満期保険金・解約返戻金の税金:一時所得の計算と確定申告の要否
結論:自分で保険料を払った満期保険金・解約返戻金を一時金で受け取ると一時所得になり、税金がかかるのは(受け取った額−払い込んだ保険料−特別控除最高50万円)の2分の1で、給与が1か所で年末調整を受けている会社員は、その額がほかの所得と合わせて20万円以下なら所得税の確定申告を要しません(確定申告をしない場合は、原則として住民税の申告が必要です)。この記事は、令和8年分(満期日・解約日などが2026年中のもの)で、保険料を負担した人と受取人が同じ場合を対象にしています(受取人が違えば贈与税の対象で、一時払養老保険などで保険期間5年以下または5年以内に解約したものの差益は源泉分離課税で終わります)。たとえば給与500万円の会社員が、払込保険料240万円の保険の満期保険金300万円を受け取ると、増える所得税は2,553円、令和9年度の住民税は5,000円です。かかるのは受け取った額そのものではありません。この記事では、一時所得の計算(50万円の特別控除と2分の1)と、会社員の確定申告の要否(20万円)、見落としやすい住民税の申告を、計算例で説明します。
まず、誰が保険料を払ったか
満期保険金・解約返戻金にかかる税金の種類は、保険料を負担した人と受取人の関係で決まります(国税庁 No.1755)。
| 保険料を負担した人と受取人 | かかる税金 |
|---|---|
| 同じ人(自分で払い、自分が受け取る) | 所得税・住民税(一時金なら一時所得、年金なら雑所得) |
| 違う人(親が払い、子が受け取る など) | 贈与税 |
この記事は、自分で払い、一時金で受け取った場合(一時所得)の話です。なお、一時払養老保険などで保険期間が5年以下、または5年以内に解約したものの差益は、金融類似商品として20.315%の源泉分離課税で課税が終わり、確定申告はできません(国税庁 No.1490)。
一時所得の計算
一時所得の金額 = 受け取った金額 − 払い込んだ保険料の総額 − 特別控除(最高50万円)
根拠は所得税法34条です。特別控除は50万円で、差引きが50万円に満たなければその額までです。保険については所得税法施行令183条が細かく決めていて、
- 満期保険金と一緒に、または後から受け取った配当金(剰余金・割戻金)は、受け取った金額に足します。
- 契約者貸付の返済などが差し引かれて振り込まれた場合も、受け取った金額は差し引く前の額です(振込額ではありません)。
- 満期・解約の前に受け取った配当金(保険料の払込みに充てたものを含む)は、払い込んだ保険料から引きます。保険会社の支払調書の「既払込保険料等」はすでに差し引いた額なので、その額を使うときは重ねて引きません。
- 事業所得・不動産所得の必要経費にすでに入れた保険料(店舗の火災保険など)は、払い込んだ保険料に入れられません。
- 勤務先が負担して、あなたの給与として課税されていない保険料は、払い込んだ保険料に入れられません(少額のため給与として課税されなかった分は、例外として入れます。所得税基本通達34-4(注)1・36-32)。
そして、税金がかかるのは一時所得の金額の2分の1です(所得税法22条2項2号。1円未満は切り捨て)。この2分の1を給与などの所得と合計して、所得税・住民税を計算します。一時所得に決まった税率があるわけではなく、もともとの所得にかかっている税率で増えます。
どの年の所得になるか
一時所得は、支払を受けるべき事実が生じた日の年分になります(所得税基本通達36-13)。満期保険金なら満期日、解約返戻金なら解約の日で、入金日ではありません。2026年12月が満期で2027年1月に入金された保険金は令和8年分です。同じ年のほかの一時所得との合算や、50万円の特別控除・20万円の判定も、この年分で行います。
会社員の確定申告は「2分の1にした後」で20万円
給与が1か所で年末調整を受けている会社員は、給与以外の所得が20万円以下なら確定申告を要しません(所得税法121条1項1号)。国税庁 No.1903 は満期返戻金について「課税の対象となる金額が20万円を超えるかどうかにより、確定申告をする必要があるかどうかを判断します」と書いていて、この課税の対象となる金額は2分の1にした後の額です。
つまり、差引きが90万円まで(90万円−50万円=40万円、その2分の1が20万円)なら、所得税の確定申告は要しません。副業などほかの所得があれば、それと合計して20万円と比べます。
計算例(令和8年分)
3つとも、給与500万円・社会保険料75万円・年末調整の源泉徴収税額90,300円(扶養なし)の会社員が、自分で払った保険を一時金で受け取った場合です。ツールの入力例と同じ数字で、結果は一致します。
例1:満期保険金300万円・払込保険料240万円(申告は要しないが、住民税は増える)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 受け取った金額−払い込んだ保険料 | 600,000円 |
| 特別控除 | −500,000円 |
| 一時所得の金額 | 100,000円 |
| 税金がかかる額(2分の1) | 50,000円 |
| 増える所得税(復興特別所得税込み) | 2,553円 |
| 増える住民税(令和9年度) | 5,000円 |
2分の1の5万円は20万円以下なので、所得税の確定申告は要しません。ただし、住民税には20万円の判定がなく、一時所得は「給与所得以外の所得」なので、確定申告をしない場合はお住まいの市区町村へ住民税の申告が必要です(地方税法317条の2第1項)。住民税は5万円×10%=5,000円増えます。
