ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告の違い
結論:ふるさと納税の控除を受ける手続きは「ワンストップ特例」と「確定申告」の2通りです。控除の合計額は原則として同じですが、控除される税金の種類と時期が違い、条件によっては自己負担額に差が出ます。また、ワンストップ特例は後から確定申告をすると無効になるという落とし穴があります。この記事では、両者の違いと、自分がどちらを使うべきかの判断手順をまとめます。
どちらが得か:控除の合計は原則同じで、違うのは手間と、確定申告が必要な人の条件です。確定申告をする予定がある人と、寄附先が6自治体以上の人はワンストップ特例を使えません。どちらも使える人で自己負担に差が出るのは、下の「控除の内訳はどう変わるか」に挙げた一部の場合です。
| あなたの状況 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 医療費控除・住宅ローン控除の初年度・副業の所得20万円超などで、確定申告をする | 使えない(出しても無効) | 寄附もまとめて申告 |
| 給与・年金以外の所得があり、住民税の申告をする | 使えない(出しても無効) | 寄附を確定申告で申告 |
| 寄附先が1年で6自治体以上 | 使えない | 寄附を申告 |
| 上のどれにも当たらない会社員・年金受給者 | 使える(申請書は多くの自治体で寄附した翌年の1月10日必着) | 使える(手間は申告書の作成) |
手続きの違い
| 比べる点 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 使える人 | 確定申告をする必要がない給与所得者・年金受給者で、寄附先が1年で5自治体以内 | 誰でも可(確定申告が必要な人はこちら) |
| 手続き | 寄附ごとに自治体へ申請書(マイナンバー確認書類つき)を送るか、自治体のオンライン申請を使う | 翌年2月16日〜3月15日に、寄附金受領証明書(またはポータルの「寄附金控除に関する証明書」)を添えて申告 |
| 期限 | 多くの自治体で寄附した翌年の1月10日必着(期限と休日の扱いは自治体ごとに異なる) | 翌年3月15日(還付申告だけなら翌年1月1日から5年間) |
| 控除される税金 | 翌年度の住民税のみ | その年の所得税(還付)+翌年度の住民税 |
| お金の戻り方 | 翌年6月からの住民税が減る(給与天引きなら月々の額が減る) | 所得税分は申告後1〜2か月で還付、住民税分は翌年6月から減る |
控除の内訳はどう変わるか
確定申告では、寄附額から2,000円を引いた額が「所得税の寄附金控除(所得控除)」「住民税の基本分」「住民税の特例分」の3つに分かれて控除されます。ワンストップ特例では所得税の控除が行われない代わりに、同じ額が「申告特例控除」として住民税から引かれます。つまり、確定申告では所得税と住民税の両方から、ワンストップ特例では住民税だけから、合計でほぼ同じ額が控除されます。ただし「ほぼ同じ」になるのは判定率(判定額=住民税の課税総所得金額−人的控除差調整額−(所得税の基礎控除額−48万円)で決まる率)が33%以下の場合です。判定率は本人の実際の所得税率と一致しないことがあり、特定親族特別控除などがあると1段上に出ます(給与2,170万円・社保50万円・特定親族の所得70万円で、所得税率33%・判定率40%)。申告特例控除は「特例分×下表の割合」で計算し、その割合の表は判定額(住民税の課税総所得金額−人的控除差調整額)900万円超の「56.307分の33.693」が最終行で、1,800万円超・4,000万円超も同じ行を使います。一方、特例分の率は49.16%・44.055%と下がり続けるため、所得税率40%・45%の方はワンストップ特例だと自己負担が2,000円を超えます(地方税法附則第7条の2第4項)。この方々は確定申告のほうが自己負担は小さくなります(もっとも給与収入が2,000万円を超えると確定申告が必要で、ワンストップ特例は使えません)。ただし確定申告でも2,000円に収まるとは限りません。寄附金控除によって課税所得が税率の段(1,800万円・4,000万円)を下にまたぐと、控除の一部が1段下の税率でしか戻らないためです(またいだ額がわずかなら2,000円のままで、またいでも超えるとは限りません)。
