ワンストップ特例が無効になったら?確定申告で受ける寄附金控除の金額と書き方
結論:ワンストップ特例が無効になっても、その年のふるさと納税を全部、確定申告で寄附金控除として申告すれば控除は受けられ、給与500万円・独身・5万円の寄附の計算例では自己負担が2,000円から2,100円になる程度の差です。当てはまるのは、申請書を出したあとに確定申告や住民税の申告をした人、寄附先が6団体以上になった人、寄附のあと引っ越して翌年1月10日までに変更の届出をしなかった人です。無効になったこと自体に罰はありませんが、気づかずに何もしないと控除がまったく受けられません。この記事は、無効になる事由と、確定申告で受ける場合にいくら戻るのか、確定申告書のどこに書くのかをまとめたものです。
ワンストップ特例と確定申告のどちらを選ぶかはワンストップ特例と確定申告の違いで解説しています。この記事は無効になった後の手続きと金額を扱います。
無効になる4つの事由(地方税法附則7条6項)
条文は、次のいずれかに該当する場合、申告特例の求めと申告特例通知書の送付は「いずれもなかつたものとみなす」としています。
| 号 | 事由 | よくある場面 |
|---|---|---|
| 1号 | その年分の所得税について所得税法121条の規定の適用を受けないこととなったとき(=確定申告をしたとき) | 医療費控除、副業の所得が20万円超、住宅ローン控除の初年度、株式の申告 |
| 2号 | 住民税の申告書を提出したとき | 所得税の確定申告は不要だが、給与・年金以外の所得があり住民税の申告をした |
| 3号 | 申告特例通知書を送付した都道府県知事等の数が五を超えたとき | 6団体以上に寄附した |
| 4号 | 通知書の送付を受けた市町村長が、賦課期日現在(1月1日)の住所地の市町村長と異なったとき | 寄附のあと年内に引っ越し、1月10日までの変更届を出さなかった |
このほか、そもそも申請書を出していない寄附は特例の対象になりません。申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)は寄附のたびに提出が必要で、同じ自治体に3回寄附したなら3回出します。提出の期限は寄附先の自治体が決めていて、多くは寄附をした翌年の1月10日必着です(法律が1月10日と定めているのは変更の届出の期限で〈地方税法附則7条4項〉、自治体は翌年1月31日までに住所地の市区町村へ通知を送る〈同5項〉ため、その前に締め切られます。休日の扱いやオンライン申請の締切も自治体ごとに違うので、寄附先の案内で確かめてください)。
確定申告に切り替えるときは、その年のふるさと納税を全部書きます。「申請書を出していない分だけ申告する」は間違いです。確定申告をした時点で、申請書を出した分も含めて申告特例の求めが無かったことになるので(附則7条6項1号)、出した分を書かないとその分の控除が丸ごと漏れます。
3号は「超えた分だけ」ではありません。五を超えると、その年に支出した寄附金に係る申告特例の求めがすべて無かったことになります。5団体ちょうどまでは有効です(同2項「五以下であると見込まれる場合に限り」)。
無効になったら、確定申告で申告する
ワンストップ特例が無効になっても、確定申告で寄附金控除として申告すれば控除は受けられます。東京国税局は「ワンストップ特例の申請をした方が確定申告をする場合」について、確定申告書にふるさと納税分も含めた寄附金控除を記載するよう案内しています。
確定申告書には2か所書く
- 第二表の「寄附金控除に関する事項」に寄附額そのものを書きます。第一表の「寄附金控除」の欄は、そこから計算した控除額(寄附額−2,000円。総所得金額等の40%を超える場合はその40%から2,000円)です。ここが所得税の還付につながります。
- 第二表の「住民税に関する事項」にある「都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)」の欄にも、寄附額を書きます。ここが住民税の基本分・特例分につながります。
②を書き忘れると、いちばん大きい特例分が引かれません。①だけ書くと所得税の還付しか受けられず、戻る額が大幅に減ります。①の第一表に入るのは控除額、第二表と②に入るのは寄附額で、金額が違う点に注意してください(5万円の寄附なら、第一表は48,000円、第二表と②は50,000円)。金額のもとになるのは寄附した自治体から届く寄附金受領証明書です(ポータルサイトが発行する「寄附金控除に関する証明書」を使う方法もあります)。
控除の内訳は3つに分かれる
確定申告で受ける場合、控除は次の3つに分かれます。
| どこから | 計算 | 根拠 |
|---|---|---|
| 所得税(軽減) | (寄附額−2,000円)を所得から差し引いた分だけ税額が減る。実際に振り込まれる還付額は、源泉徴収された所得税との精算で決まる | 所得税法78条1項(上限は総所得金額等の40%) |
