年齢計算の「誕生日当日」と「誕生日の前日」の違い
「この人は基準日時点で何歳か」を判定する仕事は、総務・人事・社労士・保険・学校事務など、多くの現場で日常的に発生します。ところが日本の法律上の年齢の数え方は、日常の感覚と1日ずれています。この1日のずれが、雇用保険料の免除や年金の受給開始、学年の区切りといった実務の判定に影響します。この記事では、2つの数え方の違いと、どの場面でどちらを使うべきかを整理します。
結論:法律上は「誕生日の前日」に年をとる
年齢の数え方を定めているのは「年齢計算ニ関スル法律」(明治35年法律第50号)と民法143条です。要点は次の2つです。
- 年齢は出生の日から起算する(初日を算入する)。
- 期間は起算日に応当する日の前日をもって満了する(民法143条2項)。
つまり、1985年4月12日に生まれた人は、1986年4月12日の「前日である4月11日の終了時(午後12時)」に満1歳になります。日常では「4月12日が誕生日だから12日に年をとる」と考えますが、法律上は11日の終わりに年をとっているのです。
この違いは、ほとんどの場面では影響しません。しかし「◯歳に達した日」や「◯歳に達する日の属する月」という条文で判定する制度では、まさにこの1日が結果を分けます。
影響が出る代表的な場面
学年の区切り(4月1日生まれが早生まれになる理由)
学校教育法では「満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから」小学校に就学するとされています。4月1日生まれの子は、法律上は3月31日の終了時に満6歳に達します。その翌日は4月1日で、その日から始まる学年に入るため、前年度生まれの子と同じ学年になります。4月2日生まれの子は4月1日の終了時に満6歳となり、翌日は4月2日なので次の学年に回ります。「4月1日生まれは早生まれ」と言われるのは、この前日加齢が理由です。
雇用保険の高年齢被保険者・保険料免除
雇用保険の年齢判定は「◯歳に達した日」で行われ、この「達した日」は誕生日の前日と解釈されます。たとえば4月1日生まれの人は3月31日に64歳に達したと扱われます。年度をまたぐ境目に誕生日がある人は、どちらの年度で判定されるかが1日で変わるので、名簿から一括で判定する際は前日方式で計算する必要があります。
年金の受給開始・特別支給の老齢厚生年金
国民年金・厚生年金でも「65歳に達した日」は誕生日の前日です。1日生まれの人は前月末日に達したことになるため、受給開始月が1か月早くなる場合があります。年金事務所の案内や日本年金機構の資料が「1日生まれの方は前月から」と説明しているのはこのためです。
高年齢者雇用安定法・定年の到達日
就業規則で「満60歳に達した日の属する月の末日をもって定年とする」のように定めている場合、「達した日」を誕生日当日と読むか前日と読むかで、1日生まれの社員の定年月が1か月ずれます。多くの企業は就業規則で「誕生日の前日」または「誕生日当日」と明記して解釈を固定しています。自社の規則がどちらを採用しているかを確認したうえで、計算方式を合わせてください。
2月29日生まれの人はどうなるか
うるう年の2月29日に生まれた人は、うるう年でない年には応当日がありません。民法143条2項ただし書は「月または年の末日に満了する」と定めているため、法律上(前日方式)は2月28日の終了時に加齢します。一方、一般的な誕生日当日方式では慣例的に3月1日を誕生日として扱うことが多く、こちらでも制度や会社によって取り扱いが分かれます。名簿処理では「2月29日生まれが含まれているか」を最初に確認しておくと、後で判定のずれに気づいて手戻りすることを防げます。
Excelで計算する場合
Excelで誕生日当日方式の満年齢を出す代表的な式は =DATEDIF(生年月日, 基準日, "Y") です。前日方式にするには基準日に1日を足して =DATEDIF(生年月日, 基準日+1, "Y") とします。ただしDATEDIF関数は関数一覧に出てこない隠し関数で、2月29日生まれの扱いにも癖があるため、法的な判定に使う場合は結果を目視で確認することをおすすめします。
和暦の入力(昭和60年4月12日、S60.4.12など)が混在している名簿では、DATEDIFに渡す前に日付型へ変換する作業が別途必要になります。
まとめ
- 日常の年齢は誕生日当日に加算するが、法律上は誕生日の前日の終了時に加算する。
- 学年、雇用保険の年齢判定、年金の受給開始、定年の到達月などは前日方式で判定される場面がある。
- 1日生まれと4月1日生まれ、2月29日生まれは特に結果がずれやすい。
- 就業規則や制度ごとにどちらの方式かを確認し、名簿の一括処理では方式を明示して計算する。