読み替えがあります。国税庁は「令和8年分の所得税について、令和8年11月30日以前に年末調整を行う場合には、……『62万円以下(給与だけの場合は、給与の収入金額が136万円以下)』を『58万円以下(給与だけの場合は、給与の収入金額が123万円以下)』に読み替えて使用してください」としています。分かれ目は「年末調整をいつ行うか」という日付だけで、理由ではありません。令和8年11月30日以前に行う年末調整なら58万円(給与123万円)、12月1日以後に行う年末調整なら62万円(給与136万円)です。12月の給与で年末調整を受ける通常の場合は62万円(給与136万円)になります。年の途中で年末調整が行われるのは、海外転勤で非居住者になる、死亡により退職する、著しい心身の障害で退職して再就職の見込みがない、といった場合です(これらは一例で、ほかにもあります)。ただし同じ理由でも、その年末調整が12月1日以後なら62万円(給与136万円)で判定します——たとえば12月10日の海外転勤に伴う年末調整は62万円のほうです。
ポイントが3つあります。
- 16歳未満でも該当します。扶養控除は16歳未満が対象外ですが、この特例は年齢の下限がありません。
- 所得の要件があります。アルバイトをしている大学生の子なら、給与収入136万円以下かどうかを確かめてください。
- 夫婦のどちらか一方しか使えない、という制限はありません。様式の注記は「夫婦共働き世帯のように同じ世帯に所得者が2人以上いる場合において、年齢23歳未満の扶養親族1人ごとに、同一世帯内のいずれか1人の所得者にのみ適用されるという制限がありません。したがって、夫婦の間に年齢23歳未満の扶養親族である子が1人いるような場合には、その夫婦双方が、この特例の適用を受けることができます」と明記しています。扶養控除とは扱いが違うところです。
「☆年齢23歳未満の扶養親族」欄には、氏名・個人番号・生年月日・続柄・(住所が違う場合は)住所・本年中の合計所得金額の見積額を書きます。2人以上いる場合は、いずれか1人を書けば足ります。個人番号は一定の要件の下で記載を要しない場合があるので、勤務先に確認してください。
計算例
次の数字は年末調整 還付金シミュレーターの画面の値です(上の計算式で手計算した結果とも一致します)。
| 支払った保険料 | 23歳未満の扶養親族 | 生命保険料控除 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 一般(新)60,000円 | なし | 35,000円 | 計算式Ⅰ 60,000×1/4+20,000 |
| 一般(新)60,000円 | あり | 45,000円 | 計算式Ⅱ 60,000×1/2+15,000 |
| 一般(新)100,000円 | なし | 40,000円 | 計算式Ⅰ 上限 |
| 一般(新)100,000円 | あり | 55,000円 | 計算式Ⅱ 100,000×1/4+30,000 |
| 一般(旧)100,000円 | — | 50,000円 | 計算式Ⅲ 上限 |
| 一般(新)60,000円+一般(旧)100,000円 | なし | 50,000円 | 合算は上限40,000円、旧単独50,000円のほうが大きい |
| 一般(新)60,000+介護医療40,000+個人年金(新)80,000円 | なし | 105,000円 | 35,000+30,000+40,000 |
| 同上 | あり | 115,000円 | 45,000+30,000+40,000 |
| 3区分とも80,000円超 | — | 120,000円 | 40,000×3。合計の上限 |
いちばん下の行のとおり、3区分の合計は12万円が上限です。特例で一般が6万円まで伸びても、この12万円は変わりません。介護医療と個人年金が両方とも上限(各4万円)に達している人は、一般が6万円に伸びても合計は12万円で頭打ちになり、特例の効果が出ません。上の例で特例の効果が1万円(105,000円→115,000円)にとどまっているのは、そのためです。
共済(県民共済・コープ共済・JA共済)の証明書の読み方
共済の掛金も、保険と同じく証明書(共済掛金払込証明書)に書かれた区分のとおりに写します。共済だからといって別の欄はありません。各団体の公式の案内で確かめた点は次のとおりです。
- 新・旧:証明書に「新制度」とあれば新、「旧制度」とあれば旧に○を付けます。介護医療保険料はすべて新制度なので、新旧の記入は要りません(コープ共済)。平成24年1月1日以後に結んだ契約は新制度、平成23年12月31日以前の契約は旧制度で、証明書にどちらかが表示されます。旧制度の契約でも、平成24年以後に一定の特約を中途で付けると新制度になります(JA共済)。
- 一般と介護医療に分かれる:同じ共済でも、証明書の金額が「一般の生命保険料」と「介護医療保険料」に分けて書かれていることがあり、申告書もそれぞれ別の欄に書きます(コープ共済)。たとえばかながわ県民共済は、主制度(活き生き・かがやきなど)を一般生命保険料、入院特約・こども医療特約などを介護医療保険料に区分しています。ケガだけを保障するコースや個人賠償責任保険の掛金は対象になりません(かながわ県民共済)。