「ほぼ」と書いたのは、次のような場合に差が出るからです。
- 所得税率と特例分の率がずれている人。住民税の特例分は、住民税の課税所得から人的控除差調整額などを引いた金額で所得税率を推定して計算します。特定親族特別控除(大学生の子など)、配偶者特別控除、生命保険料控除・地震保険料控除を使っている人は、この推定額が実際の所得税の課税所得より大きくなり、税率の境目(課税所得195万円・330万円・695万円など)をまたぐと確定申告のほうが自己負担が増えます。ワンストップ特例では申告特例控除も同じ推定率で計算されるため、率のずれによる上乗せは起きません(判定率が33%以下の場合。下記のとおり33%を超えると事情が変わります)。ただし率のずれが無くても、住民税の所得割に引く余裕がない場合や非課税限度額の調整措置がかかる場合は2,000円を超えます。
- 住宅ローン控除で所得税が0円になっている人。確定申告をすると所得税分の控除が効きません。住民税側の住宅ローン控除(上限97,500円など)に余裕があれば形を変えて控除されますが、上限まで使い切っている人は確定申告のほうが不利になります。
- 端数処理。所得税・住民税とも100円未満は切り捨てのため、どちらの手続きでも数百円の差は出ます。これは気にする必要がありません。
逆に確定申告のほうが有利になるのは、所得税の税率が33%を超える人(住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額と「所得税の基礎控除額−48万円」を引いた判定額が1,800万円超。課税総所得金額そのものではありません)です。申告特例控除の割合は課税総所得金額900万円超の「56.307分の33.693」が最終行で1,800万円超・4,000万円超も同じ行を使う一方、特例分の率は49.16%・44.055%と下がり続けるため、ワンストップ特例では控除の合計が「寄附額−2,000円」に届きません。ただし給与収入が2,000万円を超えると確定申告が必要でワンストップ特例は使えないため、給与所得だけの方が実際にこの選択で迷う場面はほとんどありません(給与2,000万円以下でこの税率帯に届くには、給与以外の所得が必要で、その場合も住民税の申告が必要になります)。それ以外の方は、控除額が同じなら所得税分が早く還付される分だけ確定申告のほうが手元に戻るのは早いですが、金額は変わりません。
年収735万円の会社員に大学生の子(合計所得70万円)がいる例では、上限額約103,000円を寄附したときの自己負担が、確定申告で約12,200円、ワンストップ特例で約2,000円と1万円以上の差になります。該当するかどうかは年収だけでは判断できないので、シミュレーターで両方の自己負担額を確認してください。
ワンストップ特例が使えない・無効になる条件
そもそも使えない人
- 寄附先が1年で6自治体以上になった人(同じ自治体に複数回寄附しても1自治体と数えます)
- 確定申告をする人:個人事業主、給与収入2,000万円超、副業などの給与以外の所得が20万円超、2か所以上から給与を受けていて年末調整されない給与がある、住宅ローン控除の初年度、医療費控除・雑損控除を受ける、株式の損益通算や繰越控除をする、など
- 年金受給者で、年金収入400万円超または年金以外の所得が20万円超の人
- 住民税の申告をする人。ワンストップ特例は「所得税の確定申告も住民税の申告もしない人」が対象です。給与・公的年金等以外の所得(副業・フリマの利益、原稿料、不動産所得など)が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、その所得については住民税の申告が必要なので、ワンストップ特例は使えません。逆に、給与だけの人や、公的年金等の収入が400万円以下で他に所得がなく控除の追加・変更もない人は、どちらの申告も不要なのでワンストップ特例を使えます。副業やフリマの利益、原稿料などが少額でもある人は、住民税の申告書に寄附金税額控除を書くか、確定申告にまとめてください。
申請したあとに無効になる場合