例2:満期保険金500万円・払込保険料360万円(申告が必要)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 受け取った金額−払い込んだ保険料 | 1,400,000円 |
| 一時所得の金額(−特別控除50万円) | 900,000円 |
| 税金がかかる額(2分の1) | 450,000円 |
| 給与所得(5,000,000×80%−440,000) | 3,560,000円 |
| 所得控除(社会保険料+基礎控除104万円) | −1,790,000円 |
| 課税される所得金額 | 2,220,000円 |
| 所得税(10%−97,500円) | 124,500円 |
| 所得税及び復興特別所得税 | 127,114円 |
| 給与の源泉徴収税額 | −90,300円 |
| 納める税金(100円未満切捨て) | 36,800円 |
2分の1の45万円は20万円を超えるので、確定申告が必要です。課税される所得が195万円を超えて税率10%の段に入るので、増える所得税は36,756円、住民税は45万円×10%=45,000円で、合わせて約8.2万円です。確定申告書では、第一表「収入金額等」の一時に900,000円(特別控除後の一時所得の金額。受け取った500万円ではありません)、「所得金額等」の総合譲渡・一時に450,000円(2分の1後)を書き、第二表の一時所得の欄に収入金額5,000,000円・必要経費等3,600,000円・差引金額・特別控除額を書きます(国税庁「確定申告書の手引き」)。
例3:解約返戻金180万円・払込保険料200万円(赤字)
受け取った金額が保険料より20万円少ないので、一時所得は0円で、税金はかかりません。この20万円の赤字は給与から引けません。損益通算ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失だけで(所得税法69条1項)、一時所得は入っていないからです。
ただし、同じ年にほかの一時所得がある場合は、合計して計算します(所得税法34条2項)。例1の満期(+60万円)と例3の解約(−20万円)が同じ年なら、差引き40万円から特別控除40万円を引いて一時所得は0円です。特別控除50万円は、何件あっても合計に1回だけです。ただし、定期保険の満了のように受け取る額が無い契約の保険料は、ほかの一時所得から引けません(国税庁 質疑応答事例「一時所得の金額の計算(一時所得内の内部通算の可否)」)。
住民税の申告を忘れやすい
「20万円以下だから申告不要」は所得税の話です。一時所得がある会社員は、地方税法317条の2第1項ただし書(給与所得以外の所得がない人は申告不要)に当たらないので、所得税の確定申告をしないなら、住民税の申告をします(所得割の納税義務を負わないと認められる方を条例で申告不要としている市区町村があります)。確定申告をすれば、その提出した日に住民税の申告もしたものとみなされます(同法317条の3第1項)。国民健康保険に加入している方は、保険料が上がることもあります。
このツール・記事の範囲
減額・一部解約の精算金、今回より前に(同じ年を含む)同じ契約から減額の精算金・生存給付金などを受け取っている契約(保険料はそちらに順に配分済みで、今回引けるのは残りだけです)、保険料を負担した人と受取人が違う場合(贈与税・相続税)、年金で受け取る場合(雑所得)、金融類似商品(源泉分離課税)、死亡保険金、競馬や懸賞などの保険以外の一時所得、給与が2か所以上の方・給与所得者でない方の税額には対応していません。結果は目安で、個別の税務相談ではありません。実際の申告は税務署または税理士にご確認ください。
よくある質問
満期保険金を受け取ったら確定申告が必要ですか?
保険料を払った本人が一時金で受け取った場合は一時所得になり、一時所得の金額(受取額−払込保険料−特別控除最高50万円)の2分の1が課税されます。給与が1か所で年末調整を受けている会社員は、この2分の1の額(ほかの副業などの所得と合計)が20万円を超えるときに確定申告が必要です(所得税法121条1項1号・国税庁No.1903)。20万円以下でも住民税の申告は原則として必要です。
解約返戻金が払った保険料より少ない場合、損失を給与から引けますか?
引けません。損益通算ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失だけで(所得税法69条1項)、一時所得の損失は含まれません。ただし、同じ年に受け取ったほかの一時所得(別の保険の満期保険金など)とは合計して計算するので、その中では差し引きされます。
親が保険料を払っていた保険の満期金を子が受け取ったら?
保険料を負担した人と受取人が違う場合、満期保険金は一時所得ではなく贈与税の対象です(国税庁No.1755)。一時所得になるのは、保険料を負担した人と受取人が同じ場合です。
根拠資料
- 国税庁「確定申告書の手引き」総合譲渡所得・一時所得の計算
- 所得税基本通達36-13(一時所得の総収入金額の収入すべき時期)
- 所得税法 第34条(一時所得)、第22条第2項第2号、第69条第1項、第121条第1項第1号/所得税法施行令 第183条第2項・第4項
- 国税庁 タックスアンサー No.1490 一時所得/No.1903 給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合/No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき(いずれも令和8年4月1日現在法令等)
- 地方税法 第317条の2第1項ただし書、第317条の3第1項
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