- 個人年金:コープ共済には個人年金保険料に当たる商品はありません。JA共済の年金共済は、税制適格特約が付いた契約の主契約掛金が個人年金保険料控除の対象です。
- 建物更生共済(JA共済):平成18年12月31日以前に結んだ共済期間10年以上の契約は、地震保険料控除の経過措置を選べます。
- 証明額:割戻金がある共済は、割戻金を差し引いた額が証明されています(JA共済)。証明書の金額をそのまま写し、払った掛金の額に置き換えないでください。
都道府県民共済は都道府県ごとに別の団体で、コースの名前や区分は団体によって違います。迷ったら証明書の区分の欄と、発行元の案内を確認してください。
地震保険料控除の書き方
ブロックは1つですが、「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の2種類を区別して書きます。証明書を見て、どちらかを○で囲みます。
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 地震保険料 | 支払った金額の全額(最高50,000円) |
| 旧長期損害保険料 | 10,000円以下は全額/10,000円超は ×1/2+5,000円(最高15,000円) |
| 両方ある | それぞれの計算額の合計(最高50,000円) |
旧長期損害保険料は、平成18年12月31日までに締結した長期損害保険契約等(満期返戻金があり、保険期間または共済期間が10年以上で、平成19年1月1日以後にその契約の変更をしていないもの。始期が平成19年1月1日以後のものは除く)に係るものです。いまから新しく入って該当することはありません。
1つの契約が地震保険料と旧長期損害保険料の両方に当てはまる場合は、どちらか一方を選びます。両方で控除を受けることはできません。
計算例(ツールの画面の値):地震保険料50,000円だけなら控除50,000円、旧長期損害保険料20,000円だけなら 20,000×1/2+5,000=15,000円、両方あって50,000円+20,000円なら合計65,000円になるところ上限の50,000円です。
社会保険料控除の書き方
ここに書くのは、あなたが自分で払った社会保険料です。国民年金保険料、国民年金基金の掛金、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療制度の保険料、介護保険料などが対象で、金額に上限はなく全額が控除されます。
給与から差し引かれた社会保険料は書きません。様式の注記が「給与から差し引かれた社会保険料は、改めてこの申告書によって申告するまでもなく控除の対象とされますから、記載する必要はありません」としています。健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料は勤務先が把握しているので、書くと二重になります。
書くのは社会保険の種類/保険料支払先の名称/保険料を負担することになっている人の氏名(あなたとの続柄)/あなたが本年中に支払った保険料の金額です。3つ目の欄があるとおり、生計を一にする配偶者やその他の親族が負担することになっている社会保険料を、あなたが支払った場合も控除の対象になります(No.1130)。学生の子の国民年金保険料を親が払った、といったケースです。払ったのが誰かで決まるので、家族の名前で届いた納付書でも、実際にあなたが払ったのなら書けます。
添付書類は種類で分かれます。様式は、国民年金の保険料と国民年金基金の加入員として負担する掛金については、厚生労働省または各国民年金基金が発行した証明書類を添付するとしています。それ以外の社会保険料(国民健康保険料など)は証明書類を添付する必要がありません。
小規模企業共済等掛金控除の書き方(iDeCoはここ)
4つ目のブロックです。欄は種類ごとに分かれています。
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金(小規模企業共済)
- 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金
- 確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金——iDeCoはここです
- 心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金
控除額はその年に支払った掛金の全額で、上限はありません(掛金そのものに制度上の拠出限度額はあります)。添付するのは、国民年金基金連合会から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」です。