ワンストップ特例の申請書を出したあとで確定申告(または住民税の申告)をすると、申請はすべて無効になります。年末に医療費が10万円を超えたので医療費控除を受けることにした、副業の所得が思ったより多かった、といった理由で確定申告をする場合(年末調整でできないもの一覧)は、ふるさと納税の分も確定申告に含める必要があります。含め忘れると控除がまったく受けられず、寄附額の全額が自己負担になります。この場合は、申告期限後でも更正の請求(5年以内)で修正できます。ただし寄附金控除を適用しても最終的な所得税額が変わらない場合は、更正の請求ができません——住宅ローン控除ですでに所得税が0円になっている人などです。国税庁も「寄附金控除を適用しても最終的な所得税等の額に異動がない場合は、更正の請求をすることができませんので」「お住まいの市区町村にご相談ください」としています(タックスアンサー No.1155)。年収600万円・住宅ローン控除40万円の人が5万円を寄附した例では、所得税は寄附の前後とも0円ですが住民税は43,100円減るため、住民税の側だけを市区町村で直すことになります。
同様に、6自治体目に寄附した時点で、それまでに出したワンストップ申請もすべて無効になります。年末に寄附先を追加するときは自治体数を数え直してください。
申請書の期限と、間に合わなかったとき
申請書の受付期限は寄附先の自治体が決めていて、多くは寄附した翌年の1月10日(必着)です。法律が1月10日と定めているのは申請後の変更の届出の期限で(地方税法附則7条4項)、自治体は翌年1月31日までに住所地の市区町村へ通知を送る(同5項)ため、その前に締め切られます。期限までに寄附先の自治体に届いている必要があります(2027年1月10日は日曜日で、翌11日は成人の日です。休日に当たるときに翌開庁日の到着を受け付けるか、オンライン申請の締切をいつにするかは自治体ごとに違うので、寄附先の案内で確かめてください)。12月末の駆け込み寄附は期限まで10日ほどしかないため、オンライン申請(自治体が対応している場合)を使うか、間に合わなければ確定申告に切り替えます。確定申告は還付申告なら翌年1月1日から受け付けており、3月15日を過ぎても5年間は提出できます。ワンストップ特例の申請が一部だけ間に合わなかった場合も、確定申告に切り替えれば全部の寄附をまとめて申告できます(ワンストップと確定申告の併用はできません)。
2026年の寄附については、多くのポータルサイトがマイナポータル連携やオンライン申請に対応しています。紙で送る場合は、申請書にマイナンバーカードの両面コピー(または通知カードと本人確認書類)を添付します。引っ越しをした場合は、翌年1月10日までに寄附先の自治体へ住所変更の届出が必要です。
どちらを使うかの判断手順
- 確定申告をする予定があるか(医療費控除、住宅ローン初年度、副業所得20万円超など)。あるなら確定申告一択。ワンストップ申請はしない。
- 給与・公的年金等以外の所得(副業・フリマ・原稿料など)があるか。あるなら所得税の確定申告が不要でも住民税の申告が必要になることが多く(申告が不要になる基準は市区町村で違います。神戸市は単身で前年の合計所得45万円以下なら申告不要。なお住民税が非課税なら、そもそも寄附金税額控除は受けられません)、その申告をするとワンストップ特例は使えないので、確定申告か住民税申告に寄附金控除を含める。公的年金等の収入が400万円以下で他に所得がなく、控除の追加・変更もない人は、どちらの申告も不要なのでワンストップ特例を使える。
- 寄附先が5自治体以内に収まるか。収まらないなら確定申告。
- どちらも使える場合は、判定率が33%以下ならワンストップ特例が有利か同等。特定親族特別控除・配偶者特別控除・生命保険料控除・住宅ローン控除がある人は、ワンストップ特例にすると自己負担が増えるリスクを避けられます(住宅ローン控除を引いた後の住民税の所得割が寄附金税額控除に足りない場合(残りがゼロのときも、わずかしか残らないときも)、非課税限度額の調整措置がかかる場合、所得税の税率が33%を超える場合は避けられません)。
- 年末に状況が変わって確定申告が必要になったら、ふるさと納税分を申告に含めることを忘れない。
よくある質問
ワンストップ特例と確定申告で、控除される金額は違いますか?