| 住民税 基本分 | (寄附額−2,000円)×10% | 地方税法314条の7第1項・37条の2第1項(上限は総所得金額等の30%) |
| 住民税 特例分 | (寄附額−2,000円)×(90%−所得税率×1.021) | 同 附則7条の2(所得割の20%が上限) |
ワンストップ特例のときは所得税が減らず、その分が申告特例控除として住民税から引かれます。確定申告ではこの申告特例控除はありません。
所得税の軽減額は「(寄附額−2,000円)×税率×1.021」ではありません。実際には、寄附金控除を入れた申告書と入れない申告書の年税額の差です。なお「軽減額」と「振り込まれる還付額」は別物で、還付額は源泉徴収された所得税との精算で決まります(すでに源泉徴収されている額が少なければ、その分しか戻りません)。寄附で課税所得が税率の段をまたぐと、控除の一部が1段下の税率でしか戻りません。このツールは差額で計算しています。
また、このツールが出す「所得税の軽減額」は年税額どうしの差を100円単位で出しています。正しくは1円単位なので、数十円ずれます(給与500万円・5万円の寄附なら、表示2,400円に対して正しくは2,450円)。100円以内の差でどちらが有利かは判断できません。
計算例1:給与500万円・独身・5万円を寄附
| 項目 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 所得税が減る額 | 0円 | 2,400円 |
| 住民税 基本分 | 4,800円 | 4,800円 |
| 住民税 特例分 | 40,750円 | 40,750円 |
| 住民税 申告特例控除 | 2,452円 | 0円 |
| 戻る・減る額の合計 | 48,000円 | 47,900円 |
| 自己負担 | 2,000円 | 2,100円 |
差は100円です。多くの方は、ワンストップ特例が無効になってもこの程度しか変わりません。怖いのは金額の差ではなく、申告し忘れて控除がゼロになることです。差が大きくなる3つのケースは後述します。
計算例2:給与800万円・独身・12万円を寄附
| 項目 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 所得税が減る額 | 0円 | 24,100円 |
| 住民税 基本分 | 11,800円 | 11,800円 |
| 住民税 特例分 | 82,105円 | 82,105円 |
| 住民税 申告特例控除 | 24,097円 | 0円 |
| 戻る・減る額の合計 | 118,200円 | 118,100円 |
| 自己負担 | 1,800円 | 1,900円 |
差が大きくなる3つのケース
1. 住宅ローン控除で所得税が0円になっている
確定申告では所得税分が所得税から引かれますが、所得税が0円なら引くものがありません。ワンストップ特例なら同じ分が住民税から引かれるので、こちらのほうが自己負担は小さくなります。上の給与500万円の例に住宅ローン控除20万円を足すと、自己負担はワンストップ特例で2,000円、確定申告で4,500円になります(所得税で引ききれなかった住宅ローン控除は住民税から引かれますが、その上限に余裕があるかどうかで結果が変わります)。
2. 所得税率と判定率がずれている
特例分の率は、本人の所得税率ではなく「判定額」(住民税の課税総所得金額−人的控除差調整額−「所得税の基礎控除額−48万円」)から決まります。特定親族特別控除・配偶者特別控除・生命保険料控除・地震保険料控除があると、所得税と住民税で控除額が違うのに人的控除差に反映されない分だけ判定額が高く出て、実際の所得税率より1段上の率で特例分が計算されることがあります。
この場合、確定申告では所得税が低いほうの率でしか戻らないのに、特例分は高いほうの率を前提に決まっているため、自己負担が2,000円を超えます。給与735万円・特定親族の所得70万円の方が103,000円を寄附すると、所得税率10%・判定率20%で、自己負担はワンストップ特例で2,000円、確定申告で12,200円になります。ワンストップ特例なら所得税分も住民税から引かれるので、このずれは生じません。詳しくは自己負担が2,000円で収まらないケースをご覧ください。
3. 判定率が33%を超えている
逆に、特例分の率の判定に使う「判定率」が33%を超える方は、ワンストップ特例のほうが不利です。申告特例控除の割合は課税総所得金額900万円超で「56.307分の33.693」に止まる一方、特例分の率は下がり続けるためです(地方税法附則7条の2第4項の割合表)。給与2,170万円・社会保険料50万円・特定親族の所得70万円の方が70万円を寄附すると、自己負担はワンストップ特例で81,600円、確定申告で51,900円になります(この方の上限額は748,000円)。なお給与が2,000万円を超えると確定申告が必要で、そもそもワンストップ特例は使えません(所得税法121条1項)。上の81,600円は「もし使えたら」という比較のための数字です。詳しくは自己負担が2,000円で収まらないケースをご覧ください。