給与天引き(事業主払込)のiDeCoは、この申告書に書きません。社会保険料と同じ理屈で、勤務先がすでに把握しているからです。自分の口座から引き落としている(個人払込)なら書きます。どちらか分からないときは、払込証明書が自分宛に届いているかどうかで見当が付きます——届いていれば個人払込です。
よくある間違い
- 証明書の「証明額」をそのまま書く。10月時点で発行される証明書には、その時点までの証明額と12月までの見込額(申告額)が並んでいることがあります。年末まで払い続けるなら見込額を書きます。途中で解約・減額したのに見込額のまま出すと、多く控除されてしまいます。
- 新旧を取り違える。平成24年1月1日が境目です。平成23年12月以前の契約でも、その後に更新・特約の中途付加をしていると新契約の扱いになることがあります。証明書の印字が正です。
- 給与天引きの社会保険料やiDeCoを書いてしまう。上に書いたとおり、書く必要がありません。
- 介護医療保険料に計算式Ⅱを使ってしまう。計算式Ⅱは一般の新契約だけです。
- 配偶者名義の保険を書けないと思い込む。生命保険料控除の対象になるのはあなたが払った保険料で、契約者が配偶者でも、保険金の受取人があなた・あなたの配偶者・その他の親族であるなどの要件を満たし、あなたが払っているなら対象になります。契約者の名義ではなく、誰が払ったかと受取人が誰かで判断します。個人年金保険料控除には受取人や払込期間などの追加の要件があるので、証明書に「個人年金保険料税制適格特約」の表示があるかを確かめてください。
- 控除証明書を紛失した。保険会社に再発行を依頼します。年末調整に間に合わなければ、翌年に確定申告をすれば同じ控除を受けられます(下のFAQ)。
ツールで検算する
年末調整 還付金シミュレーターの「詳細入力」に、一般(新)・一般(旧)・介護医療・個人年金(新)・個人年金(旧)・地震保険料・旧長期損害保険料・iDeCoの欄があります。申告書に書いた金額をそのまま入れると、控除額と、年末調整で戻る金額の目安が出ます。
23歳未満の扶養親族がいる場合は「23歳未満の扶養親族がいる(16歳未満を含む)」のチェックを入れてください。計算式Ⅱに切り替わります。このチェックは年齢だけを聞いているので、上に書いた所得の要件はご自分で確かめてください——12月に年末調整をする通常の場合は合計所得金額の見積額62万円以下(給与だけなら収入136万円以下)、令和8年11月30日以前に年末調整を行う場合は58万円以下(給与だけなら123万円以下)です。
iDeCoは金額を入れたうえで「この掛金の払い方」を選びます。給与天引きの場合は申告書には書きませんが、ツールには入力します——毎月の源泉徴収税額の推定に効くためです。
申告書の欄ごとの記入例と、ここに書ききれなかった見落としやすい点は、Tekiba の有料記事(note・980円)にまとめています。
よくある質問
控除証明書が届きません。電子データ(マイナポータル連携)は使えますか?
まず、発行時期は保険会社や契約によって違います。10月に届くものが多い一方、その年に入った契約や年末に近い払込のものは11月以降になることがあります。時期を過ぎても届かない場合は保険会社に問い合わせて、再発行を依頼してください。電子データについては、保険会社が発行する電子的控除証明書(XML形式)を年末調整で使う仕組みがあり、マイナポータル連携でまとめて取得することもできます。勤務先が年末調整を電子化していれば、そのデータをそのまま提出できます。ただし電子データを受け取れるかどうかは勤務先の年末調整の方式によりますので、紙で出すのか電子で出すのかを先に確認してください。紙で出す場合は、電子的控除証明書を国税庁の「QRコード付証明書等作成システム」で書面に出力して添付する方法もあります。
年払い・一時払いの保険料はどう書きますか?
生命保険料控除の対象になるのはあなたがその年中に支払った保険料です。年払い(その年の1年分をまとめて払うもの)なら、払った年にその全額を書きます。混同しやすいのが「前納」と「一時払い」で、扱いが分かれます。前納——何年分かをまとめて先に預けておき、払込期日が来るたびに充当していくもの——は、払った年に全額ではありません。所得税基本通達76-3(3)は「前納した生命保険料等については、次の算式により計算した金額をその年において支払った金額とする」としていて、前納した金額のうち、その年中に到来する払込期日の回数に対応する分だけがその年の控除の対象になり、残りは翌年以降に回ります。いっぽう一時払い——契約時に保険料の全額を1回で払い切るもの——は、払ったその年だけの控除で、翌年以降は控除がありません。前納と違って「まだ充当されていない残額」という考え方がないためです。どの払い方でも、証明書に書かれたその年分の金額をそのまま写すのが正確で、保険会社が上の計算をしたうえで印字しています。なお国民年金保険料の2年前納は別の制度(社会保険料控除)の話で、こちらは払った年に全額とする方法と、各年分に按分する方法のどちらかを選べます。生命保険料の前納と同じ扱いではありません。
申告書に書き忘れました。もう間に合いませんか?