控除の合計は原則同じで、違うのは控除される税金と時期です。確定申告をすると、その年の所得税から控除(還付)され、残りが翌年度の住民税から控除されます。ワンストップ特例では所得税からの控除は行われず、その分も含めた控除額の全額が翌年度の住民税から控除されます(総務省 ふるさと納税ポータルサイト「よくある質問」Q6)。ただし、上の「控除の内訳はどう変わるか」に挙げた場合は自己負担に差が出ます。
同じ自治体に何回か寄附した場合、5団体はどう数えますか?
数えるのは寄附の回数ではなく、申告特例を求める自治体の数です。地方税法附則7条2項は、その年に申告特例の求めを行う都道府県知事等の数が五以下と見込まれる場合に限るとしているので、同じ自治体に3回寄附しても1団体です。ただし申請書(申告特例の求め)は寄附をするたびに出すので、3回寄附したなら3回出します。
ワンストップ特例の控除はいつ反映されますか?
寄附をした翌年の6月以降に支払う住民税の減額という形で反映されます(総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税ワンストップ特例制度について」)。給与から天引きされている人は6月からの月々の住民税が減り、所得税の還付はありません。確定申告の場合は、所得税分が申告後に還付され、住民税分は同じく翌年度の住民税から控除されます。
申請したあとで引っ越したら、どうすればよいですか?
申請書に書いた住所などに変更があったときは、寄附をした翌年の1月10日までに、申請した自治体へ変更の届出をします(地方税法附則7条4項、総務省 ふるさと納税ポータルサイト)。寄附した自治体が複数あるなら、それぞれに出します。届け出ずに、申告特例通知書が1月1日の住所地ではない市区町村に送られると、ワンストップ特例は無かったことになります(同条6項4号)。その場合は確定申告で寄附金控除を受けてください。
まとめ
- 控除の合計額は原則同じ。ワンストップ特例は住民税だけから、確定申告は所得税と住民税から控除される。
- 特定親族特別控除・配偶者特別控除・生命保険料控除・住宅ローン控除がある人は、確定申告だと自己負担が2,000円を超えることがある。ワンストップ特例なら回避できる(ただし住宅ローン控除を引いた後の住民税の所得割が寄附金税額控除に足りない場合(残りがゼロのときも、わずかしか残らないときも)と、非課税限度額の調整措置がかかる場合は、ワンストップ特例でも回避できない)。
- ワンストップ申請後に確定申告や住民税の申告をすると無効。6自治体目の寄附でも無効。切り替えるときは寄附金控除を忘れずに含める。
- 申請書は多くの自治体で翌年1月10日必着(期限と休日の扱いは寄附先の自治体の案内で確認)。間に合わなければ確定申告(還付申告は5年間可能)。
本記事は一般的な制度の解説であり、個別の税務相談は税理士または所轄の税務署・市区町村へお問い合わせください。根拠:総務省「ふるさと納税ポータルサイト(ワンストップ特例制度・税金の控除について・よくある質問)」、地方税法附則第7条(申告特例。2項=五以下、4項=変更の届出は翌年1月10日まで、5項=自治体は翌年1月31日までに住所地へ通知を送付、6項=なかったものとみなす事由)、国税庁タックスアンサー No.1155・No.1900(給与所得者で確定申告が必要な人)・No.2030(還付申告)。
すでに無効になってしまった方へ:この記事は「どちらを選ぶか」を扱っています。確定申告で受ける寄附金控除の金額と、確定申告書のどこに書くかはワンストップ特例が無効になったら?確定申告で受ける寄附金控除の金額と書き方にまとめています。