間に合わなかったときは
確定申告の期間(翌年2月16日〜3月15日)を過ぎても、還付を受けるための申告は翌年1月1日から5年間できます(国税庁 No.2030)。これは源泉徴収された所得税などがあって、申告の義務がない方の話です。申告の義務がある方(給与2,000万円超、給与以外の所得が20万円超など)は期限後申告になり、無申告加算税・延滞税がかかることがあります。
住民税は、その寄附をした年の所得に対する年度(2026年の寄附なら2027年度)の住民税が対象です。申告が遅れた場合は、その年度の住民税をさかのぼって変更(更正)してもらうことになり、すでに納めていれば還付されます。さかのぼれる期間や手続きは自治体によって異なるので、お住まいの市区町村に確認してください。「申告した年度から控除される」のではありません。
確定申告をする必要がなく、住民税の控除だけ受けたい場合は、市区町村への住民税の申告でも受けられます(地方税法45条の2・317条の2)。この場合は所得税の還付はなく、住民税の基本分と特例分だけになります。
よくある質問
ワンストップ特例が無効になったことは通知されますか?
条文は、申告特例通知書の送付を受けた市町村長が「その旨の通知その他の必要な措置を講ずるものとする」としています(附則7条6項後段)。ただし通知の時期や方法は自治体によるので、自分で確定申告をしたなら無効になっていると考えて手続きしてください。
申請書を出したあとに確定申告をする場合、取り下げは必要ですか?
要りません。確定申告をした時点で自動的に無かったことになります(附則7条6項1号)。確定申告書に寄附金控除を書けば、それで足ります。
確定申告をしたのに、ふるさと納税を書き忘れました。
申告期限内なら訂正申告(同じ年分の申告書を出し直す)で直します。期限後は更正の請求です(国税通則法23条)。期限は原則として法定申告期限から5年以内ですが、確定申告の必要のない方が還付を受けるための申告をしている場合は、その提出した日から5年以内です(国税庁「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」)。
ただし更正の請求ができるのは、所得税の税額等が変わる場合だけです。住宅ローン控除などで所得税がもともと0円で、書き足しても所得税額が変わらないときは更正の請求ができません。その場合はお住まいの市区町村に住民税の申告(または寄附金税額控除の申告)をして、住民税だけを直します。取扱いは自治体によって違うので、市区町村の住民税の窓口に確認してください。
根拠資料
- 地方税法附則7条(個人の道府県民税及び市町村民税の寄附金税額控除に係る申告の特例等)2項(五以下)・4項(変更の届出は翌年1月10日まで)・5項(自治体は翌年1月31日までに住所地へ通知を送付)・6項1号〜4号(なかったものとみなす事由)、附則7条の2(申告特例控除額の割合表)
- 地方税法314条の7第1項・37条の2第1項(寄附金税額控除。総所得金額等の30%が上限、控除額が所得割を超えるときは所得割の額まで)
- 所得税法78条1項(寄附金控除。総所得金額等の40%が上限、2,000円を差し引く)
- 国税庁 東京国税局「ワンストップ特例の申請をした方が確定申告をする場合の注意」
- 国税庁「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」(「確定申告の必要のない方が還付を受けるための申告をしている場合はその提出した日から5年以内です」)、国税通則法23条1項(原則は法定申告期限から5年以内)
- 国税庁 タックスアンサー No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)、No.1150 一定の寄附金を支払ったとき、No.2030(還付申告は翌年1月1日から5年間)
- 総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」(基本分・特例分・申告特例控除の計算式)
この記事の数字はふるさと納税 控除上限額シミュレーターと同じエンジンで計算しています(1円単位で一致)。関連記事:ワンストップ特例と確定申告の違い(どちらを選ぶか)/自己負担が2,000円で収まらないケース/住民税の計算方法。関連ツール:医療費控除 還付金シミュレーター/副業の確定申告 要否判定+税額シミュレーター/住民税 計算ツール。
寄附金控除を確定申告書の第一表・第二表のどの欄に書くかの記入例は、Tekiba の有料記事(note・980円)にまとめています。