2つの道があります。1つは勤務先に年末調整のやり直しを頼むこと。その年分の源泉徴収票を交付する日までであれば、勤務先はやり直しができます。源泉徴収票の交付期限は翌年1月31日なので、実際にはそこが目安です。もう1つは自分で確定申告をすることで、こちらは年末調整の期限を過ぎていても使えます。納めすぎた税金を返してもらうだけの還付申告なら、その年の翌年1月1日から5年間できますので、何年か前の書き忘れでも間に合うことがあります。年末調整で扱えるものと確定申告が要るものの切り分けは年末調整でできないもの一覧と確定申告の準備(令和8年分)にまとめています。
根拠資料
- コープ共済 控除証明書(共済掛金払込証明書)について(新・旧の区分、介護医療保険料はすべて新制度)
- JA共済 課税所得控除共済掛金払込証明書の記載事項・保険料控除申告に関するご案内(新制度・旧制度の表示、年金共済、建物更生共済、割戻金)
- かながわ県民共済 共済掛金は生命保険料控除の対象となりますか?(一般生命保険料と介護医療保険料の区分)
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書」(A2-3、様式 PDF)——欄の名称、計算式Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、1円未満の端数は切り上げ、特例適用時の記入欄の使い分け(②欄・⑤欄を記載し㋑欄には⑤欄の金額、①欄・④欄は使用しない)、「年齢23歳未満の扶養親族」の定義(生計を一にする平成16年1月2日以後生の親族、里子を含み配偶者・事業専従者を除く、合計所得金額の見積額62万円以下=給与だけなら136万円以下)、夫婦双方が適用を受けられること、給与から差し引かれた社会保険料は記載不要、国民年金の保険料等の証明書類の添付。
- 国税庁「A2-3 給与所得者の保険料控除の申告」の注記——「令和8年分の所得税について、令和8年11月30日以前に年末調整を行う場合には、……『62万円以下(給与だけの場合は、給与の収入金額が136万円以下)』を『58万円以下(給与だけの場合は、給与の収入金額が123万円以下)』に読み替えて使用してください」。
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」(令和8年4月1日現在法令等)——新契約・旧契約の計算式、23歳未満の扶養親族を有する場合の控除額の表、新旧両方がある場合の上限、3区分の合計上限120,000円。
- 国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」第1章——「令和7年度税制改正により、年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例が創設されました……この改正は、令和8年分及び令和9年分の所得税について適用されます」。
- 国税庁 タックスアンサー No.1145「地震保険料控除」(令和8年4月1日現在法令等)——控除額の計算、旧長期損害保険料の要件、1つの契約が両方に当てはまる場合はいずれか一方。
- 国税庁 タックスアンサー No.1130「社会保険料控除」(令和8年4月1日現在法令等)——対象となる社会保険料の範囲、生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合、控除額は全額。
- 国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」(令和8年4月1日現在法令等)——対象となる掛金の種類(小規模企業共済、確定拠出年金の企業型・個人型年金加入者掛金、心身障害者扶養共済制度)、控除額は全額、払込証明書。
- 所得税基本通達76-3(支払った生命保険料等の金額)——(3)「前納した生命保険料等については、次の算式により計算した金額をその年において支払った金額とする」。前納とは、各払込期日が到来するごとに充当するものとしてあらかじめ保険会社等に払い込んだ金額で、まだ充当されない残額があるうちに払込みを要しないこととなった場合にその残額が返還されることとなっているもの(同(3)の注)。
- 国税庁 タックスアンサー No.1141「生命保険料控除の対象となる保険契約等」——控除の対象になる契約と保険金等の受取人の要件。
この記事は一般的な説明で、個別の判断は税理士または所轄の税務署へご相談ください。記事中の控除額は令和8年分(2026年)の制度による計算で、実際の控除額は控除証明書の金額と勤務先の年末調整で確定します。関連ツール:年末調整 還付金シミュレーター。関連記事:基礎控除申告書の書き方(令和8年分)収入の見積り方/年末調整の還付金はいくら戻る?年収別の早見表と仕組み/年末調整でできないもの一覧と確定申告の準備(令和8年分)/源泉徴収票の見方:手取りと還付を逆算する(令和8年分)。
さらに詳しく(note)
- 令和8年分 年末調整の書類、欄ごとの書き方と損をしないチェック(note・有料・980円):3枚の申告書の欄ごとの記入例
- 令和8年分 年末調整:出す書類と期限、会社ごとの違い(note・有料・980円):何を・いつまでに・誰に出すか、前職・途中入社・2か所給与・扶養の変更
- 年末調整で「戻る人」と「追加で引かれる人」の違い——今年(令和8年分)は例年より戻る人が多い理由(note・無料):還付になる人と追加で引かれる人の分かれ目